GOING UNDER GROUND、一度完成したものをゼロから作り直したニューアルバム『Roots & Routes』をリリース!

GOING UNDER GROUND | 2012.11.13

 GOING UNDER GROUNDが、前作『稲川くん』から1年7カ月を経て、ニューアルバム『Roots & Routes』を完成させた。タイトルも象徴的だが、彼らのルーツ=音楽愛が思いっきり甘酸っぱく昇華されて詰まっている。彼らが生まれた年を冠した1曲目のインスト『1978』を入口として、まるでタイムスリップするようにめくるめく、切なくも鮮やかな14曲の風景。場所も時間も越えられる音楽の魔法を、最高に感じられるアルバムだ。今作に至るまでの物語を松本素生(Vo&G)に話を訊いた。

EMTG:資料に“一度は完成に漕ぎ着けたアルバムをゼロから作り直した”とありますが、作り直す前は、何処が引っ掛かってしまったんでしょうか。
松本:何かちょっと80点っぽいなって思って。今思えば、これ、俺たちがやんなくてもいいんじゃない?っていうようなアレンジや曲だったりしたのかな。時代に合わせたり、広く聴いてもらえるようにしたり、そういうのはいらないなって。10年くらいやってると、何でもできるようになっているんですよね。他の人の曲を聴いて、どう録ってるのかもわかるし。そこでいいなって思っても、それはわざわざGOING UNDER GROUNDの看板を背負ってやることかな?って。もっと言うと、すぐに結果出したいって思ったこともあるんですけど、今は、バンドって続くことに意味があると思っているんですよ。うちみたいなバンドは、あと10年くらいやり続けていないと、誰にも評価してもらえないんじゃないかなって。だったら、まず自分たちが100点って思えるものを作って、それをライヴで鳴らすっていう、超基本的なことをやっていくしかないなって思ったんですよね。だから……やっぱ、音楽をやりたかったんです。何かのツールじゃなく。
EMTG:1曲目の『1978』って素生さんたちの生まれ年じゃないですか。そこもまた、超基本的っていう今作の方向性とシンクロしているっていうか。
松本:そうですね。うちのバンドって、未来も大事なんですけど、過去も物凄く大事っていうか。そこが我々のルーツでもあるっていう話はスタジオでしていましたね。
EMTG:私も素生さんたちと同い年だから、今作に刻まれた風景は、自分の過去とはっきり重ね合わせて聴くことができました。
松本:ああ、それいいですね。音楽って年をとってくるとだんだん必要なくなるじゃないですか。それが悪いこととは思わないけど……自分も、音楽が全てだと思って生きてきた20代があって、結婚して子供ができて、意外と音楽ってあってもなくても困らないものなのかなって思うことが増えたんですけど、それと同じくらい、夜に一人でヘッドフォンで一枚通してアルバムを聴いて、今日これが聴けたから明日も頑張れるとか、そう思うことも増えたんです。だから、たかが音楽っていう気持ちが半分、これがないと生きていけないっていう気持ちが半分っていう、俺にとって今は音楽ってそういうもので。同じ世代の人って、多かれ少なかれそういうことを感じていると思うんで、そういう人たちに、やっぱ音楽っていいなとか、アルバム通して聴くっていいなって思って欲しいっていうところはありますね。昔は、もっと音楽がツールっぽかったっていうか。レコードを買った時も、DJで掛けられるなって思ったり。今は、俺の中ではそういう次元じゃなくなってきていて。
EMTG:わかります。だからこそ、今作には青春っぽい甘酸っぱさが濃く表れているのかもしれません。
松本:うんうん。意識はしていないんですけど、それがこのバンドのカラーだし、やっぱり拭い切れないというか。それはいいことと捉えてますね。絶対に変わらない部分ってあるじゃないですか。ここがなければもっと行けるのになって思うこともあるけど、反面そういう自分も好きだったり。今作は、いろんなところを認めてあげた上での曲たちが集まっているから、作った本人たちは清々しいのかもしれないですね。
EMTG:素生さんたちが20歳だった年が冠された『1998?土曜の夜、日曜の朝』は、まさにあの頃の感情が蘇りますよね。クラブの様子や、時代を彩ったバンド名が飛び出してきて。
松本:クラブスヌーザーが歌舞伎町のリキッドでやっていた頃に、終電に乗って行って、終わった後にマックとか行っていたことを思い出したんですよね。凄く楽しかったなって。
EMTG:バンド名でも、ベンフォールズファイヴやプライマルスクリームだけではなく、コーナーショップやサマーキャンプまで入っているあたりが、堪らないなあって(笑)。
松本:その二組のバンド名は絶対に入れたかったんですよ(笑)。俺、ロックはBEAT UK っていう番組と、クラブスヌーザーに行って、翌月に出る(雑誌の)スヌーザーのセットリストで知るっていう方法だったので。一番沁み込む時期にいろいろ聴けてよかったなって思いますね。何でもそうですけど、前例がないと……ロンナイとかはあったけど、クラブスヌーザーとかは、マッチョな人たちじゃなくても行けるロックのクラブイベントだったじゃないですか。で、前例がないから、いい意味で混沌としているところも楽しかったなって。
EMTG:1998年は、特に自分にとって意味のある年だったんですかね?
松本:あの頃ってクラブに行っても、友達もいないしお金もないから、そんなに面白くないはずなんだけど、そこに大音量で音楽が流れていると、頭の回路がイカれたようにブチ上がれたじゃないですか。俺は20歳まで高校に行っていて、あの頃はプライベートで鬱屈していたから、そこだけが楽しい場所だったっていうか。叫びたい時ってあるじゃないですか。「うぉー、俺は生きてる!」みたいに。そういう気持ちを初めて味わったんじゃないですかね、1998年に。その頃バンドもGOING UNDER GROUNDって名乗り始めたし、自分の中でビッグバンな時期だったんですよね。クラブスヌーザーはそこに加担していたから、書いておかなければいけないなって(笑)。
EMTG: あの時代を伝えたいっていう気持ちもあるんですか?
松本:うんうん、音楽を聴く時はそういうことを思って欲しいなあ、特に若い人とかは。これがあったら何もいらないっていう全能感っていうか。周りから見たら全能じゃないんだけど、自分ではそう勘違いする感じっていうか。今の俺がそれをやったらポーズになっちゃうから、やれるうちは音楽によって道を踏み外してるなあって生き方、どんどんすればいい。音楽が好きなら。
EMTG:『1+1』にも《真実なんてロックしか知らない》っていう歌詞がありますし、アルバムを通して音楽への思いが詰まっていますよね。
松本:今回、音楽について歌っている歌がたくさんありますね。さっきの話じゃないけど、たかが音楽って思うけど、それでも音楽がないと生きていけないって思ったんじゃないかな、メンバー全員が。逆に、みんな何が楽しいのかな?って思いますもん。俺たちは音楽しか楽しくないっていう結論が出ちゃったから、ずーっと続けるために、今ちゃんとやろうっていう。こんなにバンドが一丸になったことは、1stアルバム以来じゃないかな。
EMTG:へえー!
松本:『稲川くん』くらいから、メンバーが一人辞めたし、一丸とならないと前に進めなかったんだけど。今回、俺と丈さんの曲が半々なんですよ。それも象徴的で。しかも、できた曲を並べて、どれが必要か選んだらこうなったんです。だから、みんなバンドのことしか考えてなかったんだろうな。音楽を作る者として、この曲は入れたいっていう考え方じゃなく、バンドでアルバムを出す時に、この曲は入れたいっていう考え方だったというか。
EMTG:そういった時に、みんな自ずと音楽のことを歌ったっていうところが、いいですね。
松本:それは不思議かなあ。俺は肩の荷が下りた感じが合って。俺が突っ走らないといけないんじゃないかって思っていたけれど、自分と同じくらいバンドのことを思っている人が他に3人いるってわかったから。
EMTG:本当の意味で、バンドらしく作れたアルバムですね。
松本:そうですねえ。だから、これがスタートだな。

【取材・文:高橋美穂】

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ビデオコメント

リリース情報

【GOING UNDER GROUND】Roots & Routes

【GOING UNDER GROUND】Roots & Routes

2012年11月14日

ポニーキャニオン

1. 1978
2. シナリオライター
3. Breakthrough
4. Roots
5. 1998〜土曜日の夜、日曜日の朝〜
6. ナカザのディスコ★
7. 刹那
8. 稲川くん
9. コーンフレークダイアリー
10. 1+1
11. 愛なんて
12. なんにもいらない
13. 9th Route
14. Shining

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お知らせ

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汁なし坦々麺
今年の事務所の新年会で、東中野にある栄児(ロンアール)っていう四川料理の店に行ったんですけど、そこで食べた汁なし坦々麺がめちゃめちゃ辛くて。電池を舌に当てたような感じで、人間が食うもんじゃないと思ったんですけど(笑)。
で、こんなに辛いわけがないって思ったから、後日一人で食べに行ったんですよ、そうしたらめっちゃ美味くて、ハマっちゃったんですよね。
新年会の時は、辛くして下さいって事務所の社長が言っていたみたいで(笑)。一番好きなのはその店なんですけど、次は湯島の阿吽っていうお店や、『孤独のグルメ』に出てきた池袋の楊も美味しいですね。基本はゴマペーストなんですけど、栄児は入っていないのが特徴で。地方に行く時も、汁なし坦々麺を調べて食いに行くんですけど、大抵は偽物ですね。山椒を使っていないとか。唐辛子の辛さではダメなんですよね。肉味噌も甘味噌じゃダメとか。ただ、あんまりお店がないんで、四川料理の店に行って聞いてみています。汁ありじゃダメなんですよね(笑)。


■ライブ情報

『GOING UNDER GROUND 冬のHALL TOUR ふるさとライブ〜荒川わたれvol.3〜』
2012/11/17(土)桶川市民ホール

『GOING UNDER GROUND 冬のHALL TOUR 淀川わたれ』
2012/12/08(土)御堂会館大ホール(南御堂)

『GOING UNDER GROUND 冬のHALL TOUR 〜Roots&Routes〜』
2013/01/20(日)日本橋三井ホール
2013/01/13(日)栃木県総合文化センター サブホール

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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