レビュー

back number | 2019.03.25

 目には見えなくて、形もないはずなのに、目に見えて自分の内の何かを激しく揺り動かし、形を主張してくるものと真正面から向き合っている人間のドキュメンタリーが、back numberの音楽だ。我々は他者との会話はもちろん、自分自身に対する言い訳の独り言に於いてすらも、「愛」とか「心」とか「理想」とか「幸福」とか、わかったような言葉を用いるわけだが、それらが具体的にはどういうものなのか、実は全然わかっていない。それなのに「そいつは存在する!」と強く思い込まざるを得ないこれらの正体とは、一体何なのか? そういうモヤモヤを抱えながら日々を重ねている我々と、ごく自然な形で共に歩んでくれるのがback numberであり、3年3か月ぶりとなるオリジナルアルバム『MAGIC』にもそういう姿が鮮やかに刻まれている。

 先ほど、存在すると思い込まざるを得ないものついて触れたが、それは例えば「HAPPY BIRTHDAY」の歌詞の中にある《愛が何かは知らないけれど 好きと言う名前の痛みになら詳しいかも》というフレーズにも描かれていることだ。これが《愛が何かをよく知っていて 好きと言う名前の喜びにも詳しいよ》だったら、どれだけハッピーでいられるかわからないが、現実の世界では歓迎できないものの存在感ばかりが圧倒的に大きいらしい。そんな意地の悪いこの世を創り出した張本人とされている「神様」を呼び出して、理不尽と不条理に満ち溢れさせた理由を徹底的に問いただすのが、今作の7曲目に収録されていて、シングル『大不正解』のカップリングでもあった「ロンリネス」。この曲の根底にある疑問と苛立ちは長年に亘って人類が抱え続けてきたものであるはずだが、そういう普遍的なテーマをウィットにも富んだ切り口で描いている。本質を鋭く突きつつも軽やかでもあるこういう作風は、back numberならではの魅力ひとつとして認識されるべきものだと思う。

 そして、迷い、痛み、苦しみ、悲しみに包まれて震える心に優しくシンクロしてくれるメロディが、このバンドの最大の魅力であるということは、今更強調するまでもないだろう。終わった恋が当事者に残すものを奥行き深く浮き彫りにしている「雨と僕の話」。濃霧の中を進むような人生で繰り返す自問自答が、そのままこの曲のリズムと化しているように感じられる「monaural fantasy」。いつまで経っても上手く付き合うのが容易ではない自分自身の感情について描いている「あかるいよるに」……などなど、秀逸な曲がたくさん並んでいるのが、最新アルバム『MAGIC』だ。既発のシングル曲「瞬き」「大不正解」「オールドファッション」「HAPPY BIRTHDAY」なども、こうしてアルバムで向き合うと、改めて各々の魅力をきらめかせている。今や日本を代表するロックバンドのひとつとなっているback numberは、今作によって人気と評価を一層揺るがないものにするだろう。

【文:田中 大】

リリース情報

MAGIC

MAGIC

発売日: 2019年03月27日

価格: ¥ 3,000(本体)+税

レーベル: ユニバーサルシグマ

収録曲

1.最深部
2.サマーワンダーランド
3.瞬き
4.あかるいよるに
5.ARTIST
6.オールドファッション
7.ロンリネス
8.雨と僕の話
9.エキシビジョンデスマッチ
10.monaural fantasy
11.HAPPY BIRTHDAY
12.大不正解

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