レビュー

清 竜人25 | 2016.11.09

連載 第146週 清 竜人25「My Girls♡」

清 竜人25は、アイドルを名乗りながら、アイドルファンの心理まで飲み込む未来型ユニットだ

 清 竜人25の活動を見ていると、アイドルの時代が未知の領域に突入したことを痛感する。清 竜人がソロからアイドルユニットに転じたことも衝撃だったが、“一夫多妻制アイドル”という前代未聞の形態を取ったことも大きな話題になった。それから2年が経ったこの夏の品川ステラボールでのライブは、清 竜人25の活動が次のステップに入ったことを告げていた。今まであり得なかったアイドルとファンのコミュニケーションが生まれそうになっているのだ。どこがあり得ないかといえば、やはり鍵を握っているのは清の存在だ。ニューシングル「My Girls♡」には、清の存在の秘密が隠されているような気がする。

 「My Girls♡」は、一夫多妻制アイドルの武器をフルに活かして、清とそれぞれの妻との“イチャイチャソング”になっている。かつて1965年にアメリカのコーラスグループ、テンプテーションズが「My Girl」という曲を大ヒットさせた。この歌は当然、“一夫一婦制”を基にしたラブソングだった。しかし清 竜人25の場合は、もちろん「My Girls♡」になる。

 ここで面白いのはテンプテーションズの「My Girl」を聴くと、歌詞があまりにスイートなので「のろけるんじゃねーよ」的な気分になるのだが、「My Girls♡」は不思議と「イチャイチャすんじゃねーよ」的な気分にはならない。それは僕が男だからかもしれないが、女子アイドルたちに囲まれて調子に乗っている清 竜人に対して、やっかみよりも「男の夢だよな」と思ってしまうのだ。相手が2人ぐらいだったらそうは思わないのかもしれないが、6人のアイドルが妻という設定は完全に現実を離れ、“夢の領域”に突入している。そこで清に♪焦らないで♡ 順番はルール♡♪と歌われたら、「どの口がそんなこと言ってんだ!」と笑いながら唇をツネリたくなる。清は“センター”を名乗りながら、実は「俺だってそうなりたい」という男性アイドルファンの夢を代表する存在になっているのだ。そして6人の妻たち=My Girlsは、そんな清の現実にはあり得ない“夢の振る舞い”を笑って許して、楽しんでいる。

 現代の感覚で「My Girl」をとらえると、あまりにもロマンチック過ぎて、“歯の浮くようなラブソング”に聴こえる。なので、こんなベタ甘の歌は、今はあまり存在しない。一方で「My Girls♡」は、まさにベタ甘ソングだ。ただし、恋の相手は複数になっている。「My Girl」から50年が経って、“歯の浮くようなラブソング”は一夫多妻のシチュエーションでなければ素直に聴けなくなってしまったのかもしれない。

 それでもラブソングは、やはりスイートなほうが楽しいに決まっている。もしかすると清は、“よき時代のラブソング”を復活させるために一夫多妻制というスタイルを選んだのかもしれない。そして予想外の化学反応として、男性アイドルファンの夢を代表する存在に近づいている清 竜人25は、アイドルを名乗りながら、アイドルファンの心理まで飲み込む21世紀型ユニットになっていくのだろう。そしてファンたちは、清 竜人25の活動を“新しいエンターテイメント”としてエンジョイしているのだと思う。

【文:平山雄一】 

tag一覧 シングル 男性ボーカル 女性ボーカル 清 竜人25

リリース情報

My Girls(ハート)[完全限定生産盤]

My Girls(ハート)[完全限定生産盤]

発売日: 2016年11月09日

価格: ¥ 1,500(本体)+税

レーベル: トイズファクトリー

収録曲

<CD収録内容>
01.My Girls(ハート)
02.Sundayはわたしのモノ(ハート)
03.My Girls(ハート)(Instrumental)
04.Sundayはわたしのモノ(ハート)(Instrumental)
<DVD収録内容>
「My Girls(ハート)」Music Video
「My Girls(ハート)」Music Videoメイキング映像モノ(Instrumental)

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