レビュー

10-FEET | 2019.07.26

 渾身の8thアルバム『Fin』から、思い切って大きな一歩を踏み出したかのようなニューシングル「ハローフィクサー」。活動面や精神面をフォーカスされがちなバンドではあるが、今作は、音楽家としても(いい意味で)どん欲であるということを知らしめられるはずだ。

 初期から“ミクスチャーロック”と語られてきたとおり、ジャンルを越えた音楽性を取り入れてきた彼ら(主催フェス「京都大作戦」のラインナップにも、それは表れている)。そんななかでも、「ハローフィクサー」は、取り入れる音楽性の幅を広げ、それぞれの濃度を高めたような、実験性を感じる。しかも、イントロでは「いつの間にか、こんなジャジーな演奏や歌い方も、自分たちのものにできるようなバンドになったんだな!」、怒涛の同期の導入には「これだけバッキバキでも、3ピースという骨格は潰れていないな!」、アウトロでは「懐かしいほど切ないメロディだけれど、やっぱりシンガロングしたくなるな!」――と、濃い分だけ突き出た意外性を、しっかり10-FEETらしく昇華していることがわかる聴き心地になっているのだ。

 「ハローフィクサー」において取り入れられている音楽性は、ライブに軸足を置いている彼らにとって、これまで手を伸ばそうかどうしようか躊躇するものだったかもしれない。しかし、数々の試練を乗り越えて鍛え上げた自分たちの活動面や精神面をひとつのかたちにしたようなアルバム『Fin』を完成させ、さらにリリースツアーを回ったことで、今の自分たちは次のフェーズへと進めるし、進むべきであるという意思が湧いてきたのではないだろうか。その道のりは、ずっと彼らを見てきたキッズにとってもうなずけるものであり、だからこそ、実験的な楽曲でも、すっと受け入れられるというところもあると思う。驚かされはするが、とても美しく真っ当な、ロックバンドの物語が、楽曲そのものから感じられる。

 アッパーな曲調の中で、切々と日本語詞が響く2曲目「heart blue」、初期から貫いている、パンキッシュでユーモラスな姿勢をバキッと反映させた3曲目「123456789101112」も、今作を安心させる重しのようでいて、逆にガソリンとして働いているように聴こえてくる。すべてを連れて、新たな道を開拓していくのだ、と。

 様々な音楽を愛する彼らのことだ。まだまだ、その中には開かずの引き出しがあるはず。今こそ、心ゆくまで解き放つときだと思う。これからの展開も期待しながら、じっくり待ちたい。

【文:高橋美穂】

リリース情報

ハローフィクサー

ハローフィクサー

発売日: 2019年07月24日

価格: ¥ 1,000(本体)+税

レーベル: BADASS / EMI records

収録曲

01.ハローフィクサー
02.heart blue
03.123456789101112

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