レビュー

打首獄門同好会 | 2017.01.25

 バンドは星の数ほどあれど、農家からファン・レターが届くのは打首獄門同好会しかいないだろう。バンド名がちょっと怖めと敬遠している方がいるなら、非常にもったいない! これほど生活に密着し、日常に潜む感情を掬い取って、我々の気持ちを代弁してくれるラウド・バンドは他にいないんだから。

 結成は04年にまで遡り、大澤敦史(Gt・Vo)と河本あす香(Dr)がオリジナルメンバーで、06年にJunko(Ba)が加入し、現3ピース編成が整った。音源とライブを両輪にマイペースに活動を続け、じわりじわりと人気と動員を右肩上がりに伸ばし、昨年2月にはZepp Tokyoでワンマン公演を大成功に収め、そのライブを映像化するべくクラウドファンディングを実施したら、なんと1500万円以上集まったり、また日本テレビ「行列のできる相談所」に出演するなど、話題にも事欠かない。

 その魅力は「普遍で特異」な音楽性にある。冒頭のエピソードは「日本の米は世界一」という楽曲を作ったときのリアクションで、彼らの楽曲は食べ物を題材に取り上げたものが多い。「ああ、おいしい!」→「この気持ちを曲にしよう!」という流れだと推測する。普段の生活の中で感じた出来事を音楽にする。ある意味誰もなかなかテーマにしない題材に真摯に向き合い、コミック・バンドに転ばない絶妙なバランス感覚をキープした稀有なバンドなのだ。

 そんな打首から8曲入りの最新ミニ作が届いた。これがまた素晴しい出来映え。今作も食べ物ネタ、日常あるあるネタ、新境地を開拓したテーマありと、打首ファンを裏切らないエンタメ性抜群の楽曲が収録されている。冒頭からサンバのリズムで意表を突く表題曲には爆笑してしまった。それと同時にこう来るのか!という驚きもあり、これは新しい曲調と言っていい。続く「きのこたけのこ戦争」は、デスメタル風味の曲調にウォーウォー!の合唱コーラスを取り込んだファニーな仕上がり。ちなみに僕は「たけのこの里」派です。

 そして、今作の目玉はバンド史上初の客演を迎えた「歯痛くてfeat.Dr.COYASS」だろう。テーマは曲名通りだが、そこにちゃんと現役歯科ラッパーのCOYASS(ex.デブパレード)を迎えているところに、尋常ならざるこだわりを感じずにはいられない。まるでANTHRAXとPUBLIC ENEMYのコラボ曲「Bring The Noise」を打首流に現代によみがえらせたミクスチャーっぷりだ。それから「日本の米は世界一」の続編作と言える「島国DNA」に加え、シングル・カップリング曲「Natto Never Dies」は新たにストリングスを導入し、ビックリするほど変貌を遂げている。これはMETALLICAがオーケストラと共演した名ライブ盤『S&M』を彷彿させる壮大な仕上がり。いやぁ、完全にやられました。ほかに北島三郎の「与作」へのオマージュ感漂う「もつ鍋が呼んでいる」、初のカバー曲「1/6の夢旅人2002」もあり、ニヤニヤしながら全部聴き終えてしまった。今作を気に入ったら、是非レコ発ツアー(ファイナルは3/25新木場STUDIO COAST!)にも足を運んでほしい。ライブはお腹が空いて最高ですから。

【文:荒金 良介】

tag一覧 シングル 打首獄門同好会

リリース情報

やんごとなき世界

やんごとなき世界

発売日: 2017年01月25日

価格: ¥ 2,000(本体)+税

レーベル: LD&K

収録曲

1.やんごとなき世界へ
2.きのこたけのこ戦争
3.歯痛くて feat.Dr.COYASS
4.島国DNA
5.Natto Never Dies (Strings Edition)
6.数多の数奇な物語
7.もつ鍋が呼んでいる
8.1/6の夢旅人2002

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