レビュー

ハルカミライ | 2018.10.19

 東京都八王子市を拠点とした活動を重ねているハルカミライについて考えると、まず思い浮かぶのは「素朴」という言葉だ。エネルギッシュなロックサウンドを奏でる彼らだが、とても素直で懐かしく感じられる何かを濃厚に醸し出している。日々の生活、人間模様、心と心の交わし合いの中にある煌めき、戦慄き、温かさ、切なさなどを、全力で掻き鳴らす音に精一杯に刻み込もうとしているのが、ハルカミライというバンドなのだと思う。

 これはハルカミライと同郷の筆者が抱く勝手なイメージなのかもしれないが、彼らの音楽は、極めて八王子っぽくもある。東京の西の外れに位置し、駅前周辺はそこそこ栄えているものの何処か垢抜けない雰囲気のお店が点在し、裏通りに少し入ると子供は足を踏み入れてはいけなそうなエリアもあり、中心街から外れれば住宅がどんどんまばらとなっていき、のどかな野山や田畑ばかりが広がるあの辺りの風景、空気感、香りに近しいものを、彼らの曲を聴く度に私は強く感じる。

「東京出身です」と躊躇なく言えるほど都会的な育ちを全くしていないのに、「都会になんか負けるもんか!」という対抗意識を燃え盛らせる地方出身者には「お前は東京人だろ」と言われて仲間に入れてもらえない……という宙ぶらりんの感覚を、八王子を含めた西東京で育った人間は、度々味わうことになる。そういう体験を重ねている者は時流に乗ることも敢えて反発することもせずに、「好きなことを好きようにやらせてもらいます」という境地に達することが多い。00年代初頭辺りの日本語パンクの他、80年代後半辺りのパンクの香りもあるハルカミライの音楽は、そのような背景からも生まれているのではないかと、筆者は想像している。

 上記の要素は、最新作となる2ndシングル『世界を終わらせて』を聴いても強く感じる。タイトル曲「世界を終わらせて」は、端的に言うならばラブソングだが、大切に思っている「君」への愛の描き方が、かなり独創的だ。「君」と一緒に過ごすことができず、来世やそのまた先の生涯の中でも巡り合えないならば、世界が終わることを心から願っている――という感情をストレートに吐露する言葉の数々が、不思議と温かい感動を呼び起こしてくれる。そして、カップリングの曲「QUATTRO YOUTH」が描いているのは初期衝動。電車の中で居眠りをしてもたれかかってきたティーンエイジャーのヘッドフォンから漏れ出た音楽にハッとする描写が、とても印象的だ。もしかしたら忘れかけていたのかもしれない根源的なときめきを取り戻す姿は、あらゆる境遇の人に対して大切なメッセージを投げかけるのではないだろうか。

 サウンド面に関しては、メンバーたちが一丸となったユニゾンのコーラスを随所で効果的に発揮している点が、とても魅力的だ。ハーモニーを響かせるコーラスと較べるとユニゾンは決して華やかではないが、潔い力強さを曲に添えることができる。パンクロックの歴史を遡るならば、ロンドンパンクを代表するバンドの1つであるザ・クラッシュが、ユニゾンの使い方が上手かったが、その後のバンドたちにも脈々と受け継がれていったものが、ハルカミライの持ち味にもなっているのを感じる。そんな点にも注目しつつ今作を聴くのも、オススメしたいところだ。

【文:田中大】

リリース情報

世界を終わらせて

世界を終わらせて

発売日: 2018年10月03日

価格: ¥ 500(本体)+税

レーベル: THE NINTH APOLLO

収録曲

1. 世界を終わらせて
2. QUATTRO YOUTH

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