レビュー

エレファントカシマシ | 2015.09.16

連載 第88週
エレファントカシマシ
「愛すべき今日」


「愛すべき今日」は、やさしさ、ポップさ、
荒々しさを秘めた、エレカシの“全力シングル”だ!


 シングル「愛すべき今日」には、今のエレカシのエネルギーの全てが投入されている。カップリングの「TEKUMAKUMAYAKON」「めんどくせい」を含めて、“全力シングル”と呼びたい意欲作だ。

 収録された3曲全部のテイストが異なる。ざっくり言えば 「愛すべき今日」はやさしく雄々しいミディアム・ロック。「TEKUMAKUMAYAKON」は何と、コーラスがあちこちにフィーチャーされた、4つ打ちビートのポップナンバー。「めんどくせい」は1発録りのへヴィーなバンドサウンドで、てんでんばらばらにカッコいい。どれをとっても絶好調のエレカシがいる。

 「愛すべき今日」は、アコギやグロッケンシュピール(鉄琴)が配された温かなサウンドをバックに、宮本浩次がこの上なくやさしい声で歌い出す。そしてサビの♪現れろ 新たなる 闘いの神よ♪というフレーズで、雄々しい声に切り替わるスリルがたまらない。エレカシはずっと人生の“今”を歌ってきた。「愛すべき今日」も、そうした歌のひとつだ。が、重量感とポップの両立に関して、これまでで最も成功している1曲と言っていい。このシングル中、説得力ナンバーワン!

 「TEKUMAKUMAYAKON」はいきなり緻密なコーラスで始まり、ダンサブルなビートに洗練されたストリングスが絡む。エレカシのパブリックイメージとある意味相反する要素で構成されたサウンドに、宮本の野太い声が割って入る。その“ガチな感じ”が底抜けに快感だ。これはポップ感、ナンバーワン!

 「めんどくせい」は、ゴリゴリのバンド・サウンド。前述2曲を緊張感たっぷりにレコーディングした後の、“憂さ晴らし感(笑)”ナンバーワン! アウトロのセッション風のパートでは、スタジオで暴れ回るメンバーの姿が目に浮かぶ。

 そして、この方向性の違う3曲は、まるで3D映画のようにエレカシの“今”を立体的に見せてくれる。このバンドの魅力の本質である、やさしさ、ポップさ、荒々しさの3つが、それぞれに突き詰められていて、究極のバランスを保っている。キャリアを積んだバンドにしかできない音楽であると同時に、幅広い世代に積極的にアプローチしている姿勢が若々しい。

 中で「愛すべき今日」の♪涙こぼれろ 俺の日を たどるよ  ただ それが 当たり前の今日でも♪というフレーズが、この3曲を統べているように思える。今、エレカシは“やさしさ”をいちばんに掲げる。その背後に、ポップさとワイルドさを秘めながら!

【文:平山雄一】

リリース情報

愛すべき今日(初回限定スペシャルパッケージ盤)[2CD+DVD]

愛すべき今日(初回限定スペシャルパッケージ盤)[2CD+DVD]

発売日: 2015年09月23日

価格: ¥ 2,500(本体)+税

レーベル: ユニバーサル シグマ

収録曲

[CD]
1. 愛すべき今日
2. TEKUMAKUMAYAKON
3.めんどくせい

[ボーナスCD]
新春ライブ20150103@日本武道館 のLIVE音源を収録。
1.部屋 2. 始まりはいつも 3. パワー・イン・ザ・ワールド 4. おまえとふたりきり 5. 季節はずれの男 6. 彼女は買い物の帰り道 7. もしも願いが叶うなら 8. シグナル 9. so many people 10 .花男

[DVD]
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