レビュー

DADARAY | 2017.06.28

 1stミニアルバム『DADASIM』(2017年4月リリース)、2ndミニアルバム『DADAMAN』(2017年5月リリース)に続く、3rdミニアルバム『DADAX』。3カ月連続のリリース(3作合わせると全部で17曲とリミックス1曲)にも驚かされるが、さらにすごいのが楽曲の質の高さ。ゲスの極み乙女。のベーシスト休日課長が、ボーカリストの“REIS”、ゲスの極み乙女。、indigo la Endでコーラスを務めている“えつこ”とともに結成したポップス・バンド。楽曲制作は川谷絵音が担当というベーシックな情報は既に周知だと思うが、そんなインフォーメーションは抜きにして、とにかく曲の良さを実感してほしい! と強く言いたくなるほどのクオリティが実現しているのだ。もっとも強いインパクトを放っているのは、リードトラック的な立ち位置の「ダダックス」。80‘sポストパンク、ニューウェイブを想起させるバンドグルーヴのなかで官能的なハモンドオルガンが鳴り響き、さらに「善意の束を押し付けて/空っぽな言葉並べた」というエッジの効いたフレーズが飛び込んでくる楽曲なのだが、全体のイメージはきわめてポップに仕上がっている。中心にあるのはREISのボーカル。繊細な鋭さを備えながら、決してダークに偏らず、快楽的なポップネスへと導く彼女の声の魅力が、川谷のメロディと言葉によってさらに増幅される――その刺激的なケミストリーこそが、この曲の凄さだと思う。

 70年代ニューミュージックっぽい雰囲気を現代的なポップスへとアップデートさせた「場末」、アシッドジャズ的なヴァイブレーションとシックな手触りのメロディライン、“ウイスキーとはしゃいだ 捨てられるなら今がいいな”というフレーズがひとつになった「For Lady」、緻密に構築されたコード進行と洗練されたバンドサウンドを軸にしたポップソング「9月に落ちるひとしずく」など、そのほかの楽曲のアベレージも高水準。

 5月に発売されたゲスの極み乙女。『達磨林檎』、7月12日にリリースされるindigo la End『Crying End Roll』と川谷が関わっているバンドの新作が次々と発表されているが、現時点において、個人的にもっとも惹かれているのは本作『DADAX』。その最大の理由は、メロディメイカーとしての川谷の資質がもっとも強く感じられるから、である。(それにしても川谷の創作ペースはただ事ではない。作曲家としての彼はいま、まちがいなく“ゾーン”に突入していると思う)

【文:森朋之】

リリース情報

DADAX

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DADAX

発売日: 2017年06月28日

価格: ¥ 1,700(本体)+税

レーベル: 灯火レコーズ

収録曲

1. 場末
2. BATSU
3. ダダックス
4. 誰かがキスをした
5. For Lady
6. イキツクシ(Remix)
7. 9月に落ちるひとしずく

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