レビュー

King Gnu | 2019.01.23

 言い切ろう、2019年を代表する作品の誕生だ。驚異の4ピース音楽集団、King Gnu(キング・ヌー)が生み出した大傑作2ndアルバム『Sympa』が解き放つ高揚感の凄み。2017年、筆者はインディペンデントでのリリースとなった1stアルバム『Tokyo Rendez-Vous』リリースの際、業界向けに寄稿したテキストで“クールな都市型サウンドを奏でるバンドの活躍によってシーンが塗り替えられつつある日本のポップ・シーン。そんな中、King Gnuは時代性をも超えて響くであろう。中毒性高いスキルフルな演奏力によって、混沌という知性にポップという名の秩序を与えていくはずだ。”と予言した。バンドは、カオティックでありヴァイオレンスな香りを漂わせながらも、知性を感じさせる極上のポップセンスによって“ジョーカー”のように日本の音楽シーンをひっくり返そうとしている。



 まるで映画のように封を切る、アルバム『Sympa』冒頭のイントロダクション。オープニングを飾る“眠りの国”と意味されたこの国の音楽シーンへ衝撃を与える「Slumberland」は、前身バンドSrv.Vinci(サーバ・ヴィンチ)時代に原型が「PPL」として誕生したバンドアンセムだ。構成もいわゆるJ-POPからは遠く離れ、ライブでは拡声器片手のラップ調であり、先日、TBS『CDTV』など音楽番組出演時に、コメントで“(今の日本の現状における)テレビ向きな曲ではない”として披露していたのだから痛快だ。



 King Gnuのメンバー、ギターとヴォーカル、キーボード、映像を手がける鬼才 常田大希と、ヴォーカルとキーボードを担当する井口理は東京芸術大学出身。そして、ベースの新井和輝、ドラムの勢喜遊はセッション、ジャズシーンでも活躍してきた。4人ともテクニカルなスキルと経験を持つ逸材だ。そもそも初期バンド時代は、時代感を超越したスタンリー・キューブリックの世界観をラウドかつ繊細にサウンド化したような雰囲気を持っていた。しかし、2016年初取材時に常田に近未来への目標を聞いた際「まずはロックフェスですね。数年前に観たフジロックでのレディオヘッドが凄かったんですよ。まずはそこへ行きたいなと思いました。」と語っていた。ブランキー・ジェット・シティーやミッシェル・ガン・エレファントの名前がフェイバリットにあげられ、理由が日本人アーティストによるフジロック『グリーンステージ』のトリをやりたいというのだから明快だ。2ndアルバム『Sympa』では、そんな理想を叶える楽曲が収録されていることに注目したい。バンドが加速するきっかけとなったキラー・チューン「Flash!!!」、そして疾走感溢れるギター・ロックチューン「Sorrows」は、邦ロック・ファンをも取り込む“ロックスター像”をアップデートするターニングポイントとなるポップナンバーだ。もともと20代であり年齢が若いメンバーではあるが、より若返りを感じられる、King Gnuにおける新しい側面を切り開いたポップセンスあふれる入り口となる楽曲といえるだろう。



 さらにバンドは、2ndアルバム『Sympa』後半において、より奥深くシアトリカルな世界へと没入していく。「Hitman」、「Prayer X」で奏でられる退廃感を醸し出しつつも圧倒的に美しきメロディー。そして、ピアノによる物悲しいフレーズからはじまる「The hole」の凄さだ。SNS、ライブ時におけるトリックスターとしての一面を封印したフロントマン井口による、繊細な歌声が活きるストリングスが重なって行く様が流麗な大名曲の誕生だ。



 印象的なのは、バンド名の由来でもある常田が愛する動物=ヌー(※嗅覚が鋭いといわれ、草食性で食料となる草原を求めて集団で大移動することで知られる)の存在。そう、King Gnu=ヌーの群れは、仲間を巻き込んで徐々にデカくなる。2019年、King Gnuの大いなる旅が加速しつつあるのだ。

【文:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)】

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