レビュー

くるり | 2018.09.04

 2018年02月のシングル「その線は水平線」、そのツアー『線』で魅せた今作の断片たち、そして今作…。今年に入り始まった、くるりの描く「線」、そして「自由」が、ここにきて一つの帰着を魅せた。

 くるりから12 枚目のオリジナルアルバム『ソングライン』が届けられた。「歌による紡ぎ」とも意訳できそうな今作は、ここ数年で発表してきた楽曲たちも含め、様々なタイプの歌がつながり、紐づけ合い、相互し合って、一つの大きな「バイタリティ」へと結びついたかのような1枚。しかもその各曲で描いた線を用い、聴き手毎が様々なタイプの絵を描き、思い浮かべ、想いを馳せさせるのも特徴的だ。

 そんな今作はこれまで以上に気持ちが進んでいく曲ばかり。けっして直接は歌われてはいないが、なんだか各曲、聴き終えた後に、重い腰を上げ、諦めかけていた次へと進みたくさせる歌たちが揃っている。

 アーシーで大陸感溢れる乾いたサウンドの上、限界、目標、夢、希望といった類を聴く者に目指したくさせる、実に彼ららしい鼓舞ソング「その線は水平線」を筆頭に、シャッフル気味のリズムとジャグバンド然とした牧歌的な雰囲気の中、退廃から繁栄への大きな物語を夢想させる「landslide」。岸田の歌い方も優しく柔らかく、明日へ向かって歩くためのマーチのように優雅にブレイブ感を伴い響く「How Can I Do?」。そして「1曲サージェントペパー~」とも称せる、ノスタルジックさと最新技術を同居させた、♪所詮 君は 独りぼっちじゃないでしょう 生きて 死ねば それで終わりじゃないでしょ♪のフレーズも印象的な、サイケもボレロもビートルズも現れる「ソングライン」。そして前ツアーでの披露時には、場内も圧倒&高揚しっぱなし。メタル畑のギタリストとシンフォニックプログレやポストロックが好きなウワモノ弾きたちが、「確かELPってこんなんだったっけ?」とうろ覚えでプレイしたかのようなインスト「Tokyo OP」。むせび泣くサックスやオルガンのノスタルジックさに乗せて、自分たちまで届いてくる風が、実は様々な場所を駆け抜け、吹き抜けた結果、ここにたどり着いていることに想いを馳せさせる「風は野を越え」、アコースティックギターを基調にハープ的な音色、後にはツインのユニゾンへと移る力強いギターソロが春の訪れへと気持ちを引き戻させる「春を待つ」。また、既発の「だいじなこと」「忘れないように」「特別な日」は、初出よりボーカルが前面に出ており、より歌のデリケートさや手触りが分かるバージョンとして収録されている。
後半にも、ラストスパートでの楽曲の加速が聴く者のボルテージを上げにかかる「どれぐらいの」。色々な物語や光景や情景という長い旅を経て、再びスタート地点に帰着した感のある「News」。そして、もう一度、頭の「その線は水平線」に戻って聴くと、また新たなサンライズ感が得られたりする。

 事象や事実を受け入れつつ、どう自分なりに昇華し、それを糧として次に進んでいくのか?そんなことを作品全体から問われている感もある今作。テンポやサウンド、マイペース感を漂わせながらも、しっかりとどの曲も前向きで上向き、バイタリティを与えてくれ、聴き終えた後には不思議と鼓舞され元気になっている自分が居たりする。そう、このくるりの用意した、いくつも線=ラインは、あなたの組み合わせ方しだいで、自分でも見たことのない絵までもが描けそうだ。とは言え、まぎれもなくそれらはあなたが描いたもの。そんな各人が違った線を用い描き出す、自分だけの絵。きっとその展覧会は千差万別、さまざまな線と色、模様や形、姿が描かれていることだろう。是非一度、それらをズラリと並べて観てみたいものだ。そう、この『ソングライン』を流しながら…。

【文:池田スカオ和宏】

tag一覧 J-POP アルバム 男性ボーカル

リリース情報

ソングライン

ソングライン

発売日: 2018年09月19日

価格: ¥ 2,900(本体)+税

レーベル: ビクターエンタテインメント

収録曲

1. その線は水平線
2. landslide
3. How Can I Do?(Album mix)
4. ソングライン
5. Tokyo OP
6. 風は野を越え
7. 春を待つ
8. だいじなこと(Album mix)
9. 忘れないように(Album mix)
10. 特別な日(Album mix)
11. どれくらいの
12. News

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