DREAMS COME TRUEの、昨年リリースされた3枚組ベストアルバム『私のドリカム』に収録しきれなかった人気曲、そして吉田美和と中村正人が選んだ楽曲を、それぞれCD1枚に収録した、3枚組“ウラ”ベストアルバム。さらに「雪のクリスマス」「しあわせなからだ」「週に1度の恋人」の3曲は、新たにレコーディングされたバージョンが収録されている。

　こういった“ウラ”選曲で、3枚組のベストアルバムが成立するというのも、ドリカムならではだろう。“ウラ”とはいえ、その楽曲のクオリティは高いし、吉田美和の歌詞の世界観も、やはり彼女独特の個性に満ちている。逆に、そういった一種マニアックな選曲だからこそ、彼らの“核”の部分というか、“本音”みたいなものがより際立っている印象も受ける。

　「7月7日、晴れ」「うれしはずかし朝帰り」「go for it!」など、ベストアルバムに入っていてもおかしくない人気曲や、ファンからの支持が高いアルバム曲などが集められた「WATASHI DISC」を聴くと、どうして彼らの楽曲が、長い間、ファンの人たちに愛され続けているか、そしてファンのひとりひとりがどんな歌詞に共感しているのか、ということが伝わってくるし、吉田美和選曲の「MIWA DISC」には、結構ディープなラブソングが多く収録されていて、ドリカムの楽曲は、決して明るく楽しいだけではなく、もっと深い世界観も歌っているということがわかる。そして中村正人選曲の「MASA DISC」は、ファンキーなナンバーが多く、ドリカムのサウンド面での特長がよくわかる内容になっている。

　ドリカムがこれまでに歌ってきたのは、「LOVE LOVE LOVE」「未来予想図」などといった、明るく前向きなラブソングばかりではなく、時には傷つき、時には悩み、もがき苦しみながらも一生懸命生きている女性の姿だ。そんな女性の“心の声”を、吉田美和の圧倒的なボーカルと、中村正人のハイクオリティな楽曲で表現しているのが、DREAMS COME TRUEなのだ、ということが、この“ウラ”ベストを聴いていると、より濃縮された形で伝わってくる。明るい笑顔の裏に隠された、本当の“素顔”を垣間見るような、そんな作品だといえるだろう。マニアックだからこそ、より濃く、より深く、彼らのことを知ることができるし、どの楽曲も本当にクオリティが高く、彼らが1曲1曲、全身全霊を傾け、愛情深く制作しているということも伝わってくる。“ウラ”だけど、とても“ピュア”なベストアルバムだ。

【文：熊谷 美広】