レビュー

sumika | 2017.07.12

 sumikaが初のフルアルバム『Familia』をリリースした。2015年に新メンバー小川貴之(Key)が加入。同年、中心メンバーである片岡健太(V&G)が体調不良のためにライブ活動を休止するなど、ここ数年、様々な出来事を経験してきたsumika。シングル「Lovers」「伝言板」、価格設定自由というスタイルでリリースされた最新シングル「Dress Farm#3」収録曲「春風」などが収められた本作は、このバンドの特性がバランスよく表現された作品となった。中心にあるのは、メンバー以外のミュージシャン、アーティストとの交わりから生まれた、解放感に溢れたサウンドメイク。そして、“仲間、家族と一緒に音楽という表現の旅を続けよう”という意志だ。

 オープニングを飾るのは、蔦谷好位置のプロデュースによる「Answer」。“心と言葉をしっかりつなぎ、音楽を通して自分自身の答えを出す”というテーマを掲げた(じつは)シリアスな楽曲なのだが、ストリングス、ピアノをバランスよく交えた華やかなアレンジメントにより、極上のポップチューンへと結びつけている。日本を代表する名プロデューサーの手により、sumikaの優れたポップネスが弾き出された楽曲と言えるだろう。

 しなやかなファンク・サウンドと“呼吸”をテーマにした歌がひとつになった「KOKYU」も、このバンドの音楽的な広がりを伝えている。ベースに山口寛雄、バイオリンにBIGMAMAの東出真緒、パーカッションに桑迫陽一が参加し、有機的なバンドグルーヴが実感できるのも楽しい。バンドのメンバーだけで完結させず、様々なフィールドで活動しているアーティストとつながりながら色彩豊かな楽曲を生み出す――それはまさにsumikaの本質そのものだ。

 アルバムのラストは、シンプルなバンドサウンドのなかで“扉を開けて、歩き出そう”という意識を込めた歌が広がる「Door」。決して順風満帆とは言えないキャリアのなかで彼らは、内に閉じこもらず、常に気持ちを外に向けながら、ポジティブなパワーを備えた楽曲をクリエイトしてきた。2013年の活動スタートから4年。本作『Familia』によってsumikaは、ようやく自らのアイデンティティを獲得したのかもしれない。9月からは、本作を引っ提げた全国ツアーを開催。10月、11月には東京国際フォーラム ホールA公演を含む東名阪のホールツアーも行われる。人と人とつなげるパワーを持ったsumikaの音楽が、その真価を発揮する瞬間はすぐそこまで迫っている。

【文:森朋之】



sumika /「Familia」全曲試聴 Trailer

リリース情報

familia

familia

発売日: 2017年07月12日

価格: ¥ 2,800(本体)+税

レーベル: [NOiD]/murffin discs

収録曲

01. Answer
02. 春風
03. Lovers
04. KOKYU
05. Someday
06. アネモネ
07. ここから見える景色
08. ピカソからの宅急便(Instrumental)
09. MAGIC
10. アイデンティティ
11. Summer Vacation
12. まいった
13. 「伝言歌」
14. Door

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