レビュー

a flood of circle | 2018.11.07

 新ギタリストにアオキテツを迎えてからのa flood of circleは好調だ。まず何よりもライブが良い。佐々木亮介(Vo/Gt)、渡邊一丘(Dr)、HISAYO(Ba)という、旧来のメンバーよりも年下で、もともとa flood of circleの音楽を好んで聴いていたというアオキ。生来の“やんちゃ”で物怖じしないプレイスタイルがガッチリとハマり、いまやa flood of circleに欠かせない弟キャラとして、バンドのかっこよさを底上げする存在になっている。

 セールスに目を向けても、今年2月にリリースした二度目のセルフタイトルアルバム『a flood of circle』は、バンド結成12年目にして、オリコンウィークリーチャートで最高16位を記録。いまのa flood of circleが、かつてないほど良い状態なのは、数字で見ても間違いないだろう。そして、これまでギタリストの加入脱退を繰り返した歴史に終止符を打ち、完全体になったa flood of circleが、いま鳴らすことのできるロックのかたちを体現したのが、11月7日にリリースされる最新シングル『13分間の悪夢』だ。

 “全曲リード曲”を銘打つ、トリプルAサイド・シングルとなった今作。a flood of circleには珍しい、清涼感のある開放的なナンバー「夏の砂漠」にはじまり、楽器隊の演奏が複雑に絡み合う妖しげなロックンロール「美しい悪夢」、クイーンの「We Will Rock You」で有名な“ドンドンパン”のリズムが心地好くループするミディアムテンポ「DEAR MY ROCKSTEADY」まで、トータル13分に三者三様のフラッドが表現されている。この1枚を絶妙のバランス感覚で成立させたのが、前作アルバム『a flood of circle』に収録の「ミッドナイト・クローラー」で、初めてa flood of circleのプロデュースを手がけたUNISON SQUARE GARDEN・田淵智也(Ba)だ。佐々木と田淵とは十年来の付き合いがあり、田淵は、自分でチケットを買って、a flood of circleのライブを見に行くほど、熱心なファンでもある。そんな田淵がトータルプロデュースを手がけたことで、今作には、a flood of circle初期の青臭い衝動や、アルバム曲で見せる穏やかなムードも盛り込まれ、紛れもなく、これまでのa flood of circleにも通じるのだけれど、絶対に新しい、そんな画期的な新曲が誕生した。

 古いロックンロールやブルースだけでなく、a flood of circleは同時代の海外のポップミュージックも含めて、あらゆる音楽を貪欲に吸収するバンドだ。だが、ある意味、今作では、そういう外側からの影響よりも、内側にあるもの、バンドが本来的に持っているものへの気づきに重点が置かれているようにも思う。期せずして、昔からa flood of circleを知るプロデューサー田淵の存在がそれを促した面が大きいだろうし、同時に、「4人組のロックバンド」として、ようやく盤石の体制が整ったいまだから、冷静に顧みることもできたのだと思う。
偶然も必然も味方につけながら、ただ夢中になって自分たちが最も輝けるロックのかたちを追求している、いまのa flood of circle。そんな楽しげなムードは、4人がギュッと体を寄せ合い、笑顔を覗かせる最新のアーティスト写真からも漂ってくる。

【文:秦理絵】

tag一覧 シングル a flood of circle 男性ボーカル

リリース情報

13分間の悪夢

13分間の悪夢

発売日: 2018年11月07日

価格: ¥ 2,000(本体)+税

レーベル: Imperial Records

収録曲

01. 夏の砂漠
02. 美しい悪夢
03. DEAR MY ROCKSTEADY
-Live Bonus Track-
04. ブラックバード
05. ロックンロールバンド
06. アンドロメダ
07. YU-REI Song
08. Quiz Show
09. Sweet Home Battle Field
10. Diamond Rocks
11. 世界は君のもの

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