熊木杏里、心の声に正直だった時の感情を思い出しながら作ったニューアルバム「光の通り道」リリース!

熊木杏里 | 2012.02.17

EMTG:前作「and...Life」から短い期間でのリリースになりますが、今回はどういうアルバムにしようと?
熊木:今回はミニではなくフル・アルバム。作り上げる喜びもあったけど、デビュー10周年ということも考えると、「どういう風に辿り着くのがいちばんいいのか?」ってすごく考えました。そこで響いたのが、武部聡志さんの言葉でした。
EMTG:今作のプロデューサーでもある武部聡志さんですね。
熊木:武部さん、「もうちょっと自分を見つめた方がいいよ」っていうようなことを言ってくれたんです。デビューの頃の気持ちを思い出してみよう、みたいな。それで、「なんで私は歌を歌いたかったんだっけ?」「最初はどういう気持ちで言葉を書いて、何をみんなに思ってほしかったのかなあ」っていうのを、もう一回考え直してみました。やっぱりこの10年、タイアップのお話を頂いて曲を書き下ろすこと多かったですからね。それもすごくありがたいことだけど、そうじゃなくて、もうちょっと熊木杏里の言いたいこと、伝えたいことを見つめてみたらどうかって。
EMTG:たしかに、CMやドラマなどの主題歌として書き下ろされたものは多かったですからね。
熊木:震災もありましたけど、その時の気持ちは「and...Life」でわりと表現出来た部分もありましたから、自分が今生きていてみんなに何を伝えたいのかを書こうと。武部さんは「あなたがウィークポイントだと思ってる部分は、とても武器になることだから」とも言ってくれました。私は声がハスキーだし、ウィスパーボイスだし、あんまり力強い歌は歌えないなあとか、自分で自分のことを押し殺してるような部分もあったんです。「いやいや、それで10年やって来てる!」と。そういうことを、私の歌を聴いて下さってるファンのみなさんに伝えたらいいんじゃないかって。それを聞いてすっごく涙が出たんです。じゃあ、自分も含めて、そういう自分の心の弱さみたいなものを抱えている人たちに向けて作ってみようと。初めて、ファンの方たちに向けて作った1枚でもありますね。
EMTG:そこが明確な目的になった、と。
熊木:そしたら割と強い言葉が出てきたんですよね。人に迷惑はかけてきたかもしれないけど(笑)、心の声に正直だった時の感情を思い出して作ったので。
EMTG:そういう自分自身をいちばん表わしているなと思う楽曲は?
熊木:「がんばります」かな。この「がんばります」ってワード、嫌いではないんだけど、最近よく言ってるなと思って。人に会った時、もっとこうした方がいいとか言われる前に「あ、はい、がんばります!」って言って逃げてるんですよね。防御っていうか。そんな時の自分って結構切ないなと思うんです。言った後に落ち込んだりしちゃってね。これは歌にしようと。
EMTG:じゃあ「A day in my life」はどうでしょう。この曲はサウンドもポップで明るくて、歌詞もとことん前向きですよね。
熊木:これは、アルバムの中でも風を吹き込んでくれるような重要な曲。レコード会社を移籍する前、ひとりでいろいろとライブのブッキングなんかもやってる時に作ったんです。なんかヤケクソじゃないですけど(笑)、「くっそー!」みたいな気持ちもありつつ、でもこの1日も自分の人生の中の大事な1日なんだ、諦めちゃいけないって気持ちで、思いのままに書きました。
EMTG:勢い、出てますね(笑)。
熊木:当時のね(笑)。でも逆にこのアルバムの中でも最後の方に作った曲ーー「がんばります」、「羽」、「シグナル」なんかにもすごい今の感じは出てます。「シグナル」は、10年やってきた自分を一蹴するじゃないけど、一度捨て去るような気持ちとガサーッと全部持ってくよみたいな気持ちが両方出てるんです。先ほども言いましたけど移籍前のひとりでやってたとき、人の意見も聞かなきゃいけないよなあって、ちょっといい子になってたような部分もあったんだけど、あれ?自分ってもう少し我があったはずだよなあって。じゃあそういうの、もう取っ払ってやろう!って思った気持ちを、今の自分の言葉で、希望に向かう感じで書いたんです。だってみんな10年何かを続けてたらそれなりにワー!って断ち切りたくなるようなこと、あると思うんですよ(笑)。
EMTG:あります、あります。
熊木:「羽」にも、同じような感覚はすごく出てますね。これは奇をてらったサウンドではない分、言葉がすごく立ってる。口をちゃんと開けて歌うことを心がけたんですけど、今までよりもたぶん生々しい歌声になってると思いますよ。これまではどこかキッチリ歌わなきゃいけないと思ってたけど、もっと生命感があるというか、歌の中でももがいてる熊木杏里っていうのがわかる1曲になってるんじゃないかなって思いますね。
EMTG:以前のインタビューでもお話しされてましたけど、信頼出来る人たちと音楽を作ることで、これまで以上に解放されたり挑戦出来たりする部分もあったんでしょうね。
熊木:それはありますね。圧倒的な音楽パワーっていうんですか?熊木杏里がいかにそこに居るか。下手でもいいから「君なんだ」ってことを自分自身がもっと打ち出すべきなんだなっていう環境でしたからね。だからこの曲はジタバタしてるんだもん!とか、この曲はちょっとふてくされて作ったんだもん!とか(笑)、なるべく隠さないでいようって思いながら作れました。
EMTG:ある意味、10周年だったからこそ出来たアルバムでもありますか。
熊木:そう、まさに10年というものがあったからです。振り返るとよくここまで心を動かしてきたなあって。人を遠ざけてみたり、人にすごく寄ってみたり…。生きてきたとおりの音楽がそこにある。そんな10年だったなあって思いますね。このアルバムって、「and...Life」と比べるとものすごく違う感じがすると思うけど、デビューした頃の自分には少し通じるものがあるような気がするんです。「殺風景」なんかではちょっと言葉に刺のあるような表現をよくしていたんだけど…、人のあたたかさとかを1回知った自分が書く悲しさだったり辛さだったりっていうのは、なんだかとても人間らしいというか、きっと「届く」ものになってるんじゃないかなって思うんですよね。
EMTG:熊木杏里の音楽がまたここから始まっていく。「光の通り道」というタイトルもそうですが、この先へとつながるものを強く感じるアルバムになってると思います。
熊木:このタイトルには、目では見えない気持ちを辿っていく心や魂の通り道が、光であってほしいなという思いを込めてます。ファンの人に対してもそうだけど、遠くにいる誰かと、自分だけが思い描ける光の道でつながっている。私自身、音楽を作ってまた光が見えたりしているように、このアルバムも、誰かにとっての光の道となっていったらすごくうれしいなと思います。

【取材・文:山田邦子】

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リリース情報

光の通り道(初回限定盤)

光の通り道(初回限定盤)

2012年02月22日

ワーナーミュージック・ジャパン

ディスク:1
1. 光の通り道 ~prologue~
2. シグナル
3. Love letter ~桜~
4. 「がんばります」
5. 今日になるから
6. 羽
7. お祝い
8. A day in my life
9. wonder land
10. 願いの糸
11. オルゴール
12. 心のまま
13. 光の通り道 ~epilogue~
ディスク:2
1. Hello Goodbye & Hello
2. Life
3. 新しい私になって
4. hotline
5. 誕生日
6. ホームグラウンド~ふるさとへ~

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不定期なんですが、NHKの俳句の番組に出てるんです。先日、「闇汁」という冬の季語を使って詠む機会があったので、その時に検索しました。いろんなものを持ち寄って暗闇で食べる鍋のことなんですが、歴史とかルールとかを一応知っておこうと思って。では特別に、そのときの一句を。 「闇汁や 箸だけが知る 物語」

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