レビュー

ヤバイTシャツ屋さん | 2017.09.20

 新しい、面白い、カッコイイ。どれを取っても難しく、どれが欠けても成立しない。群雄割拠の音楽シーンの中で、その3つを満たしている稀有なバンドが、通称「ヤバT」ことヤバイTシャツ屋さん。毎回、音源が出るたびにこれほどワクワクするアーティストもいない。おそらく、ファンの方も同じ心境だろう。
 誰も曲の題材に取り上げないテーマを見つけ出す斬新な発想力。その新しさは他の追随を許さない。いざ楽曲に耳を傾けると、脳にじわじわ沁み込んでくる可笑しさに襲われる。それはいままで味わったことがない類いの面白さ。その面白さを倍増させる要因として、音楽そのものはフザケていない、ということ。ここが大事。まともな歌詞だったら、普通にいい曲として聴けてしまう。曲調自体はとてもカッコイイ。そのギャップの激しさがたまらない魅力となり、唯一無二のヤバTワールドを作り上げている。

 そして、前シングル「どうぶつえんツアー」から約5カ月ぶりになる5thシングル「パイナップルせんぱい」も、我々の期待を裏切らない破壊的なクオリティ。冒頭曲「ハッピーウェディング前ソング」。まず曲名が妙。初めて見る字面の並び。この曲はハッピーウェディングに行くまでの段階を歌った曲になっている。傍目にちょっとお似合いの2人がいる。それなら即入籍すればええやんという、結婚オススメ・ソングなのだ。特に「キッス!キッス!キッス!キッス!キッス!キッス!キッス!からの入籍!入籍!入籍!入籍!入籍!入籍!!!!!」の歌詞のパンチ力は半端じゃない。こやまたくや(Gt・Vo)、しばたありぼぼ(Ba・Vo)のツイン・ヴォーカルもインパクト抜群で、後者のハイトーン・ボイスはこれ以上なく炸裂している。曲の後半では「きっと2年以内に別れるけど・・・」と毒を盛った歌詞も痛烈すぎ。だが、結婚に限らず、直感を信じて動くことの大切さを説いた曲だと思う。

 続く「眠いオブザイヤー受賞」は、アコギを用いたオシャレな曲調だ。注目はこやまが長めのラップを披露している点だろう。それから「今年度最高のミルフィーユ」と囁くもりもりもと(Dr・Cho)のセクシー・ボイスが、おいしいポイントで投下されているのでそこも必聴! そして、ロッテ「キシリトールガム」20周年プロジェクトソングで、以前からライヴでもプレイしていた「とりあえず噛む」がここに収録。ヤバTお得意のメロコア・チューンで、ポジティヴなエナジー全開でカッ飛ばしている。今作を聴き、湯水のごとく湧き出るアイデアとユーモアに改めて感服しました。

【文:荒金 良介】

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リリース情報

パイナップルせんぱい

パイナップルせんぱい

発売日: 2017年09月20日

価格: ¥ 1,100(本体)+税

レーベル: ユニバーサルミュージック

収録曲

1.ハッピーウェディング前ソング
2.眠いオブザイヤー受賞
3.とりあえず噛む
4.ハッピーウェディング前ソング

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