レビュー

The Wisely Brothers | 2017.11.08

「ここのところ全く手紙を書いてないなぁ……」
このThe Wisely Brothersの7インチアナログ盤「The Letter」を聴きながら、そんなことを想い返していた。
私も未だ各位に私信は送っている。しかし、その手段は圧倒的にメールやメッセンジャー、SNSばかり。肉筆による手紙の方が想いや気持ちが伝わり、相手方の機微が読み手にも書き手にも、より浮かびやすいのは分かる。けれどどうしても利便性を優先し、書くのではなく打つ方を選んでしまう。

このThe Wisely BrothersのA面曲「The Letter」は、まさにそんな手紙を書いている際の光景や込めた気持ちや想い、先方を思い浮かべて書いていたであろう、その様が浮かんでくる楽曲だ。
プロデューサーに片寄明人(GREAT3)、ミックスエンジニアにジョン・マッケンタイア(Tortoise、The Sea and Cake)を迎えて制作された同曲は、ボーカル&ギターの真舘晴子が先日の来日公演の際共演したニューヨーク在住のシンガーソングライター、フランキー・コスモスに綴った手紙をモチーフに書かれたもの。初の全編英語は、伝わりやすい英文を用い、それでも辞書をひきひき一生懸命書いた手紙のような可愛さと健気さが詰まっている。いわずもがな手紙は、その紙自体はもちろん、気持ちも一緒に先方へと飛ばしてくれる。そう、この楽曲からは、彼女の気持ちが手紙と一緒に海外のフランキー・コスモスの下と飛んでいっているのが手に取るように伝わってくるのだ。

イベント『BUKURO EXPO』に際する、臼田あさ美と太賀出演のオフィシャルムービーにも起用された、この「The Letter」。ジョン・マッケンタイアの名前からスリルジョッキー系やシカゴ音響系の仕上がりを想像するも、従来の彼女たちのアンニュイさよりもキュートさや可愛らしさ、そして、あのインディーポップ感が前面に出ている。とは言え、どこか漂う独特の浮遊感やカタルシス、ドリーミーさは彼ならではと言える。
この楽曲の魅力は、何と言っても彼女たち独特の突如やってくる開けた感や急に活力がみなぎってくるところ。前作EP内の「Thursday」にも宿っていたあの感じだ。それが体を包んだ瞬間、無敵or何でも出来る気がしてくる。なかでも中盤に繰り返される「I can feel someting」が段々と信じられ、力を帯びていき、最後にはとてつもないワンダーさを魅せてくれる箇所は聴きどころの一つだ。

B面は、Enjoy Music ClubのトラックメイカーEMCATによる「アニエスベー Remix」を収録。オリジナルは前作EPに収まっているのだが、同曲が全体的にエレクトロな仕上がりにリミックスされている。オリジナルより若干テンポも上がり、ドラムは打ち込みに差し変わり、チャームが可愛さを増させ、それらも手伝い、オリジナルに比べ、よりしゃんと背筋が伸びた歌へと変貌を遂げている。浮遊感も増し、聴き手に心地良さを与えてくれる同曲。なんとなく原曲に比べ10歳ぐらい大人になったように映った。

最後に今回のフォーマットである7インチアナログ盤について。
ジャケットはイラストレーターのMIC*ITAYAの手によるもので、ワークショップで生まれた、そのクラフト感あふれるデザインも魅力の一つだ。
“とって置きたい”“手元に残しておきたい”。この気持ちはコレクター性が希薄になっているこの時代、とても尊い。そしてコレクション性にも優れているこの7インチアナログ盤は、まさにささやかで愛おしい宝物。そういった部分でも先述の手紙ととても似ている。実は手紙はけっこう残しておいたりする。そこにその時、その場で生まれた想いや気持ちが筆に乗り、真空パックされたかのようなかけがえのないものを内包しているからだ。それは後々もらい手のかけがえのない宝物になる場合も多々ある。

シンプルな歌と、装丁やフォーマットながら、いつまでも愛くるしく、いつの日にかあなたの宝物のひとつになっているかもしれない同作品。この機会にぜひ手に入れて、この曲や手紙を書いた真舘の想いと共に、いつまでも大切に持っていて、時々は思い返したように針を落として欲しい。きっと、その瞬間はタイムマシンのように、あの日、あの時の光景や想いがブワッと部屋一面に広がっていくはずだから。

【文:池田スカオ和宏】

tag一覧 J-POP The Wisely Brothers

リリース情報

[7inch アナログ]The Letter

[7inch アナログ]The Letter

発売日: 2017年11月08日

価格: ¥ 1,500(本体)+税

レーベル: LASTRUM

収録曲

A面 The Letter
B面 アニエスベー EMCAT Remix

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