レビュー

NOWEATHER | 2017.02.27

“初期衝動”という言葉がある。たまに何枚も作品をリリースしてから“初期衝動に立ち返った”などというアーティストがいるが、“初期衝動”とは文字どおり初期のものに限られ、正真正銘の初期に戻れるわけではない。

 千葉出身の4人組、NOWEATHER(ノーウェザー)の1stミニアルバム。大雑把に分類すれば、いわゆるギターロックなのだが、これぞ“初期衝動”に突き動かされたアルバムである。今後、広がってゆく彼らの活動を、積み重なってゆく作品から過去を振り返ったとき、その原点、その萌芽を感じられる貴重なアルバムになることだろう。

 若いギターロックバンドとして彼らの音楽が特殊なのは、フェスでよく見かける“拳を突き上げてもらうのを前提とした立てノリロック”ではないということ。特定の、いわば定式というものに支配されていないのが、このバンドの魅力のひとつだ。そして彼らは近い将来、「俺たちはギターロックに括られたくない」と言い出しはしないかと密かに期待している。それはバンドとしての大きな可能性、そして何物にも囚われない幅広い音楽性を秘めていると思うからだ。

 光射す風が駆け抜ける「誰も風を止めない」から幕を開ける本作。スムーズかつ巧みな展開を持ち、練られたアレンジの妙を感じさせるスケールの大きなこの曲は、バンドの持てる技量と、前に進んでいくしかないという決意をあますところなく伝える。青春の軋み、辛辣な感情の発露、自らの非力さに向き合い、どこか満たされない胸のたぎりを託した全7曲には、かすかな希望と信念が垣間見える。弱冠20歳とは思えない、いずれもフックの効いたメロディックな楽曲で構成されていることに驚かされた。この心を捉える旋律は、バンドの大きな武器になるに違いない。

 そしてバンドのアイデンティティとなっているのは、大畑カズキ(Vo、Gt)の危うさを湛えたハイトーンかつ繊細なボーカルだ。だが不安定なそれではなく、ブレることなく、強く印象に残る。聴く者の心に、時には引っ掻き傷を残し、時には傷を優しく包み込む歌声。さらには技巧的な4人のバンドアンサンブルにはそれぞれの音の間に絶妙な隙間があり、こちらの感情を流し込むことができる。「誰も風を止めない」で始まり「約束の駅」で締め括られる本作。聴き終わったあとに短編映画を観たような、そしてまた繰り返し観たくなるような気分になるのは私だけではないはずだ。

 1stアルバムを携えた彼らは今、大きく舵をとり、清々しく追い風に乗りながら海原に出ようとしている。もう“誰も彼らを止めることはできない”。

【文:篠原美江】

リリース情報

誰も君を止めない

このアルバムを購入

誰も君を止めない

発売日: 2017年03月01日

価格: ¥ 1,667(本体)+税

レーベル: primitive

収録曲

01.誰も風を止めない
02.スターゲイザー
03.赤い青春
04.おやすみ
05.ナイフ
06.blue
07.約束の駅

トップに戻る