サカナクション、7枚目のシングル「夜の踊り子」はモード学園のTVCMでお馴染みのあの曲!

サカナクション | 2012.08.28

 サカナクションが、8月29日にシングル「夜の踊り子」をリリースする。前シングル「僕と花」から3ヶ月というショートスパンでリリースされる本作は、現在「モード学園」のTVCMソングとしてオンエア中。既に耳にしている方も多いだろう。ドラマ主題歌、CM曲、SMAPへの楽曲提供(「Moment」TBSロンドンオリンピック2012テーマソング)など、確実に活動の幅を広めている彼らだが、本作は楽曲のクオリティはもちろんのこと、初回限定盤に付属されるライヴDVDや、アートワークなど、様々な試みが詰め込まれた作品になっている。内容盛りだくさんなシングルについて、山口一郎に話を訊いた。

EMTG:「夜の踊り子」はクラブミュージックの高揚感が強い曲ですが、制作するにあたってリクエストはあったんですか?
山口:最初に絵コンテを見せてもらって、自分達の過去曲──「アイデンティティ」とか「ネイティブダンサー」とか「アドベンチャー」みたいな曲をイメージされていることを、打ち合わせでお伺いしていて。そういう求められている部分に応えつつ、自分達のストーリーに当てはまるような楽曲にしようと思ってましたね。本当は「夜の踊り子」を2012年の最初のシングルとしてリリースする予定だったんですよ。後からドラマのお話をいただいて、放送日の関係から「僕と花」を先にリリースしたほうがいいっていうことになって。だから、「僕と花」のレコーディングに入る前に「夜の踊り子」は完成してました。
EMTG:そうだったんですね。具体的にイメージしたものはありましたか?
山口:ツアー直後の制作でもあったので、ライヴのセットリストにどういう曲が入ってきたらいいのかっていう部分はイメージしてましたね。どうしても大きい結果が欲しかったから、それを獲得するために戦略的かつ衝動的に、バランスをとりながら作っていった感じはあります。
EMTG:今回の戦略的な部分というのは?
山口:過去の僕達の作品を支持してくれていたのは、僕らと同世代だったり、20代前半の方々だったんですけど、テレビというメディアを利用せずにやってきたのもあって、10代とか若い世代に届けるのが結構難しかったんですよね。なので、そこに届きやすく、今まで支持してくれた人達に対しても、今のサカナクションとしてアプローチできるものを意識してて。
EMTG:なるほど。
山口:今回のモード学園のお話は、デザインを学ぶ学校っていうのもあるし、クリエイティブっていう部分で、自分達がお手本になるわけじゃないけど、そういう風に見られる傾向もあるだろうと思ったし、過去に曲を提供したミュージシャン達が飛躍したことも多いので、それも意識していて。前回のアルバム『DocumentaLy』が10万枚売れて、幕張メッセ2万人をソールドアウトするっていう目標を達成して、次はその倍を目指したかったから、どうしても必要だと思っていたところもあって。そうやって自分達が望んでいたものが訪れたのはすごくチャンスだと思ったし、ビクターのタイアップ班も獲得するのにすごく尽力してくれたものでもあったから、これを成功に結びつけられなかったら男が廃ると思ってましたね(笑)。
EMTG:これも戦略的な部分になると思うのですが、「夜の踊り子」はリリースまで曲の全貌を明かさない方法をとられていますね。
山口:僕はやっぱりCD世代だから、発売日にCDを買って、封を開けて、カチャっとセットして、聴いて、こんな曲なんだ!っていうドキドキ感ってあるじゃないですか。それと全く同じではないけど、類似した感覚を与えられるんじゃないかなって。いろいろ疑問だったんですよ。例えば、先行配信するとプロモーションにはなるけど、そこでダウンロードしちゃったらCD買わないよなとか。そういう音楽業界の通説だったり、結果が出たものに対して反対するつもりはないけど、そのまま乗っかる必要もないと思っていて。いろいろ試してみて、その中で自分達に合うスタイルが出てきたら、それをやればいいと思ってるから。
EMTG:では、カップリングについて。「multiple exposure」は、ビートやエッジが強い「夜の踊り子」とは逆のイメージで、全てが溶けていく柔らかい感じがありました。
山口:ドラマ主題歌、CM曲、SMAPさんに楽曲提供とか、ひたすら表!表!表!みたいな感じで曲を作っていて。この一言を細かくしないと伝わらないとか、分かりやすくするベクトルにすごく向きすぎていたから、自分が今までやっていたことを見失いかけてたところもあって。だから、初期衝動というか、何も考えずにみんなで好きな感じに作ってみようと。言葉もすごく大きなテーマを隠喩していて、伝わりにくいかもしれないけど、自分の思った通りに書いてみたらいいんじゃないかって。そういう気持ちで作った曲です。すごくアルバム的な曲になった気はしますね。
EMTG:<そう生きづらい そう言い切れない僕ら>っていう歌詞がすごく残りました。やっぱり、生きづらさって感じますか?
山口:どの時代でも生きづらさを感じない人はいないと思うし、特に2012年は、去年ああいうことがあった分、より具体的な生きづらさが社会に蔓延してると思う。それが強くなってるし、どんどん強くなっていく気もしていて。特に僕らみたいな団塊の世代ジュニアからすると、親父達の世代が作ってきた悪い貯金を全部背負わされてる感覚になっていっているというか。年金にしろ、原発にしろ。
EMTG:そうですよね。
山口:そもそも音楽っていうのは、自分が曲を書いている気分とか、今の空気を瞬間的に切り取って、感覚として代弁するっていうのもひとつの手法だと思っていて。それが抽象的であれ、リアルであれ、その感覚を歌うことによってどの世代にも理解出来るものになると思うんですよね。そうやって音楽を作ってきた自分達の本来のところに立ち返って作っていて。カップリングでこういう曲を作るのは、すごく大事なことだと思うし、その勢いがアルバムに繋がるんじゃないかなと思う。
EMTG:そして、初のセルフリミックス楽曲も収録されていますね。曲は「僕と花」ですが、なぜやってみようと?
山口:いろんな方にリミックスしてもらっていたのもあって、リミックス集はどこかで出したいと思ってたけど、その中に自分達が入ってないのは寂しいなと思ったし、「僕と花」はドラマ主題歌っていう誰もが理解出来るステータスがあって、それにちゃんと対応した曲だったから、その裏というか、自分達の好きなアレンジに変えてしまおうと。でも、僕はプロデューサー的なことをしてただけで、草刈(愛美/Ba.)とエジー(江島啓一/Dr.)がやってました。ピアノから始まった方がいいとか、温度感はこういう感じみたいなサジェッションをしてからアレンジに入ってもらったけど、みんな一流のミュージシャンだから、僕がどうのこうの言おうが(笑)、どんどん進めていくし、こういうモードなんだっていうのも分かったから、新しいなと思いましたね。
EMTG:そして初回限定盤にはライヴ映像を収録したDVDが付属されますが、すごく贅沢な映像ですね。
山口:この前のZeppツアーに来れなかった人もたくさん居たんですよ。それで、来た人は“見せるのずるい!”って思うし、来れなかった人は“ラッキー!”って思うような新感覚のものにしたかったのと、リハーサルを見てるスタッフに話を聞くと、“すごい贅沢だと思う”って言ってたから、それを体感出来るようなものにしようと思って。それで、その場にいて、1人で独占してるような映像にしてみたんですけど、ちょっと難しいかもしれないと思いましたね。人によっては資料映像っぽく見えちゃうかもしれないから。でも、実はすごくハイスペックなカメラで撮ってるから、例えば家に大きいビジョンがある環境の人が見たら“画質良い!”って思うだろうし、音もバイノーラル方式という特殊な収録方法で臨場感があるものになっていて。ヘッドフォンで聴くと分かりやすいんですけどね。
EMTG:あと、今回のCDジャケットなんですが、「夜の踊り子」って描いてあるのかなと思ったんですけど、違うんですよね。
山口:そう。これ、実物はケースが付いてて、そのケースをずらしていくと、文字が動いて見えるんですよ。そういう、手にとって楽しめる、持っておきたくなるものにしたくて。これね、買った人は上手く説明しきれないと思うんですよ。で、Twitterとかに写真をアップしたりすると思うんですよね。それを見た人が触れてみたいとか、実物を見てみたいと思うだろうなと思って。そういうアナログ感ってやっぱり素晴らしいんですよ。
EMTG:今回のシングルは、そういうアナログ感をハイスペックで提示することが目的としてあったのかなと思ったんですが。
山口:今回もそうですけど、今後もそういうスタイルは変えないと思う。音楽の楽しさの伝え方は、音楽を作ることじゃなくても出来る時代だし、音楽が好きな人達がワクワクするようなことをやるべきだと思うんですよ。それってやっぱり手触りだったり、人間臭さだったり、ちょっとした工夫だったりすると思うんですよね。その工夫がテクノロジーの進化によって出来るようになってきた。でも、テクノロジーに自分達を合わせるんじゃなくて、常に自分達のやりたいことがそれを追い抜いていたい。そういうことがTEAM SAKANACTIONのテーマでもあって。
EMTG:テクノロジーはあくまでも道具であって、利用するためのものだと。
山口:うん。テクノロジーが自分達のイメージに追いついてくるのが健全だと思う。今、高校生がレコードを聴いてるのがオシャレって言われてるみたいで、それはデジタルがここまで進んだから、アナログの良さが見直されてるわけであって。でも、それをそのままアナログでやるわけではなく、デジタルでもなく、どう伝えるか?っていうときに、テクノロジーを飛び越えたところに自分達の発想がないといけないと思うし、それを提案するのが、ひとつのエンターテイメントのような気がする。そういうバランスがキッチリとれているチームって、他から見て羨ましいと思われるし、面白いことをしそうだなって予感させる気がするんですよね。だから僕らは常にそうありたいと思うし、周りからそう期待され続けたいなって思います。

【取材・文:山口哲生】

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リリース情報

夜の踊り子 (初回限定盤)

夜の踊り子 (初回限定盤)

2012年08月29日

ビクターエンタテインメント

1. 夜の踊り子
2. multiple exposure
3. 僕と花 (sakanaction Remis)

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SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2012
2012/09/01(土)山中湖交流プラザ きらら

RUSH BALL 2012
2012/09/02(日)泉大津 フェニックス

テレビ朝日ドリームフェスティバル2012
2012/10/8(月/祝)国立代々木競技場第一体育館

ロックの学園 in 東北
2012/10/21(日)東北文化学園大学

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