レビュー

ヤバイTシャツ屋さん | 2019.07.26

 オセロの四隅はきっちりと押さえ、音楽の方程式を全部ひっくり返して、自分たちのカラーにして見事な勝利を収める。なんだか、ヤバイTシャツ屋さんの手腕はますます磨き抜かれ、誰にもマネできない定石を確立しているようだ。しかもそのパターンは作品を出すごとに増えているのだから、恐れ入る。

 ヤバTの約10ヵ月ぶりのリリースとなる5曲入り8thシングル「スペインのひみつ」がリリースされた。まずは今作のリード曲であり、「スプライト」CMタイアップ曲にもなっている「癒着☆NIGHT」。キャッチーな出だしから一転、ラッパー並みに言葉を詰め込んだ早口ヴォーカルでこやまたくや(Gt/Vo)、しばたありぼぼ(Ba/Vo)が畳み掛けるパートは実にスリリング。サビの《癒着むちゃくちゃにしたいねん/今夜は めちゃくちゃにしたりたいねん》の歌詞はつい口ずさみたくなる中毒性に溢れている。その意味では今やライブのアンセムソングと化した「ハッピーウェディング前ソング」に通じる語感の心地よさ。

 次は「NHKフレッシャーズキャンペーン2018」キャンペーンソングに起用された「案外わるないNHK」。しかし、この曲名でよく通ったなあと改めてNHKの懐の深さに感心する。だが、中身の歌詞は曲名以上に攻めまくっており、「のど自慢」番組に毒づき、さらに《お硬いおもんないつまんないイメージ/融通きかないまじめなイメージ/払拭したいみたいやで》と強烈すぎるパンチラインが飛び出す。とはいえ、韻を踏んだ歌詞とともにヤバTが歌えば極上のポップナンバーとなり、聴後感はとても爽やか。これぞヤバTマジックの真骨頂と言えるだろう。

 そして、「sweet memories」はHi-STANDARDやdustboxが頭をよぎる痛快なメロディックチューン。「かわいいあの子は 放課後に俺の上履きを食べる」という衝撃の歌詞も「スイスイスイスイスイスイスイスイ~♪」と連呼するフレーズで甘美にコーティング。この曲もライブでシンガロングが起きること間違いナシ。マキシマム ザ ホルモンの「恋のスウィート糞メリケン」(*インスパイアの元ネタは安室奈美恵の「SWEET 19 BLUES」)を彷彿させるところも、ホルモンっ子のこやまらしいアプローチでニヤリとした。

 もう1曲、「志摩スペイン村25thアニバーサリー夏のTVCMソング」になった「きっとパルケエスパーニャ」も白眉。ただし、これはオリジナルではなく、志摩スペイン村のテーマ曲。けれど、ヤバTらしくパンキッシュに仕上げ、スカのアレンジを加え、完全に自分たちの色に染め上げた好カバー。この曲は夏フェスにマッチしそうだなあ。ラストの「癒着☆NIGHT」(岡崎体育 remix)を含む全5曲、どれもヤバT印に貫かれた強力ナンバーばかりだ。

【文:荒金良介】

リリース情報

スペインのひみつ

スペインのひみつ

発売日: 2019年07月10日

価格: ¥ 1,300(本体)+税

レーベル: ユニバーサルミュージック

収録曲

1.癒着☆NIGHT
2.案外わるないNHK
3.sweet memories
4.きっとパルケエスパーニャ
5.癒着☆NIGHT(岡崎体育 remix)

トップに戻る