レビュー

竹本健一 | 2016.10.12

連載 第142週
竹本健一『明日に咲く花』



竹本健一のこだわりと、リスナーの聴き心地のバランスがとてもいいシングル


 「It’s Alright ~君といるだけで~」や「Be shiny」などゴスペラーズへの楽曲提供で知られる竹本健一は、ツウのツボと、誰もが心を奪われるキャッチ―さを両立させる名人。ニューシングル「明日に咲く花」収録の3曲すべてがこの“両立”を見事に果たしていて、まさに“竹本マーク”がしっかり刻印された作品となっている。

 竹本は大阪出身の38才。大学生の時にR&Bに出会い、そこからボーカル、コーラス、作詞、作曲、アレンジの道を突き進む。多くの経験を重ねてたどり着いた彼の今の境地はと言えば、非常にマニアックなテクニックを使いながら、それが目立ち過ぎず、ポップな印象で楽曲が耳に届いてくることだ。彼自身のこだわりと、リスナーの聴き心地のバランスがとてもいい。

 たとえばシングル・タイトル曲「明日に咲く花」は、一つひとつのメロディの終わりの音がかなり実験的なのに、スムーズに聴けてしまう。この曲の歌詞には♪叶わぬ夢と~誰かに笑われ~見つめた先は遥か遠く♪とあるが、そこにはできるだけ自分の理想の音楽で世の中に受け入れられたいと願ってきた竹本の思いが込められている。そうした歌詞に対して、“ポップに響く難しいメロディ”を当ててくるところが、まさにこの曲の醍醐味だ。だから♪憧れに全てを賭けよう♪というメッセージが立ち上がってくる。

 2曲目の「BUDDY」はアッパーなナンバー。リズムに乗ってたたみ掛けてくるリリックは、見事に韻を踏んでいる。ただし、そこにまったく無理がないのが“竹本作品”の特長だろう。「最低」「Friday」「思い出に」というライム(韻)は、あまりに日常的な言葉なので気付かずに通り過ぎてしまうかもしれない。それでも後で耳に残るのは、見事なライムのせいなのだ。この“すんなりしているのに、ひっかかる”歌詞とメロディが竹本の最大の武器だ。

 3曲目の「DAY DREAM」はぶっ飛んだアンビエント・トラックで、美メロを聴かせるバラード。このバックとメロディのバランスも、竹本ならではだ。

この3曲がセットで、竹本の魅力の“今”がわかるシングルになっている。このところ再評価が高まっているジャミロクワイのストリングスのニュアンスが、ふんだんに取り入れられているのも嬉しい。そして大好きな音楽を“BUDDY=相棒”と呼んではばからない、真っ直ぐな音楽愛がこのシングルの最大の魅力だ。

【文:平山雄一】

リリース情報

明日に咲く花

明日に咲く花

発売日: 2016年10月12日

価格: ¥ 1,000(本体)+税

レーベル: GRACIAS RECORDS

収録曲

01. 明日に咲く花
02. BUDDY
03. DAY DREAM

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