たとえば数十年後の人類が〈レキシの歴史〉を振り返った時、2年ぶり5作目となるニュー・アルバム『Vキシ』をどのように位置づけるだろうか。筆者はこのアルバムに「レキシ成熟期」のはじまりを感じた。

シングル「SHIKIBU」のリリースやオシャレキシ（上原ひろみ）とのコラボ・ツアー、さらにNegiccoや関ジャニ∞への楽曲提供などを経て制作された。
キュウソネコカミをバンド丸ごとフィーチャーした「KMTR645」でかつてないほどにラフでタフなロックンロールを聴かせたかと思えば、ビートルズ中～後期を彷彿させるサイケデリック・ポップ「一休さんに相談だ」、カオティックな変拍子曲「寺子屋FUNK feat. シャカッチ」と、過去最高にレンジの広い鮮やかな曲調で楽しませる。

一方でアジカン後藤正文を迎えた疾走感あふれるラブソング「やぶさめの馬」や、松たか子とのデュエットによるせつなくも前向きな別れのバラード「最後の将軍」など、レキシワードがどうのこうのはさておいてストレートに訴求するリリシズムの深まりも感じさせる。「もはや歴史でもない」とは本作のキャッチコピーだが、「日本史をモチーフに歌うアーティスト」という枕詞はもう必要ないのかもしれない。まさに今、我々はレキシが歴史を超える歴史的瞬間を目撃しているのだ。

【文：宮内 健】