レビュー

吉井和哉 | 2015.12.02

連載 第99週
吉井和哉『ヨジー・カズボーン~裏切リノ街~』


ヨジー・カズボーンの「青春時代」は、悪魔風味でヤバい!

 『ヨシー・ファンクJr.~ 此レガ原点!!~』に続く吉井和哉のカバー・アルバム第2弾が『ヨジー・カズボーン~裏切リノ街~』だ。

 前作は大好きなプロレスラーのドリー・ファンクJr.からのタイトルだったが、今作は敬愛するへヴィメタルのレジェンド“オジー・オズボーン”。アルバムのオープニングとエンディングにはオジーの「MR.CROWLEY」がリリカルなインストでカバーされ、その他のカバー・ナンバーには吉井が青年時代に影響を受けた楽曲が選ばれている。

 驚いたのは、アルバム2曲目に入っている「HELL’S RIDER」。これは80年代の日本のメタルバンド“SABBRABELLS(サブラベルズ)” の曲で、吉井青年のマニアックな側面がうかがわれて興味深い。サブラベルズはオジー・オズボーンをボーカルに擁するイギリスのカルトバンド“ブラック・サバス”の影響をもろに受けたバンドだったので、このアルバムの最も大事な位置を占めるのは当然だろう。しかし、よく考えてみればオジーの「MR.CROWLEY」を英語でカバーすれば済む話なのではないだろうか。

 しかし、しかし、そこには吉井の強烈なこだわりがあった。ブラック・サバスの影響を受けたサブラベルズは、日本語で「HELL’S RIDER」を書いた。吉井青年の心を最初に打ったのはおそらくサブラベルズで、そこから吉井はブラック・サバスを知り、聴いて、オジーのファンになったのではないかと思われる。

 80年代の日本では、洋楽の影響を受けたバンドがたくさんデビューした。それが現在のJ-ROCKの始まりになっているのだが、一方でそうしたJ-ROCKに触れてから、洋楽をさかのぼって聴く音楽ファンが多かったのも事実。吉井もその一人ではなかったのではないだろうか。

 吉井はそうした歴史的事実を大切にする。同時に、このカバー・シリーズでは何より“日本語詞の歌”にこだわっている。実際、「HELL’S RIDER」での吉井のボーカルは、創成期のJ-ROCKに対するリスペクトにあふれていて、聴いていて背筋が伸びる思いがする。ほとんど誰も知らないバンドの楽曲をあえて選んだ吉井の音楽愛は、これ以上ないほど真っ直ぐだ。

 そんな吉井の情熱の余波をもろに受けて、本来は明るいポップスの3曲目「青春時代」が、ブラック・サバス風味にアレンジされているのには大笑いさせてもらった。4曲目の「異邦人」のイントロにも “悪魔風味”が少しだけはみ出しているのもご愛嬌だ。

 僕としては、ゴダイゴのヒット曲の素直なカバー「ガンダーラ」も好きだなあ。これを聴くと、プロ・デビュー後の吉井の“Aメロの歌い方”の原点がこのあたりにあることが分かって楽しい。

 吉井らしい遊び心と、ボーカリストとしてのプライドが詰め込まれた好カバーアルバムなのである。

【文:平山雄一】

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リリース情報

ヨジー・カズボーン~裏切リノ街~

ヨジー・カズボーン~裏切リノ街~

発売日: 2015年12月09日

価格: ¥ 3,000(本体)+税

レーベル: 日本コロムビア

収録曲

01. 「MR.CROWLEY ~OPENING~」 オジー・オズボーン(1980年)
02. 「HELL’S RIDER」 サブラベルズ (1983年)
03. 「青春時代」 森田公一とトップギャラン (1976年)
04. 「異邦人」 久保田早紀 (1979年)
05. 「赤頭巾ちゃん御用心」 レイジー (1978年)
06. 「ACTION! 100,000VOLT」 ACTION! (1984年)
07. 「Mr. サマータイム(UNE BELLE HISTOIRE)」 サーカス (1978年)
08. 「ガンダーラ」 ゴダイゴ (1978年)
09. 「長い夜」 松山千春 (1981年)
10. 「リンゴ追分」 美空ひばり (1952年)
11. 「MR.CROWLEY ~ENDING~」 オジー・オズボーン(1980年)

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