レビュー

ひめキュンフルーツ缶 | 2017.08.02

 あまりにも唐突で驚いたというより、すぐに事態を飲み込めなかった。
 地元・愛媛を拠点に活動するご当地アイドル・グループ、ひめキュンフルーツ缶(以下・ひめキュン)。ご存知の方も多いだろうが、今年6月16日付けで体調不良により、河野穂乃花が卒業、それに伴い、奥村真友里、岡本真依、谷尾桜子、菊原結里亜のメンバー4人も10月末で卒業。つまり全員卒業となり、ひめキュンはグループ名、楽曲を引き継ぐ形で、11月から新規メンバーで再始動する。

 今回、結成から7年間の歴史を振り返った初のベスト・アルバム『煌-BEST-』がリリースされる。内容に関しては後で触れるとして、まずはひめキュンとはどんなグループだったのか。今でこそ、バンドとアイドルが一緒に対バンするのは珍しい光景ではないが、彼女たちはその先駆け的アイドルと言っていい。香川で毎年開催されている野外ロック・フェス「MONSTER baSH 2013」においては、SPITZ、9mm Prabellum Bullet、ONE OK ROCKなど豪華メンツが顔を揃える中で、アイドルの枠組みを越えて肝の座ったパフォーマンスを見せ、それ以降、積極的にバンドとの対バンを繰り広げて地力を蓄えていく。

 また、昨年末からはあの怒髪天のメンバーとタッグを組み、新バンド"ひめキュン蝦夷乃無頼缶"(ひめきゅんえぞのぶらいかん)でツアーを回り、周囲をアッと驚かせ、メンバー自身も非常に刺激を受けたようだ。そのいい流れの中で沸き上がった卒業というニュースに、もったいない!と思った人も多いだろう。僕もその一人だ。しかし、今は「この5人でひめキュン」という彼女たちの鉄の意志を尊重し、このベスト盤を味わい尽くしたい。

 今作はインディーズ時代も含む全シングル16曲を収録(初回限定盤は同内容のMV収録)。オープニングは8人時代のCDデビュー曲「恋愛エネルギー保存の法則」から幕を開ける。この頃は歌声やMVを踏まえ、キラキラしたフレッシュな輝きを大放出。それからエレクトロ色強めのダンサブルな「恋の微熱」、エッジ際立つバックの演奏が鼓膜を叩くメジャー・デビュー曲「アンダンテ」。そして、アルバム後半には「TEAR DROPS」、「覚醒ミライ」と続き、彼女たちの著しい成長ぶりが手に取るように感じられるナンバーが目白押し。アイドル然とした佇まいから、徐々にフィジカルに訴える強靭なハートを身に付け、聴く者の琴線を直撃するエモーショナルな曲調まで堂々と歌いこなしている。さらに怒髪天の増子直純が作詞、上原子友康が作曲を手がけた「伊予魂乙女節」も収録。従来のイメージを刷新し、骨太かつ繊細な新境地を拓いた名曲である。

 今作はまさに、少女から大人の階段を上り始めた"キラメキ"を封じ込めたベスト盤と言えるだろう。最後を飾る最新シングル表題曲「ココロツナガル」の≪溢れる涙でさえもきっと翼に変わるから≫の歌詞は、とりわけ印象深い。これまで応援してくれたファンとの絆は永遠なんだ、という彼女たちのラスト・メッセージとも読み取れる。

【文:荒金良介】

リリース情報

煌-BEST-

煌-BEST-

発売日: 2017年08月02日

価格: ¥ 2,900(本体)+税

レーベル: 徳間ジャパンコミュニケーションズ

収録曲

1.恋愛エネルギー保存の法則
2.恋のプリズン
3.8分の1のブレス
4.恋が止まらない
5.恋の微熱
6.例えばのモンスター
7.キラーチューン
8.バズワード
9.アンダンテ
10.モラトリアム
11.ハルカナタ
12.パラダイム
13.TEAR DROPS
14.覚醒ミライ
15.伊予魂乙女節
16.ココロツナガル

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