レビュー

Official髭男dism | 2019.05.14

 劇場版『コンフィデンスマンJP』の主題歌として書き下ろされた「Pretender」。『コンフィデンスマンJP』は、詐欺師たちの物語であり、詐欺=犯罪であるのは言うまでもない。しかし、詐欺の核にある“偽る”という行為は、善悪という次元を超えた人間の普遍的な感情の揺らぎではないだろうか。そういう部分を鮮やかに捉えながらラブソングへと昇華しているところが、「Pretender」の大きな魅力だ。

 永遠だと思っていた恋人同士の関係を終わらせるのは辛いが“相手に嫌われた”、または“相手のことが嫌いになった”という理由によるものならば、必然として受け入れざるを得ない。しかし、“自分は相手にふさわしい人間ではない”と自覚したことによる恋の終幕の予感は、“自分は相手にとってふさわしい人間なのだ”と無理やりにでも思い込む努力=自身の心への詐欺行為、“自分は相手の運命の人であると偽ろうとする”というプリテンダー=詐称者としての状態に陥るのが自然な流れだろう。そんな状態を重ねながら募らせる苦しみ、悲しみを精緻に描写した果てに、《君は綺麗だ》《とても綺麗だ》という、高い純度の想いをこめたシンプルな言葉を放つところに「Pretender」の圧倒的な美しさは根差している。

 そして、この曲のサウンドも、とても胸に沁みる。インディーズ時代の彼らにインタビューをした際、多彩な音楽の要素を柔軟に取り入れているOfficial 髭男dismを言い表す言葉として“かゆいところに満遍なく手が届く孫の手ミュージック”というような表現が出てきたことがある。一見するとユーモラスにも映るが、これは彼らの本質をかなり突いていると思う。グルーヴィーでソウルフルなブラックミュージック的エッセンスを濃厚に含みつつ、往年の歌謡曲の遺伝子を受け継いだ瑞々しいメロディ、ロック少年として過ごした日々の息吹なども醸し出してしまうところが、Official 髭男dismの独特さだ。このような持ち味は「Pretender」はもちろん、ハードロック的な骨太さとダンサブルなデジタルサウンドを絶妙に融合させた今作のカップリング曲「Amazing」でも堪能することができる。

 6月からスタートするZEPPツアーのチケットが即日完売となり、7月8日には初の日本武道館公演も行うOfficial 髭男dismの勢いはすさまじい。まさしく絶好調である現在の状況の土台にあるのは、“ソングライティングの鋭い切れ味” “卓越したサウンドアレンジ力” “圧倒的に豊かな表現力”というミュージシャンとしての正統派の煌めきであることを、今作を聴いた全てのリスナーが実感するに違いない。

【文:田中大】

tag一覧 J-POP シングル 男性ボーカル Official髭男dism

リリース情報

Pretender

Pretender

発売日: 2019年05月15日

価格: ¥ 1,000(本体)+税

レーベル: ポニーキャニオン

収録曲

01.Pretender
02.Amazing
03.Pretender (Acoustic ver.)

トップに戻る