レビュー

Official髭男dism | 2019.09.26

 Official髭男dismに魅了される人の輪が、どんどん広がり続けている。日頃から音楽をマニアックに聴いている耳の肥えたリスナーが、「只者ではないぞ!」となっている部分も当然あるだろうが、彼らの音楽を支持しているのは、そういう層だけでは全くないはずだ。「なぜなのかよくわからないけど、このバンドの曲、ものすごくいい! 他のJ-POPと何かが違う気がする!」と、本能的に感じ取って、夢中になっている人々が大半なのだと思うし、それがとても素晴らしい。

 では、後者の層がなんとなく感じ取っているヒゲダンの只者ではなさとは、一体何なのか?いろんな分析の仕方ができるだろうが、ひとつわかりやすいポイントを挙げるならば、それは「ブラックミュージック的な風味」だろう。ブラックミュージックを取り入れたJ-POP自体は特に珍しいものではないが、彼らの音楽に於けるこの要素は、風味の香り方が少なからず異質なように感じられる。「J-POPとブラックミュージックを融合させた」という印象ではなく、「たくさんの人がワクワクを体感して、身も心も解放できる音楽でありたい」という目的のためにグルーヴを徹底的に追求した結果、自ずとブラックミュージック的になっている――というようなニュアンスだ。極上のソウル、ファンクとして聴くことも当然できるが、何と言ってもポップスとして美しくて、心地よくて、楽しいという、このようなヒゲダンの音楽をカテゴライズする呼称は、「グッドミュージック」というくらいの肩の力を抜いたものがふさわしい。ついにリリースされるメジャー1stアルバム『Traveler』も、まさしくグッドミュージックの眩しい結晶だ。

 ヒゲダンの大躍進を後押しした「Stand By You」「Pretender」「宿命」「FIRE GROUND」といったお馴染みの曲は、改めてアルバムで聴いても胸に深く沁みる。そして、新曲も素敵な仕上がりの連続だ。ストリングスの壮大な響きが、この曲の核にある美メロを鮮やかに浮き彫りにしている「イエスタデイ」。3管のブラス、パーカッションが加わったバンドサウンドが爽やかに高鳴る「最後の恋煩い」。4人の歌声のハーモニーを存分に堪能できる「ビンテージ」。今作を締め括る2曲であり、彼らの充実した活動と、さらに前進しようとしている姿を映し出す「ラストソング」と「Travelers」。楢崎誠(B・Sax)が作詞作曲、メンバー各々が美声を響かせている「旅は道連れ」。小笹大輔(G)が作詞作曲を手掛けていて、ヒゲダンとしての新境地を切り拓いている「Rowan」……などなど、印象的な曲は、挙げていくとキリがない。サウンドアレンジも、ますます多彩になっている。先述の通り、ストリングス、ホーン、パーカッションを取り入れた曲がある他、ヒゲダンが積極的に模索してきた打ち込みサウンドも、幅広いアプローチが発揮されるようになった。

 そして、もうひとつ付け加えて触れておきたいのは、藤原聡(Vo・Pf)が、作詞の面でも一層の切れ味を示すようになっているという点だ。シンプルな言葉にさり気ないヒネりを加えて、「こういう感覚、すごくわかる!」とリスナーを唸らせることに関して、彼は圧倒的に長けている。この実例に関しては、挙げていくと本当にキリがないので最小限にとどめておくが――例えば、「最後の恋煩い」は、タイトルからして程よくユニークであり、この曲に込められている愛情表現の温かみを、実に的確に言い表している。今回のアルバムを聴いたら、みなさんもお気に入りのフレーズをたくさん見つけられると思う。

 とにかく、間違いなく言えるのは、『Traveler』が、傑作だということだ。とても良い景色に囲まれながら音と言葉を紡ぎ、たくさんの素敵な出会いを重ねているOfficial髭男dismの旅が、今後も実り多い日々の連続となることをハッキリと予感させてくれる。

【文:田中 大】





Official髭男dism - イエスタデイ[Official Video]

リリース情報

Traveler

Traveler

発売日: 2019年10月09日

価格: ¥ 2,800(本体)+税

レーベル: ポニーキャニオン

収録曲

01.イエスタデイ
02.宿命
03.Amazing
04.Rowan
05.バッドフォーミー
06.最後の恋煩い
07.ビンテージ
08.Stand By You
09.FIRE GROUND
10.旅は道連れ
11.052519
12.Pretender
13.ラストソング
14.Travelers

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