レビュー

中田裕二 | 2016.08.17

連載 第134週
中田裕二「THE OPERATION/ IT’S SO EASY」


精鋭プロデューサーたちをチョイスした、カッコよくてスムーズな両A面シングル

 中田は優れたシンガーソングライターであると同時に、ミュージシャンやプロデューサーを選ぶ眼にも鋭いものがある。そんな中田が今回、組んだプロデューサーはハイクオリティのサウンド作りで定評のある《origamiPRODUCTIONS》に所属する2人だ。両A面シングルの「THE OPERATION」は関口シンゴと、「IT’S SO EASY」はShingo Suzukiと中田の共同プロデュースとなっている。
 めちゃカッコいいのは「THE OPERATION」だ。“BLACK EYED SOUL=黒い瞳のソウル”を標榜する中田が書いたグッド・メロディに、関口のギターが今のソウル・ミュージックのエッセンスを注入する。このコンビネーションがハマって、名曲揃いの中田ナンバーの中でも屈指のグルーヴィーなポップチューンに仕上がった。♪君の秘密を教えてよ それがはじまりの合図さ♪というフレーズにドキリとさせられる。優雅なダンス・ミュージックとシャープなラブソングが両立する、まさに“ザ・ナカダ・ワールド”がここにある。

 めちゃスムーズなのは「IT’S SO EASY」だ。Shingo Suzukiが紡ぎ出すミディアム・テンポのゆったりとしたリズムに乗って、スムーズにスト―リーが語られる。「THE OPERATION」と比べると、ロック色の濃いビートで、これもまたザ・ナカダ・ワールドのひとつ。懐の深い大人の男の包容力を感じさせるナンバーだ。

 今回のカップリング曲も、タイトル曲との関連が感じられて、興味深い。ORIGINAL LOVEの「接吻」はじっくり歌い込まれていて、田島貴男とはまた別の色気がにじむ。その歌いぶりには「THE OPERATION」に通じるものがあり、今の中田のボーカリストとしての“テーマ”がセクシーさに傾いているように思えて面白かった。もともと色っぽい中田が、さらに艶っぽいボーカリストになっていくのだろう。
 もう1曲のカバーは、南佳孝の「モンロー・ウォーク」だ。南は今年、洋楽邦楽をカバーした傑作アルバム『ラジオな曲たち』をリリースしたが、南もまた田島と同じくセクシーなシンガーソングライターだ。その代表作「モンロー・ウォーク」を、中田は自ら弾くギターのみで歌っている。タイトル曲ではそれほど中田のギターがフィーチャーされていないので、“ギタリスト中田”を楽しむのなら、この曲がピッタリだろう。
 そして感慨深いのが椿屋四重奏のサードアルバム『TOKYO CITY RHAPSODY』に入っていた「不時着」のセルフカバーだった。中田はギターのコードをストレートに掻き鳴らしながら歌う。ラストの♪地図を無くした 当てのない僕らは ここがどこであろうと 僕はかまわない♪というフレーズまで、丁寧に歌い切る。その説得力は重く、かつての比ではない。この歌のキーワードの一つである“プリズム”は、「THE OPERATION」のキーワードでもあり、このシングルの全曲が有機的に絡み合っていてスリリングだ。 
 リスナーの気持ちがよく見えている、中田のカッコよさとスムーズさが発揮されたシングルだ。

【文:平山雄一】

リリース情報

THE OPERATION  /IT’S SO EASY

THE OPERATION /IT’S SO EASY

発売日: 2016年08月24日

価格: ¥ 1,500(本体)+税

レーベル: テイチクエンタテインメント

収録曲

01. THE OPERATION
02. IT’S SO EASY
03.接吻
04.モンロー・ウォーク
05.不時着

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