東京事変の5thアルバム『大発見』の実像に迫る!

東京事変 | 2011.06.29

 東京事変の5thアルバム『大発見』が完成した。比肩なき音楽の豊かさを追求するバンドとして、さらなる創造性の高みを更新すると同時に、色褪せることのないスタンダードを築いた傑作の誕生である。メンバー全員インタビューで制作時のエピソードをひも解きながら、『大発見』の実像に迫った。


EMTG:早い段階でタイトルを『大発見』と定めて “スタンダード”、“プリミティブ”、“バック・トゥ・ルーツ”といったキーワードのもとに各自楽曲を持ち寄ったらしいですね。収録への選考基準はどのようなものでしたか。
椎名林檎(Vo&Gt):厳しいものでしたね。“発見”に“大”までついてしまったので、まず選考にかける以前に、自分自身がハッとする、つまりは“発見”する曲でなくてはならない。以前に書いたストックからの再プレゼンだとしたら、よほどの前提か自信がなければならない。自分のことなのにビックリしてからじゃないと出せないわけですからね(笑)。
刄田綴色(Dr):全部で30曲くらい出そろったよね。
亀田誠治(Ba):そう。提出して2、3日経ってから“ああ、やっぱり『大発見』じゃなくて『中発見』だった!”と、トボトボ悩んで帰ってみたり(笑)。かなり試行錯誤がありましたね。
椎名:そこで亀田さんが引っ込めようとしていた曲を、“ちょっと待って”と伊澤が引き取ってBメロと印象的なリフを書いたのが『21世紀宇宙の子』でした。伊澤は伊澤で持ち込んでくれる楽曲の数も多いけど、引っ込めたがる数も多くて(笑)。“これ、何か、やっぱりないわ”とか言ってね。
浮雲(Gt):下手するとレコーディングの段階でも言っていた(笑)。
伊澤一葉(Key):うん(苦笑)。そうすると椎名さんが“じゃあこれ私が引き取る”って言って持って帰ってくれて。
EMTG:「21世紀宇宙の子」は、マスタリング直前に急遽収録が決まった楽曲でしたね。
椎名:本当は震災後に、「夜明けのうた」(※1964年に発表された岸洋子の楽曲。東京事変は震災後にこの楽曲をカバーし、その演奏風景を収めた映像をEMI Music Japanの公式You Tubeチャンネル及びEMI TVで公開した)に値する曲として歌詞を書き上げたかったんですが、なかなか仕上げることができなかった曲でした。このアルバム制作も佳境に入り、すべての曲を順番に並べて通して聴いてみたら、足りないピースがこの楽曲だと思えたので、追加することを決めました。
EMTG:「天国へようこそ」と「ドーパミント!」は、『大発見』では新録バージョンが収録されています。この2曲はそれぞれTVドラマの主題歌とCMタイアップ曲となり、昨年配信でリリースされました。
椎名:制作の動機自体はドラマやCMのお話をいただいたことで発生したものでした。今回のアルバム収録にあたっては、よりアルバム寄りのアレンジにしたいと考えました。特に「ドーパミント!」は最初に伊澤がもってきたアレンジに近い形になりましたね。
EMTG:この2曲と、やはりCMで使用されたシングル「女の子は誰でも」、「空が鳴っている」の歌詞は、これまで他のアーティストにも多くの楽曲提供を行ってきた椎名さんの“作家性”が際立っています。椎名さんが“作家・椎名林檎”を東京事変のなかで全開放させることができる。この状況は大変好ましいと思うのですが。
椎名:これまでは、私が勝手に制限をかけていたのかもしれません。だから結果的に今回、三木聡監督(※映画監督。TVドラマ『熱海の捜査官』を手がけた)から頂戴した“あえて事変でスタンダードをやってほしい”というピンポイントなオーダーは、その制限を外すきっかけになってくれました。
EMTG:つまり監督が、今回のアルバムキーワードのひとつである“スタンダード感”のヒントをくれた。
椎名:本当にそうです。自信につながったし、背中を押していただきました。これはCMについても同じです。とても光栄だし、ありがたかったです。
EMTG:伊澤さんは今回鍵盤ではなく、ほとんどの曲をギターで作ったんですよね?
伊澤:はい。そうすることで“発見”をしたいなと思ったので。
椎名:例えば「絶対値対相対値」では、伊澤が書いてきた曲が“私っぽい”と言ったら何ですけど、すごく私側に寄せてくれた曲だと感じたので、そこからどう飛距離をつけようかと私が手を加えてみて。
浮雲:ギター・ソロのために空けておいた小節に歌を加えたりしてね。
椎名:そう。もともとの素材に対して、音楽的な意味で逆説的な要素を加えてみて。今回の現場で驚いたのは、そういった未だ見ぬ音楽面でのやり取りが、口頭だけで可能になっていたことでした。
EMTG:メンバー間のコミュニケーションを象徴するようなエピソードですね。
浮雲:椎名さんがボーカルの面から変えていったものもあったよね。
椎名:「新しい文明開化」も伊澤が“ポップスとして違う気がする”って引っ込めちゃいそうだった曲を、楽器のアプローチはそのままの状態で、“ここは私に任せて!”と引き取って完成した曲でした。
伊澤:そういうときの椎名さんは本当にすごくて、俺がどれだけ考えても到達しない、まさにピッタリの答えをスッと持ってくるんです。「禁じられた遊び」もそう。俺がずっと、それこそレコーディングの当日まで悩んでいた曲だったんだけど、最後は歌入れ中に椎名さんが歌詞と同時に大サビのメロディ・ラインを作ってくれて、目の前がパーッと明るくなった。
椎名:私は曲を書いた人の、言わば筆致で言うところの“止め”や“跳ね”には、できるだけ手を加えたくないというルールを持っています。だから歌で流れが見えるのならばそれがいちばん理想的だと思って。
浮雲:椎名さん、そういうときの殺し文句があったよね。
椎名:何でしたっけ? そんなつもりはありませんでしたけど、確かに“必ずキラー・チューンにしてみせる”みたいな宣言は何度かしましたよね。
EMTG:「海底に巣くう男」はグラムロック的なグリッター感のある曲で、事変には珍しい楽曲ですね。
浮雲:それを椎名さんが唄うことでちょっとチャーミングな曲になっているのがおもしろい。
亀田:浮ちゃんのデモテープはコーラスまで入っているので、全体の輪郭がつかみやすくて、すぐに完成形がハッキリと見えました。
EMTG:「恐るべき大人達」は作曲が亀田/椎名の共作という珍しいクレジットです。
椎名:師匠の曲に交ぜていただいたのははじめてのことです。「空が鳴っている」や「21世紀宇宙の子」とはまた違う方式で、これまでの事変にはなかった印象の曲にしたいと思いました。
亀田:アレンジは僕が作った形のままで、椎名さんが歌メロを変えることで“大発見”が生まれているんです。僕が最初に考えたAメロは浮ちゃんのギター・リフになっている。
浮雲:そこもまた共作感があって。だから例えばクレジット上では椎名さんと誰かという表記になっているけど、今回はすべての曲に事変全員としての共作感がある。
EMTG:リリースから約3ヶ月を空けて、9月からはいよいよ全国ツアーがはじまります。
亀田:ちょうどこのインタビューの直前も、男性メンバーはそれについて話していました。“ツアー、早くやりたいよね”って。
刄田:『大発見』を作り終えて、今回もいろいろとすごいアルバムなのに、みんなで話し合うと“すぐやれるよね”っていう感じなんです。『スポーツ』のときみたいに“どうしよう?”は、出てこない。早くライブをやりたくて仕方がないですね。
椎名:私は何て言うか……もちろん早くみなさんの前で直接届けたいという気持ちもあるんですけど、どこか寂しい気持ちもあって。完成までのみんなとのやり取りや、いくつもの想いがすべて尊く、愛おしくて、まるで宝箱のようなアルバムになったと思えて。すべてを閉じ込めたまま開きたくないという気持ちもあって。
浮雲:それ何かわかる。すごく聴いてほしいんだけれど、究極的に言えばリリースしたくないような。
椎名:本当にそう。相反する気持ち。自分が手がけた作品はすべてが“とっておき”なんですけど、“じゃあ百歩譲って『スポーツ』のクレームは聞いてもいい。でも『大発見』は、これだけはちょっと……お願いやめてね?”っていう感じなんです。

【取材・文:三宅正一】

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リリース情報

大発見

大発見

2011年06月29日

EMIミュージックジャパン

[DUSC:CD]
1. 天国へようこそ For The Disc
2. 絶対値対相対値
3. 新しい文明開化
4. 電気のない都市
5. 海底に巣くう男
6. 禁じられた遊び
7. ドーパミント! BPM103
8. 恐るべき大人達
9. 21世紀宇宙の子
10. かつては男と女
11. 空が鳴っている
12. 風に肖って行け
13. 女の子は誰でも
Bonus Track 天国へようこそ For The Tube

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■ライブ情報

♪東京事変 Live Tour 2011 Discovery
◆開始日:2011年9月30日(金)~

※ツアーの詳細はオフィシャルサイトをご確認下さい

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