Every Little Thingのニューアルバムは、2人が丁寧に綴った上質なポップスが満載。

Every Little Thing | 2011.09.22

 Every Little Thingーービートルズの楽曲に由来するこのグループ名。
 ボーカルの持田香織は、この名前を「背負ってきた」と言った。
 ギターの伊藤一朗は、自分達の音楽を何度も「ポップスだ」と言い切った。

 そのグループ名のとおり。
 日常の小さな事の中に感情の起伏を見つけ、それをキャッチーなメロディーにし、極上のポップ・ミュージックを世に送り続けてきたEvery Little Thing。
 これまでずっと、日常と向き合ってきたアーティストである。

 15周年を迎えた2人が“今年”改めて日常と対峙し、10枚目のオリジナルアルバムを完成させた。
 タイトルは『ORDINARY』。
 2人の想いが、歌が、サウンドが、ふわりと、肌を、そして去年とは明らかに違う私たちの心を優しくなでていく。

EMTG:15周年を迎え、改めて感じる嬉しさなどは?
持田:本当、ありがたい事ですよね。ずっと応援してきてくださった方々がいて、今年はいろいろ接する機会があればいいなって思っていたんです。だからまず、全国ツアーで各地に行って、皆さんにお逢いできるのがまず嬉しいし、そのツアーに『ORDINARY』っていう……こういうアルバムをひっさげて行けるのも嬉しい。改めて自分で聴いてても、嬉しい気持ちになるような、いいアルバムが出来ました。
伊藤:アルバムの制作は、毎回、、時間とせめぎ合うことになるんで、わりと……ピリピリした部分も多いんですよ。でも今回は、制作する時間は前作と比べてもタイトだったんですけど、1曲ずつ、紡いでいけたかなって実感があって。そうやって作ったのが、この年に制作したアルバムになったって事が、すごく自分の中では大きいですね。
EMTG:紡いでいくというのは、丁寧に……って意味でしょうか?
伊藤:そうです、そうです。前までは、今までの経験もあってこう……なんとなーくうまく回っていたところもあった。そこに今回は注意を払ったっていうか。レコーディングって、結果オーライ的な、ちょっとイージーなスタンスも必要なんですけど、そうじゃなくて、もっとこう……1曲ずつ、1音ずつ、向き合っていくように取り組んでいったっていうかね。タイミングもあったんだと思うんですよね。
EMTG:先ほど言われた“この年”、今おっしゃった“タイミング”というのは、15周年という意味ですか?
伊藤:それもありますけど、震災も大きかったなと思うんです。震災が無かったら、こういうアルバムになってなかったと思うんです。エンターテインメントって、ちょっと難しい事いうと……一定の経済の上に成り経っているものじゃないですか。日本全体の士気も下がり、自粛のムードもあった……そういう中で、自分の中でも、エンターテインメントの根本を考え直す機会になったんですね。そこからのアルバム制作。うちらって、ポップスやってるんで、耳当たりはソフトじゃないですか。でも意識が、そうじゃないところにあったんですよね。だからわりとシリアスに作ったっていう感じがあるんですよ。だから、1曲、1曲紡いでるっていう感覚があったんでしょうね。
EMTG:歌詞を拝見していて、空間をイメージさせる言葉使いが素晴らしいなと思いました。意識して書いてる部分でもあるんでしょうか?
持田:そういう……空間とか、隙間に何があるかなって、想像できるような言葉は、私自身すごく好きですね。だからそう言っていただけるのは、嬉しいです(笑)。歌詞は、1曲、1曲書いて、最後にタイトルを決める場合が多いんですよ。タイトルが先にあって書いたりする場合もあるんですけど、それはすごく稀で。テーマも、タイアップとかがあったら、そこに沿ったテーマで書く場合もあるんですけど、だいたいは曲を聴いて、雰囲気とか、自分が聴いて思った事を言葉にするんですね。あのー……私の性格上、いろんな事をすぐ忘れてしまうので(笑)。
伊藤:忘れるよね、本当に(笑)。
持田:あはははははは(笑)。だから、極力忘れないように、いろいろ悩んでた事も、大変だった事も、言葉にしていこうか、と。
EMTG:なるほど(笑)。じゃあ例えば「tomorrow」の ♪どうしてすぐ忘れちゃうの? ♪って歌詞も、自分に言っているところもあります?
持田:そうなんです、ほとんど自分に言ってるのかもしれないところも(笑)。でも、明日があるんだったら、ずっと笑っていたいしって普通に思うし、そこをいちばん大切にしたいなってところで「tomorrow」ってタイトルにしたんですよ。
EMTG:アルバムタイトルにもなっている「ORDINARY」は?
持田:これは、珍しく、タイトルから決めた曲ですね。今年、アルバムを作る事は決まっていて、でも実際に作り始めたのは、震災後だった。私もこれまで、普通である事の大切さを歌詞にしてきたけども、やっぱりああいうことを目の当たりにして、果たして本当に大切にできていたのかなって考えたんですよね。そういう想いに加えて、15周年迎えられたこと、Every Little Thingっていう名前を背負って2人で続けてきた事って考えた時、アルバムを作るにあたっても、やっぱり今、普通である事をどれほど大切にできるかっていう事が大事なんだろうねって話になって。そうやって、いろいろスタッフの人とも話をしている中で「ORDINARY」って言葉が出てきて。すごくしっくりきたんですよね。こう……今、改めて思った事が、そのままタイトルになった感じですね。
EMTG:ボーカル録りはいかがでした?
持田:すごく、楽しかったんですー!
EMTG:15周年、10枚目のアルバムで、楽しかったですって言い切れるのは、すごく素敵な事ですね。
持田:あははは、本当に(笑)。たぶん、自分が思っている声と、出てくる声が、一致している感じがしたんですね。想いが声になるっていうか。具体的にいうと、声に艶があって欲しいなと思っていたんです。それがわりと、ポンと出てきてくれた。“あぁ、今の自分がこういう風に声が出るんだ、嬉しいな”と思いながら歌ってましたね。だからボーカル録りが、すごく楽しかったんですね。これまで、一朗さん始め、周りのスタッフやファンの人達がいて、支えてくれて、それで続けて来れたと思うんですけど、だから今、歌うことがすごく嬉しいんですよね。
EMTG:12曲目「Pray For East」は、ギターのインスト曲。ポップスアルバムの中での、インスト曲の効果やポジションについては、どのように捕らえてるんですか?
伊藤:全体聴いた感じで、ソフトなんですよね。もちろん、グル―ヴのある曲もありますけど。攻撃性があまり感じられないようにミックスしてある。僕は、どちらかといえば、リズミックなギターが得意で、ちょっとマイナーなメロディーを弾くようなスタイルはあまり得意じゃないんですよ(笑)。でも今回は、アルバム全体を聴いて、それを弾くしかないだろう、と。これ、徹夜で飯抜きで録ったんですよね。スケジュールがタイトだったんで、自然にそうなっちゃったっていうのもあるんですけど、感情移入しなくちゃなぁと思って、自分を追い込んでみたっていうか。今回のは、より正直に感情を吐き出さないとダメでしょっていうのがあったんですよ。こういう切り口は、初めてですね。
EMTG:タイトル曲「ORDINARY」の歌詞に、♪ 赤い風船 ♪ というキーワードが出てきますが、これは何かの象徴だったりするんでしょうか?
持田:元々、アルバムのテーマとして、一朗さんが言ってたんですけど、エンターテインメントを象徴するのに、風船っていうのが、すごくわかりやすいんじゃないか、と。
伊藤:2004年に『commonplace』ってアルバムを出したんですけど、結構、そこと似たような意味を持っている言葉。僕、30年前くらいのアメリカ映画で「ORDINARY PEAPLES」って映画がすごく好きなんですね。邦題だと「普通の人々」。一般家庭の家族がすれ違う、結構悲しい映画なんですけど(笑)。そういうイメージもあって、最初、タイトルが「ORDINARY」って、渋すぎないか? って思ったんですよね。
EMTG:あぁ、アメリカの渋いアーティストのタイトルみたい。
伊藤:なんですよね(笑)。で、アートディレクターと、そういう風な話をした時に、赤い風船っていうのはどうだ、と。風船って、その中に何が入っているわけでもなく、興味のない人にとっては、無用なものだったりするじゃないですか。そこがエンターテインメントのようだね、っていう。例えば、精神状態がある程度安定していて、幸せな状態じゃないと、風船を買おうって思わないんじゃないかなって思うんですよ。だから、そういう状況に、早くあがっていくといいね、みたいな思いもあったんですよね。
EMTG:話が変わりますけど、子供って、なんであんなに風船欲しがるんでしょうね?。
伊藤:あー、それたぶん、飛んでっちゃうからじゃないですかねぇ?
持田:あはははははは(爆笑)。
伊藤:それに、壊れちゃうものですし。その儚さが、子ども心をつかむんじゃないですかね。
持田:ビジュアル的に風船って、嬉しくなるものだし、単純に絵になった時に可愛い。それに、さっき、一朗さんが言った話も、本当そうだなと思ったし。だから本当ひとつ、象徴としての風船というのはありましたね。
EMTG:曲の頭に風船って出てくるじゃないですか。聴いてて、この言葉歌いにくいんじゃないかなぁって思ってました。
持田:風船、ですよね。確かに、ちょっと歌いにくかったです。でもそれも、楽しかったですよ(笑)。

【 取材・文:伊藤亜希 】

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ビデオコメント

リリース情報

ORDINARY

ORDINARY

2011年09月21日

avex trax

1. アイガアル
2. tomorrow
3. 宙 -そら-
4. 空白
5. MOON
6. wonder love
7. STAR
8. Asian Beauty (Instrumental)
9. 響 -こえ-
10. ありがとうはそのためにある
11. ORDINARY
12. Pray For East (Instrumental)
13. BEGIN

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お知らせ

ライブ情報

Every Little Thing 15th Anniversary Concert Tour 2011?2012 "ORDINARY"2011年10月1日スタート!!
2011/10/1(土) 千葉:浦安市文化会館
2011/10/9(日) 神奈川:パシフィコ横浜
2011/10/22(土) 群馬:ベイシア文化ホール(群馬県民会館)大ホール
2011/11/3(木・祝日) 岡山:倉敷市民会館
2011/11/5(土) 島根:島根県民会館

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください

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