レビュー

打首獄門同好会 | 2018.03.20

 この3月11日の日曜日。日本武道館にて打首獄門同好会のライブが行われた。その日、同敷地では午前中より終日まで長打の列が途切れることはなかった。その列の目的は彼らの物販。中でもことさら、この武道館にて販売開始されたニューEP「春盤」を買い求める人たちの数が目立った。

 打首獄門同好会が昨春より公約していた夏秋冬春盤が、この度の「春盤」をもって無事、完遂発売された。
そもそも、この四季盤。常套ならば春夏秋冬の順でのリリースされるところ。しかし彼らは違った。「夏」「秋」「冬」そして、この「春」と変則的であった。しかし今作を聴いてその謎が解けた。そう、この盤は、今回の戦獄絵巻の最終章最終項である、この武道館ライブの成功と、それに至るまでの数々の自らに課した試練の成就なくしては語れない内容となっていたからだ。

 実際、武道館ライブ当日には、「この盤はライブが終るまで聴いてはならない」と注意喚起がされていたが、それが非常に分かる今作。当日参戦したことを前提に語って申し訳ないが、あの日と共に同盤を紐解こう。

 トップを飾る「はじまりのうた」は、武道館当日の宴の開始を告げたナンバー。「RSRFでの10獄食堂の出店」「47都道府県 ライブ全国制覇」「夏秋冬春 四季連続リリース計画」「北海道~九州全地域 フェス全国制覇」それらの成功(一部未達成のため代替え案で達成)を、ボーカル&ギターの大澤敦史が叙情的にしみじみとバラード風に歌っている同曲。終始ミディアムで貫き、後半にはダイナミズムたっぷりに光景が広がっていく。

 続く「47」はトリッキーでテンポチェンジも目まぐるしい、ラウド~ハードロックを様々なタイプをリレーション的に繋いだナンバー。これらは上述の全都道府県制覇にちなみ、全県を北から南まで各ブロックも交え歌われている。相変わらずのキャッチ―なメロディと覚えるのはなかなか至難の技だが弧気味イイフレーズが終始放たれている同曲。ベースのjunkoと、ドラムの河本あす香の歌声も加わり、ポップ性が織り交ぜられている。この曲も武道館で披露された。

 そして、彼らが標榜している「生活密着ラウドロック」を結成出自時点より貫き通していることを誇示しているかの如く響く、バンド結成後、初めて作った楽曲「Breakfast」のリメイクもM-3.に収録。この曲も武道館で終盤に現われた。ダイナミズムとバウンス性、長めのギターをソロやベースのドライブ感も楽曲を彩り、そこに乗せられた、朝ご飯の大事さや重要性が我々の耳を強襲する。

 M-4.「おわりのうた」も大団円とばかり武道館公演のラストに場内に響き渡ったインストナンバー。6/8のリズムのロッカバラードから始まり、2本のギターによるツインリード的なギターユニゾンもかっこいい。最後は5拍子で、こちらも哀愁性を醸し出しているのも興味深い。後半はM-1.の「はじまりのうた」の歌メロディが織り込まれているところに、起承転結起と、また次の目標へと走り出している彼らを彷彿とさせる。

 ラストには、「失われし平和な春の日よ」のライブテイクを収録。こちらではライブに於けるステージ、フロアを交えての一体感と疾走感。花粉のツラいこの時期、うんうん頷きながら聴きつつも、間もなく終わるであろう花粉明けに待ちわび、想いを馳せさせてくれる。

 今回も日常のあるあるが、ありえない高度なテクニックと構成、アンサンブルや発想、歌内容にて詰め込まれている同盤。今回の日本武道館とそれに至るまでの公約は、より彼らに身近さを感じさせてくれるに至った。この盤を聴くと、彼らが結成からこの13年間、常に「自分たちの日常に寄り沿ってくれるバンド」=「生活密着ラウドロック・バンド」であったことを、改めて誇らしげに誇示してるようにも私には響いた。

【文:池田スカオ和宏】

リリース情報

春盤

春盤

発売日: 2018年03月11日

価格: ¥ 1,111(本体)+税

レーベル: LD&K

収録曲

1.はじまりのうた
2.47
3.Breakfast
4.おわりのうた
5.失われし平和な春の日よ(LIVE)

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