レビュー

the quiet room | 2016.02.08

 大好きなバンドだったはずなのに気が付いたら心が離れていくときがある。まるで恋人同士のすれ違いにも似た心模様を疾走感のあるバンドサウンドにのせて描いたthe quiet roomのニューシングル『Instant Girl』。その関係性をインスタント=“即席の”というタイトルで表すのも皮肉っぽいが、この曲はthe quiet roomにとって新機軸となるナンバーだ。

 the quiet roomは2011年に茨城県で結成された4人組バンドで、菊池遼(Vo・G)、斉藤弦(G)、 前田翔平(B)、コビキユウジ(Dr)からなる平均年齢21歳。バンド活動をスタートさせて間もないころから、高校生のアマチュアバンドコンテスト「TEENS ROCK IN HITACHINAKA 2011」で優秀賞とオーディエンス賞を受賞したことを皮切りに、「閃光ライオット2013」でファイナリストに進出、ROCK IN JAPANが主催する「RO69JACK2014」でも厳しい審査を勝ち抜いて優勝アーティストに選ばれるなど、すでにライブハウスシーンでは知る人ぞ知る存在となっている。

 そんなthe quiet roomの魅力は何よりもボーカル菊池のソングライティングにある。歌に出てくる登場人物の息づかいまで聞えるような繊細な歌詞は、小説や映画を見るように情景がありありと目に浮かぶものだ。その多くは“君とぼく”の世界を描いたもので、感情豊かで傷つきやすい素朴な青年が優しく語りかけるような、そんな歌だ。

 ギターロックバンドとしてメロディを大切にした作風から、ライブでも歌の世界観を届けることに重きを置いているthe quiet roomだが、今回の「Instant Girl」は、むしろライブでの盛り上がりを意識して作られた作品だろう。躍動感のある4つ打ちのリズムを刻み、パパンッと手拍子をしたくなる仕掛けもある。すでにライブ会場でも聴く機会があったが、ほぼ初聴きのリスナーが一気に湧き立つ訴求力は抜群だった。この曲が、おそらくバンドにとって攻めの年になるであろう2016年の切り札になることは間違いない。

 また、今作のカップリングに収録されている「ラストシーン」は、軽やかなビートにのせて、サビのフレーズがキャッチーに駆け抜けるナンバー。別れがテーマでもあり、歌詞のなかには“雨”が印象的に描かれるが、湿っぽい感じは全くない。辛い失恋など過去に置き去りにして、颯爽と未来にダッシュするような青い衝動が眩しい1曲だ。

【文:秦理絵】



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リリース情報

Instant Girl

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Instant Girl

発売日: 2016年02月03日

価格: ¥ 500(本体)+税

レーベル: mini muff records

収録曲

1. Instant Girl
2. ラストシーン

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