レビュー

平山雄一 ウィークリーレビュー | 2015.12.25

連載第102週
年末企画「ベストなひび」


■ベスト音源 2015
2015年のベスト音源をセレクト!!


 チャットモンチー『共鳴』が、最もエキサイティングなアルバムだった。
 元々のトリオ編成は、ロックバンドのミニマム・サイズ。そこから一人抜けたら致命的だと思っていた。普通のバンドだったら新たなメンバーを探してバンドを継続しようとする。だが橋本絵莉子と福岡晃子は、その上を行く発想で、“2人のロックバンド”にトライして見事にやり遂げた。その上で、彼女たちはチャットモンチーに共鳴するミュージシャンを集めて、この奇跡のアルバムを完成させた。さらには11月には7年ぶりの武道館を成功させた。
男女を問わず、2015年で最も気高いアルバムだ。

 2015年、ギター・サウンドの最高峰は、ASIAN KUNG-FU GENERATION『Wonder Future』。ロスアンジェルスにあるフー・ファイターズのスタジオでレ コーディングされたこのアルバムは、どの曲を聴いてもエッジの立ったギターが耳に飛び込んでくる。
 “理想のギター・サウンド”を手に入れたアジカンは、リズムもロックの原点に戻って8ビートを追求。“エモいアジカン”がここにある。
 そうして、そのサウンドを武器に描くのは“「やってられない時代に生きる人たちの復活” だ。後藤のボーカルもシャウトを多用していて、文句なしにかっこいい。カジュアルなロックオペラと言うべき「Opera Glasses/オペラグラス」は、アジカンの歴史をたどりながら“今”に行き着く傑作で、今年を代表するナンバーだ。


 トリビュート&カバー・アルバムで印象に残ったのは、つい先日紹介した『JUST LIKE HONEY~『ハチミツ』20th Anniversary Tribute~』。スピッツの名アルバムを曲順通りに若手バンドがカバーして、スピッツのJ-ROCKシーンに残した足跡をくっきりと描き出す。逆に言えば、indigo la Endや9mm Parabellum Bulletなど、今のJ-ROCKバンドの精鋭たちのカタログにもなっている。

 ニューカマーとしてはキュウソネコカミ『人生はまだまだ続く』が楽しかった。正念場となる3rdアルバムで、詩人ヤマサキ セイヤの才能が爆発。単なる面白バンドではないことを証明してみせた。
 描く対象がはっきりしていて、自称“ポンコツ”ならではの人生観をしっかりと主張している点が優れている。このアルバムで、“キュウソネコカミはまだまだ続く”ことを実感させてくれた。


 もう一つ、 ニューカマーとして挙げたいのはDragon Ash降谷建志。初ソロアルバム『Everything Becomes The Music』は素晴らしい内容だった。バンドのパブリック・イメージを取っ払って、自由奔放に作られた本作は、これまであまり知られていなかった降谷の音楽的背景が随所に散りばめられていて、繊細さや優しさが過不足なく表現されていた。

 企画として優れていたのは、NICO Touches the Walls「Howdy!! We are ACO Touches the Walls」だった。自分たちの代表ナンバーをアコースティック・アレンジで新録。ビートや コーラスに新境地を打ち出していて、“バンドの基礎体力”を自信たっぷりに披露していた。2度目の武道館を成功させて、完全にひと皮むけたNICOがここにいる。

【文:平山雄一】

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