レビュー

CIVILIAN | 2017.08.02

 主人公は、どうしても自分を肯定できない“私”。物心がついたときから容姿にコンプレックスを抱いていた“私”は、今日、誕生日を迎えた。バースデーパーティなんて好きじゃないけど、「皆が待っているから きっとその筈だから」と言い聞かせ、「あの人の家まで」行こうと思い直す――。CIVILIANのニューシングル「顔」。この曲のなかで描かれているのは、自分自身に自信を持てない人が、その事実をどうにか受け入れ、どうにか人生を歩いていこうとする感情を変化だ。

 バンドのフロントマンであるコヤマカズヒデ(V&G)は、Lyu:Lyu時代から(2016年にバンド名をCIVILIANに改名)人間の奥底に存在しているリアルな思いを表現してきた。“人は前向きに生きるべき”という風潮に対する違和感、他者と上手く接することができない悩み、どうしても未来に対して希望が持てないことに対する絶望感。そういう感情――決して人には言えないが、誰もが持っている筈の――をエッジの効いたロックサウンドとともに表現する彼の歌は、真摯に日常を過ごしている人々の心を確実に捉え、少しずつ支持を拡大してきた。シンプルな言葉で生きることの本質を貫いたロックバラード「顔」は、現時点における彼らの最高傑作と言っても過言ではないだろう。

 コヤマのギターと歌をしっかりと際立たせ、楽曲に込められた濃密なメッセージ性を増幅させるようなアンサンブルも素晴らしい。アコギの弾き語りをもとにして、スタジオでのセッションで形作られたというアレンジからは、コヤマ、純市(Ba)、有田清幸(Dr)のなかで有機的なインタープレイが生まれていることが伝わってくる。コヤマの楽曲を愛し、それを幅広いリスナーに伝えるために何ができるか?――純市、有田の演奏からは、そんな純粋なモチベーションを感じてもらえるはず。「顔」が幅広い層のリスナーに訴えかける普遍性を獲得しているのは、このふたりの力が極めて大きい。本当にバンドらしいバンドだと思う、CIVILIANは。

 C/Wにはロカビリー・テイストのバンドサウンドのなかで、承認欲求をテーマにした切実な歌詞が響く「デッドマンズメランコリア」、そして、コヤマが“ナノウ”(ボカロP)名義で発表した「ハロ/ハワユ」のカバーを収録。このバンドが持つ幅広い音楽性を実感できるシングルに仕上がっている。CIVILIANとして3枚目のシングルとなる本作は、彼らにとって大きなターニングポイントになるはずだ。

【文:森朋之】

リリース情報

顔

発売日: 2017年08月02日

価格: ¥ 1,200(本体)+税

レーベル: Sony Music Records

収録曲

1.顔
2.デッドマンズメランコリア
3.ハロ/ハワユ

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