レビュー

androp | 2016.07.20

連載 第130週
androp
「best[and/drop]」


best[and/drop]は、バンドの今と見事にシンクロしているベスト盤だ。

 andropのベスト盤は、[and]と[drop]の2枚組30曲。その重量感もさることながら、粒よりの名曲を支えるアレンジに、改めてこのバンドの“詰めの確かさ”を感じる。
ギターのアルペジオひとつとっても、メロディとの関連性が吟味された上で奏でられる。ベースは基本を守りつつも、どこかに必ず自由なフレーズが入っていて、楽曲にアクセントを加えている。細かい刻みのリズムであっても、その2倍、4倍のグルーヴが背後に潜んでいて、スケール感を演出する。途中でリズムが変化する曲では、自然に展開するように細心の注意が払われていて、不必要な複雑さに陥らないのも、このバンドの良さだろう。2010年代のJ-ROCKの最良の部分をちりばめた楽曲群は、まさにベストの名に恥じない。

 注目は[and]と[drop]の最後に収められている、2曲の未発表曲だ。
[and]の「Hana」は、このベストに込めたバンドの思いを表現しているかのように聴こえる。ファンを“花”に見立てて、ゆっくりと、しっかりと関係性を築いていく決意が述べられている。珠玉のバラードだ。
[drop]収録の「Sayonara」は、バンド自身の現時点での感慨を歌っているように聴こえる。楽器の音色の美しさを極限まで引き出したアレンジが、シンプルなメロディの良さを輝かせる。歌の最初と最後に配された♪さよならが今も 僕らを焦がす♪というフレーズは、ロックバンドを継続するモチベーションとして最高の言葉だろう。

 そうした楽曲の良さはもちろんだが、優れたビジュアル面も見逃せない。特に僕が魅かれたのは、タイポグラフィだった。タイポグラフィとは“文字のデザイン”のことだが、これまでandropが発表してきた楽曲タイトルがオリジナルな文字で刻印されている。ただの“文字”ではあるが、先ほどアレンジ面で述べたことと同じく、きっちり詰められたデザインが深い美しさをたたえている。

 思わず手に取りたくなるパッケージの価値を保証しているのは、このビジュアル・デザインだ。そうして、手にしたパッケージでandropのベストの音を聴いて欲しい。andropが7年間かけて蓄えた素晴らしい音をいい音質で聴いて欲しい。

 ♪一粒の幸せを選んで いつかまた 会えるように土に落としたの♪と「Sayonara」は歌う。これはこのベスト盤を選曲していた時のメンバーの気持ちを代弁するかのようなフレーズだ。バンドの初期に作られた曲とのことだが、バンドの今と見事にシンクロしているのが感動的で、ベストのラストを飾るにふさわしいナンバーとなっている。

【文:平山雄一】

tag一覧 アルバム 男性ボーカル androp

リリース情報

best[and/drop](初回限定盤)

best[and/drop](初回限定盤)

発売日: 2016年07月27日

価格: ¥ 3,300(本体)+税

レーベル: WMJ

収録曲

disc1: and
01 Roots
02 Colorful
03 Glider
04 MirrorDance
05 Puppet
06 Bright Siren
07 Noah
08 World.Words.Lights.
09 Boohoo
10 Voice:日本テレビ系ドラマ「Woman」主題歌(2013)
11 UtaUtai no Karasu
12 Melody Line
13 Yeah! Yeah! Yeah! :三ツ矢サイダーTVCMソング(2015)
14 Astra Nova(CD初収録曲)スクウェア・エニックス「スターオーシャン5」テーマソング(2016)
15 Hana(未発表曲) 

disc2: drop
01 Tonbi
02 Image Word
03 Nam(a)e
04 Basho
05 Clover
06 March
07 Bell
08 End roll
09 Rainbows:映画「鈴木先生」主題歌(2013)
10 Missing:映画「ルームメイト」主題歌(2013)
11 One
12 Shout:TBS系ドラマ「家族狩り」主題歌(2014)
13 Run:J-WAVE FOOTBALL FEVER 2014 キャンペーンソング(2014)
14 Kokoro(CD初収録曲):NHKドラマ10「わたしをみつけて」主題歌(2015)
15 Sayonara(未発表曲)
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