レビュー

ヨルシカ | 2019.06.26

 アーティスト自身が顔出しをしない二人組バンド、ヨルシカの存在は謎に包まれている。しかし楽曲は、圧倒的な文学生や作品性を持って、動画共有サービスやストリーミングサービスを通じて拡散を続けている。ものすごいスピード感だ。そんな中、6月24日に新曲「心に穴が空いた」が配信リリースされた。楽曲そのものを楽しみたいならば先入観なくミュージックビデオを観ればいいと思う。それが、全てをさらけ出さないアーティストの意向だろう。しかし、ヨルシカのプロダクトへのこだわりを知って欲しく、ここまでの経緯を解説したい。



 ヨルシカが4月10日にリリースした1stフルアルバム『だから僕は音楽を辞めた』は2019年を代表する傑作だ。作品の世界観を大事にするヨルシカは ミュージックビデオを作品ごとにヴィジュアライズに展開。n-buna(G・Composer)が生み出すコンセプチュアルな物語性を、澄んだ歌声が魅力的なsuis(Vo)がストーリーテイリングしていく唯一無二のシアトリカルなスタイルだ。

 アルバム『だから僕は音楽を辞めた』は、音楽をやめる決断をした青年がスウェーデンの街を旅しながら、エルマという女性へ向けて書き留めた作品というコンセプトで 物語が進んでいく。ドラマティックなインストを含む全14曲は、 8月31から、4月10日へと時系列を逆に遡っていき、初回限定盤CDは作品とリンクする木箱仕様のBOXでリリースされ、写真や手紙が封入されるなど、物語の世界観に入り込んだかのような体験ができることが魅力だった。



 VRやAR、5G技術など様々な技術が世を賑わしている2019年だが、素晴らしい音楽と手紙と写真によって 没入感高い“本物”作品体験をプロデュースしたヨルシカに音楽表現の未来を感じたのだ。

 そんな作品の続編が、8月28日にリリースされる2ndアルバム『エルマ』として表現される。初回盤はエルマの書く日記帳仕様というのだから、前作『だから僕は音楽を辞めた』との関連性が気になるところだ。そんなヒントを紡ぐ新曲「心に穴が空いた」のミュージックビデオは、アルバムの舞台となるスウェーデン・ゴットランド島で撮影されたもの。胸に穴がぽっかり空いた少女の人形が何かを求めながら誰かの足跡をたどる様子が描かれている。

 ストーリーテリングされていく物語。“君の残した詩のせいだ”、“全部音楽のせい?”、“「君だけが僕の音楽」”という気になるフレーズの数々。行き場のない、気持ちの高ぶりを叫ぶかのように、ビートが加速するロックサウンド。ヨルシカは、心を突き刺す音楽が持つ可能性、心を動かす表現を追求している。

【文:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)】

リリース情報

Digital Single「心に穴が空いた」

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Digital Single「心に穴が空いた」

発売日: 2019年06月24日

価格: ¥ 250(本体)+税

レーベル: UNIVERSAL MUSIC LLC

収録曲

01.心に穴が空いた

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