レビュー

井上苑子 | 2018.06.06

 アコギからエレキへ。可愛いからカッコいいへ。ポップ版・井上苑子からロック版・井上苑子へーー。昨年12月に二十歳の誕生日を迎え、今年の春に開催した東名阪ツアーに『Spring Rock!! Tour 2018~エレキで駆け抜けるで!!~』というタイトルをつけていた彼女が“エモーショナル”をテーマに、“ロック”を基軸とした全6曲入りのミニアルバム『Mine.』をリリースした。

 メジャーデビュー以来、初となるミニアルバムだが、全曲、バンドサウンドによりロックナンバーになっているわけではない。もともと彼女は小学校6年生の時にアコギの弾き語りによる路上ライブから活動をはじめ、中学3年生でリリースした初の全国流通盤「ソライロブルー」のサウンドプロデュースを手がけていたのは、BiSHで同じみの松隈ケンタであり、その後もメタルやメロコア、ラウドロックやエモなどのハードで硬質なサウンドでライブハウスを沸かせていた。その後、より等身大の自分を表現すべく、音楽性を拡大。SUPER BEAVERの柳沢亮太との出会いもあって、共感度の高い歌詞とポップでカラフルな世界観を獲得し、メジャーデビューの際には、アコギをかき鳴らしながら女性の立場で女性の気持ちを歌う、明るくて元気でキャッチーでポップな井上苑子のパブリックイメージが出来上がっていた。ポップもロックも、アコギもエレキも、可愛いもかっこいいも、彼女が本質的に持っていたものではあるが、本作はタイトルに「Mine.」とついているように、私の中のemo=エモーショナルとはどんなものか? に向き合った1枚となっているのだ。

 井上苑子のemoをもっとも象徴した曲は1曲目「リメンバー」だろう。サビはキャッチーで疾走感があり、サウンドスケープが美しくも切ない、夏を思わせるピアノロックとなっている。インディーズ時代のロック感とも違う、メジャーデビュー後に獲得したポップを通過したエモいポップロック。歌詞は未練を残したまま別れてしまった元カレとの再会が描かれ、水曜日のカンパネラのMVを手がけている映像ディレクター、藤代雄一朗が監督したMV では、モデルや役者ではなく、井上本人が“キミ”への思いが残ったままのヒロインを熱演し、サウンド面だけでなく、映像面でも新機軸を見せてくれている。

 YUKIやflumpoolで知られる百田留衣との初タッグによる応援ソング「踏み出す一歩が僕になる」は、初めて“僕”という一人称を使ったポップロックとなっており、同じく百田による失恋ソング「ワンシーン」はストリングスをフィーチャーしたダンスロックだが、泣きのメロディにエモさを感じる。井上が大好きな友達への思いを込めた「My Dear One」と大人の恋を描いた「TODAY」は共にディスコチューン。チョコが溶けていく様を恋の終わりと重ねた「Chocolate」はバラードだが、全6曲を通して聴くと、井上苑子のエモとは、音楽のジャンルではなく、ライブで盛り上がるかどうか、ライブでグルーブを感じてもらえるかどうかが判断基準にあるのがわかる。エモさをライブで共有したいという彼女のライブへの思いが溢れた作品となっている。

【文:永堀アツオ】

リリース情報

Mine.

Mine.

発売日: 2018年06月06日

価格: ¥ 1,667(本体)+税

レーベル: ユニバーサルミュージック

収録曲

01.リメンバー
02.My Dear One
03.ワンシーン
04.Chocolate
05.TODAY
06.踏み出す一歩が僕になる

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