フロントマン志村正彦の訃報から１年９ヵ月。制作途上だったアルバム『MUSIC』を残された３人、山内総一郎(g)、金澤ダイスケ(key)、加藤慎一(b)で完成させ、さらにはかねてから念願のイベント“フジフジ富士Q”も多くの友人アーティストの協力で実施。その感動のライブの模様はDVDとしてリリースされた。

　そして今回、山内をリードボーカルにコンバートし、３人がソングライティングに参加してニューアルバム『STAR』を制作。フジファブリックは新しいスタートを切る。バンドシーンの中でも独特のインテリジェンスを感じさせるこのバンドは、今作でもスペイシーなインスト「Intro」から始まって、ラストの「cosmos」までを見事に構成してみせる。個人的には穏やかな中に芯の強さを含んだ「スワン」と「Drop」が気に入った。さっそくインタビューしてみた。

山内：志村くんが亡くなって、『MUSIC』を作って、志村くんの亡くなる前からやろうと決めていた“フジフジ富士Q”もやって。そこまでは無心でできた。乗り切ったっていうか、壁を乗り越えた経験は大きかったと思います。去年の７月に“フジフジ富士Q”をやっと終えて、その緊張感をほぐして、８月からメンバーの話し合いが始まって。なんですけど、金澤くんはアジカン、僕はくるりのサポートでツアーに出たので、その合間に集まって『STAR』の制作をしていました。

EMTG：３人でフジファブリックを続けることには、迷いはなかったんですか？

金澤：なかったです。ボーカルと作詞と大半の曲の作曲をしていた志村がいなくなって、３人で何ができるのか、試してみようっていうことになりました。

山内：アルバムを作るっていうより、３人で曲を作って、継続するバンドのイメージが思い浮かぶかどうか。「君は炎天下」っていう曲はずっと前からあったので、今回、最初に作ったのは「ECHO」ですね。

EMTG：♪あれからね　色んなことが沢山起こってさ♪っていう、日記みたいな曲だ。

山内：そうですね、詞は歌録りの直前に書きました。バンドとしての一体感を表現したいと思って、楽器のリズムをユニゾン(注：同じことをして、揃えること)にしたり。

EMTG：そのあたりから“新生フジファブリック”が始まったんだね。

金澤：そこからそれぞれのツアーの合間に、一ヵ月ごとにスタジオに入って制作を進めて。

EMTG：アルバムのオープニング「Intro」は、壮大なイメージを感じた。

山内：２曲目の「STAR」は、あのイントロを含めて一曲だったんですよ。アルバムを作るとき、「まだやってないことをやろう」っていうのがあって、あの長いイントロもそのひとつでしたね。

EMTG：その次の３曲目「スワン」が、僕は大好きだな。

金澤：ウチの場合、キーボードがいるんで、って僕ですけど(笑)、「ピアノでロックできたらいいな」って思って作りました。

EMTG：「スワン」のピアノ・リフはかっこいい！

金澤：あれ？！　「ピアノでロックしたい」なんて今まで言ったことなかったのに、言っちゃってますね、僕(笑)。

EMTG：それも“まだやってないこと”のひとつかも(笑)。そして「スワン」の歌詞は金澤くんと加藤くんで書いてる。

加藤：サビのメロディと歌詞のイメージをもらって、書いたんです。

金澤：３人で精一杯やってます。

EMTG：「Drop」もいい曲だね。山内くんのボーカルも素敵だ。

山内：メロディができて、「この曲は大きく歌えるな」と思ったんですよ。サビは、一息で全部言うように歌おうと決めて。

EMTG：なんかボーカリストとしての自信を感じる。

山内：まだそんなところまで、行ってませんが(笑)。

EMTG：ドラムもすごく合ってる。

山内：手伝ってくれたドラムの刄田(綴色from東京事変)さんも、「この曲、いいね」って言ってくれた。♪そんなこと話せるかな♪っていう部分をあまり伸ばさずに歌っているのは、刄田さんがアイデアを出してくれて。

EMTG：いい関係だね。

山内：３人のバリエーションの伸びしろを感じた曲になりました。

EMTG：最後の「cosmos」では♪傾いた砂時計　元に戻さない♪ってフレーズで、新しいスタートの決意を歌ってる。

金澤：はい、この曲では「Intro」と同じノイズを入れてます。

EMTG：いいアルバム作りだったね。そして、ツアー“ホシデサルトパレード2011”に出る。

山内：新曲を中心にやるつもりです。それと、いろんな曲にライブならではのイントロが付く可能性がありますね。

EMTG：「STAR」みたいに？

山内：そうです。ライブではフリーキーでエキサイティングなものを表現したいと思ってます。

EMTG：今回、アルバムにはスカパラがブラスで参加してるけど、ライブでもブラスを入れるプランはあるの？もしどこか１カ所入れるとしたらどこ？

山内：どこか１カ所と言われたら、初日の大阪・なんばHatchか、最後の仙台Darwinかな。でも、基本的には３人で一緒にライブやるのが楽しいんですよ。

EMTG：楽しみにしてます。

【 取材・文：平山雄一 】