レビュー

メロディー・チューバック | 2017.01.23

 昨年、大ヒットしたTVアニメ『マクロスΔ(デルタ)』で、ウィンダミア王国の若き王子・ハインツの挿入歌「オーラ・サーラ~光る風~」や「ザルド・ヴァーサ!~決意の風~」の歌唱を担当したことで大きな話題を集めたメロディー・チューバック。カナダと日本のハーフで、この1月末に二十歳を迎える彼女は、短大の声楽科に通いながら、ドラマやアニメの挿入歌や雑誌のモデルとしても活躍していたが、昨年、ソロ活動を本格的にスタートさせ、ミニアルバム『Melody』で待望のメジャーデビューを果たした。デビュー前に自身で立ち上げ、様々なカバーを披露していたYouTubeチャンネルのコメント欄には「伸びやかで澄んだ歌声」という賞賛の声が寄せられていたが、彼女の最大の魅力は、なんと言っても、その歌声に尽きるだろう。

 メジャーデビューミニアルバム『Melody』には、そんな彼女の歌声のポテンシャルの高さと可能性の広さを示すが如く、実にバラエティーに富んだ7曲が収録されている。タイトルであると同時に、自身の名前でもある「Melody」は、高音のファルセットの歌声のみで多重録音されたオープニングナンバーで、言葉がないからこそ、彼女の純粋な声の響きを味わうことができ、ポップスだけではなく、オペラやミュージカルナンバーも聴いてみたい衝動すら駆られてしまう。
 続く、「Love You ベイビー」は片思いの女の子の気持ちを歌った明るいポップチューンで、プロのシンガーとしての道を歩み始めた不安と期待、そして、決意を込めた「I Promise~誓い~」は和メロのミドルバラードで、ともに等身大の息吹に満ちている。相合傘をモチーフに、孤独なモノクロの世界をカラフルに色付けてくれた君のまっすぐな愛を歌った「Umbrella」は王道のピアノバラード。メロディは切ないのだが、聞き手の心をゆっくりと温めてくれるハートウォーミングなラブソングとなっている。全編英語歌詞のラブソング「FRIDAY」は、ピアノが弾むポップロック。「桜、ひらり」は卒業をテーマにしたバラードだが、別れの悲しさよりも、サヨナラを言わずに再会を願う、芯の強さを感じさせる。前向きで笑顔を湛えた歌声を響かせている。
 そして、最も驚かされたのが、チャーリー・プースとメーガン・トレイナーによるデュエットソング「Marvin Gaye」のカヴァーだ。誰もが知っている70年代を代表するソウルシンガーの名前を冠した曲で、「Let’s get it on」や「Sexual Healing」、「Got to give it up」「Mercy Mercy Me」などの曲名を織り込んだロマンチックなラブソングなのだが、オリジナルはかなり官能的で扇情的な性愛の歌になっていた。しかし、彼女は実の妹であるアンジェラとの息のあったハーモニーによって、まるで、家族で朝までマーヴィン・ゲイの曲を歌いましょう! というような印象を残す、実に爽やかな楽曲へと仕上げている。アレンジはほとんど変わってないにも関わらず。

 デビュー作のカラフルさに心地よい満足感を覚えつつも、早くもどんな楽曲でも自分のものにしてしまうオリジナリティーの確立ぶりと、聴き手を笑顔で包み込んでしまうような懐の深さを考えると、少し気が遠くなってくる。一体、これから彼女は、シンガーとしてどこまで大きくなってゆくのだろうか。

【文:永堀 アツオ】

リリース情報

Melody

Melody

発売日: 2017年01月25日

価格: ¥ 1,852(本体)+税

レーベル: 日本クラウン

収録曲

1. Melody
2. Love You ベイビー
3. I Promise ~誓い~
4. Umbrella
5. FRIDAY
6. 桜、ひらり
7. Marvin Gaye / メロディー・チューバック & アンジェラ・チューバック

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