レビュー

Official髭男dism | 2019.07.31

“2019ABC夏の高校野球応援ソング/「熱闘甲子園」テーマソング”として書き下ろされた新曲「宿命」。力強いブラスで彩られたサウンドが、とても心地よい。歌詞で描かれているのは、タイトルにも表れている通り“宿命”だが、この言葉から、おそらく多くの人が思い浮かべるのであろう“運命”に似たニュアンスではない点に注目させられる。人生を動かす先天性の力を指す“運命”に対して、この曲の“宿命”は、何かに打ち込む中で見えてくる目標を背負う覚悟が表されているのを感じる。

 つまり、「宿命」での“宿命”とは後天的なものを指していて、“自分の意志と行動、仲間と合わせる力などによって未来は変えていくことができる”という確信が背景にある状態だが、これが必ずしも当人にとって明るい作用ばかりを及ぼさないというのは、何かに情熱を傾けた経験がある人ならば、容易に想像できるのではないだろうか。“自分次第で目標は達成できる”という信念は“目標を達成できていない自分は、実に取るに足らない人間だ……”という激しい自己批判、劣等感と密接に隣り合っている。敗退という明確な事実によって“甲子園に行く!”という目標に、あっさりとピリオドが打たれてしまう高校球児は、まさしくこういう厄介な苦しみの当事者だ。「宿命」は、そういう彼らの胸の内に湧き起こるのであろう感情を立体的に描いている。

 ヒゲダンの4人は、春の選抜高校野球の決勝を観戦したらしい。その時に受けた印象が、「宿命」に反映されているのは言うまでもない。しかし、完全に第三者の視点で描かれているわけでもないのだと思う。島根の学生によって結成されて、今や日本武道館で単独公演を行うようになったOfficial髭男dism。彼らは、“バンドって楽しい”“いい音楽を作りたい”という無邪気な衝動に突き動かされながら進み続けたのだろうが、思うようにいかなくて苦しんだり、自分たちは何をやりたいのかわからなくなったり、不甲斐なさを噛み締めて悶え苦しんだりしたことが、きっとたくさんあったはずだし、傍から見れば順調に見える現在でも、様々なことで悩んでいるに違いない。そんな姿も自然な形で滲ませている「宿命」の説得力は、とても大きい。“リスナーの人生に寄り添いたい”という音楽活動の根底にある姿勢を、“あなたの人生とタイアップ”というキャッチーな言葉で示してきたりもしたヒゲダンの理想が、見事に具現化されている曲だ。

【文:田中 大】






リリース情報

宿命

宿命

発売日: 2019年07月31日

価格: ¥ 700(本体)+税

レーベル: ポニーキャニオン

収録曲

M1.宿命
M2.宿命(instrumental)

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