レビュー

amazarashi | 2017.02.22

 amazarashiという音楽、もっと言ってしまえば秋田ひろむという人間の自己表現には、いつも映像(ビジュアル)が共存している。この異なる要素がリンクするライヴは、デビュー当時から噂になるくらいハイクオリティーで精度が高く、amazarashiの存在意義そのものを知名度に直結させた。

 その後、その精度は磨かれ、ステージ上で演奏する彼らの姿ともリンク。さらに客席にサラウンドスピーカーを設置したライヴや、四方に大画面のLEDを配置した360°ライヴなど、秋田ひろむは、誰もが実現を躊躇うような手法をどんどん現実にしていった。

 誰1人想像できなかった360°ライヴを、ライブ・ビューイングも含め、観客の納得や大称賛の中で大成功に納めた彼らは、もはや、無敵と言っていいんじゃないだろうか。他のバンドとは、目指しているものが違うことを、大勢の人に、はっきり提示できたという意味も含めて。

 そんなamazarashiがニューシングルを完成させた。タイトルは「命にふさわしい」。ゲーム“NieR”シリーズのディレクター・ヨコオタロウ氏の提案でコラボレーションが実現した今作。秋田ひろむは、NieRの新作『NieR:Automata』の物語と、ヨコオ氏が作った絵本のプロットを基に、本作を書き下ろしたそうだ。

 優しい。上質の真綿のような耳触りと暖かさ。歌詞は、相変わらず真意を言い当てる切れ味があるが、例えば「孤独」という言葉が、既存の曲とは違った趣で響く。これまでの「孤独」が、自我の象徴だとするならば、この作品の「孤独」は、他人との距離、すなわち人間関係を表す「孤独」と、とれる。秋田は、これまで少しずつ、聴き手との距離を縮めるよう挑戦し続けてきたが、歌や曲調に、これだけストレートに、その意志が感じられるのは初めてだろう

 リフレインされる ♪ 心さえなかったなら ♪ というワンフレーズ。ここに“その方が楽だったかもしれない”というメッセージが読み取れる。このスタイルやメッセージは、昔から変わらないが、今作には、きっと続きがある。そしてこの続きが重要なのだ。

 私は、その続きをこんな風に受け取った。

 楽じゃないから、命にふさわしい、と。

【文・伊藤亜希】

リリース情報

命にふさわしい

命にふさわしい

発売日: 2017年02月22日

価格: ¥ 1,200(本体)+税

レーベル: SMAR

収録曲

01.命にふさわしい
02.幽霊
03.数え歌
04.命にふさわしい acoustic version

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