レビュー

back number | 2018.08.22

 back numberの最新シングル「大不正解」はロックバンドとしての彼らの魅力がたっぷり詰まった作品となった。タイトル曲「大不正解」は映画『銀魂2 掟は破るためにこそある』の主題歌として制作された曲で、歌詞も映画の内容とリンクしている。back numberには恋愛を歌った楽曲がたくさんあるが、この曲には愛や恋は出てこない。ここで描かれているのは激しさであり、熱さであり、冒険であり、友情だ。おそらく彼らにとって、初の友情ソングということになるのではないだろうか。ただし、ありがちな友達関係が歌われているのではない。感動的な美談は登場しない。歌詞に“噛みつき合い”“剥ぎ取り合って”というフレーズがあることからもわかるように、生身の人間同士が本音でぶつかり合うゴツゴツとした関係が描かれている。清水 依与吏(Vo&Gu)のリアルな表現力はこうしたテーマでも健在だ。友情を美化するのではなくて、生々しくて人間くさいものとしてとらえ、欠点や弱点を直視していく姿勢が根底にあり、馴れ合いや予定調和を排除している。だからこそ、“好きに踊ろうぜ”というフレーズが痛快に響く。

 演奏も歌の内容と連動して、ダイナミックでワイルドだ。スリリングなギターリフ、印象的なメロディ、躍動感あふれるグルーヴを備えた骨太な演奏が展開されている。清水 依与吏、小島 和也(Ba&Cho)、栗原 寿(Dr)という3人の演奏する様子が目に見えてきそうだ。シンセやデジタルビートも導入されているが、バンドサウンドを際立たせるスパイスの役割を果たしている。編曲はback numberと蔦谷好位置。ロックバンドとしての彼らの魅力を生かしたアレンジがいい。

 2曲目の「強化書」も「大不正解」同様に恋愛ソングではない。ヒーローになることを夢見ながら、大人になった男の理想と現実とのギャップが描かれている。1曲目の「大不正解」をアンチ友情物語とするならば、「強化書」はアンチ・ヒーロー物語と言えるかもしれない。自分は特別じゃない。ヒーローじゃない。それでもいつかヒーローになる日を夢見ている。そんな等身大の主人公の姿が表情豊かな歌と演奏によって、鮮やかに浮かび上がっていく。

 3曲目の「ロンリネス」も恋愛ソングではない。ここで描かれている孤独は失恋によるものではなくて、もっと人間の根源的なものだろう。神様へのインタビューという設定での歌詞もヒネリが効いていて、シニカルでシャープ。こうした鋭い着眼点も彼らならではだろう。ヒリヒリした陰影のあるバントサウンドが魅力的だ。ギター、ベース、ドラムそれぞれ存在感があって、コーラスもいい味を出していて、バンドの最新の息吹きも伝わってくる。

 このシングル、3曲とも恋愛ソングがないという点もおもしろい。コーヒーに例えるならば、ミルクも砂糖もなしのブラック。甘さやせつなさは控え目だが、ほろ苦さやコクや深みがあって、豊潤なバンドサウンドが詰まっている。タイアップをきっかけとして、自分たちの新境地を切り拓き、オリジナリティーあふれる作品を作っているところも素晴らしい。ドームツアーをやるところまで大きな存在となった彼らだが、そのポジションに安住することなく、今もなお進化し続けている。

【文:長谷川 誠】

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リリース情報

大不正解

大不正解

発売日: 2018年08月22日

価格: ¥ 1,000(本体)+税

レーベル: ユニバーサルシグマ

収録曲

1.大不正解
2.強化書
3.ロンリネス
4.大不正解(instrumental)
5.強化書(instrumental)
6.ロンリネス(instrumental)

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