高橋優、渾身の最新作。全7曲が映し出すものとは?

高橋優 | 2012.12.21

 元々はシングルの予定で制作が進行していたそうだが、急遽7曲入りアルバムとしてリリースすることが決定! 今作『僕らの平成ロックンロール2』は、胸に深く迫る名曲揃いの1枚となった。「ボーリング」「夜明けを待っている」「微笑みのリズム」などは、先日の全国ツアーでも披露され、ファンの間で早くも大きな話題を呼んでいる。収録されている全7曲で描かれていることは幅広いが、どれも生々しいエモーションとリアリティの結晶だ。多くのリスナーが、自分を重ね合わせて聴かずにはいられないと思う。曲にこめた想いと制作の背景について、高橋優に語ってもらった。

EMTG:当初はシングルの予定だったのが、7曲入りアルバムという形になったそうですね。
高橋:そうなんです。自然発生的に曲がどんどん増えていったんですよ。個人的な分析でしかないんですけど、かなり自分が変化する時期だったんだと思います。「新しい自分、且つ原点の自分」みたいなところで、とにかく今思っていることを曲にしていきました。
EMTG:「新しい自分」としてイメージしていたことって、どんなことですか?
高橋:今までは割と「僕はこう思う!」っていう書き方だったと思うんです。でも、去年の終わりくらいから自分の中で一つテーマになっていたのが、「聴く人たちにもっと歩みよる」っていうことで。ただ1人でわめいて歌うのではなく、最終的には誰かとの繋がりが欲しかったんです。気持ちを共有したり、行動を共有したかった。それは手拍子を一緒にすることとかも含めてなんですけど。
EMTG:例えば「微笑みのリズム」って、そういう曲ですよね。「みなさんと同じリズムを刻みたくて作りました」って、ライヴのMCでおっしゃっていたじゃないですか。
高橋:そうですね。これはまさにそういう曲です。ライヴでやっていても、すごく楽しいですよ。
EMTG:「昨日の涙と、今日のハミング」も心地よいエネルギーを感じました。「ここで歌われている通り、自分もささやかな幸せと不幸せの間を行き来しながら生きているけど、それってただの単調な繰り返しじゃないんだよな」って、この曲を聴いて思いました。
高橋:僕の自分への励ましの言葉であり、誰かの励ましにもなればいいなと思って作った曲ですね。例えば「立ち直る」って言葉がありますけど、それって「元に戻る」ってこととは違うと思うんです。1回悩んで立ち直ったら、それは悩む前よりも充実した人間になっているはず。そういうような想いがこもっているんですよね。
EMTG:「ボーリング」は、先日のライヴで初めて聴いた時、すごく印象に残りました。《面倒臭ぇ》ってフレーズのインパクトが、とにかく強かったですから。
高橋:この曲、取材とかで「私もこういう風に思うことがあります」ってよく言われるんです。ラジオにもすごくリスナーからコメントが寄せられていますし。それが実は僕にとって意外で。「みんな、そんなに面倒臭いのか?」と(笑)。僕から見るとみなさんは、すごくちゃんとしているような印象がするので。
EMTG:例えば会社で「面倒臭ぇ」って言って仕事を投げ出したら勿論問題になりますけど、こういう曲を聴いたり、口ずさむと、気持ちがすっきりして元気になるはず。「全てが面倒臭い!」っていう究極のネガティブを歌った結果、すごくポジティブなパワーを帯びてしまった……という感じと言いましょうか? 不思議な魅力がある曲だと思います。
高橋:その感想は、嬉しいです(笑)。衝動的、半ば実験的に、「こういう曲があってもいいだろう」って書いたんです。だから、これがどう受け止められるのか分かっていなかったし、現時点でもよく分かっていないんです。でも、この曲が受け止めてもらえるのだとするならば、「頑張れ!」って言われたからといって頑張れるわけではない……っていうことに似ている気がします。「くそったれ!」と歌われることによって、「じゃあやってやるぞ!」っていう気持ちになることだってあり得るわけだし。もしかしたら「ボーリング」って、そういう響き方をしたから、嬉しい感想を頂けているのかと、最近思っています。
EMTG:ミュージックビデオも良かったですよ。どんどん海の中へ入って行くじゃないですか。
高橋:寒かったです(笑)。撮ったのは10月ですから。本当は海をバックに歌うだけの予定だったんですけど、なんか入って行っちゃったんですよ。
EMTG:だから撮影した箭内道彦さんも海に入らざるを得なかった?
高橋:はい(笑)。あの映像を観ると、箭内さんが最初の内は渋っているのが分かると思います。途中で「しょうがねえな!」って決意したのが分かるシーンがあるので(笑)。
EMTG:(笑)「夜明けを待っている」も、大好きな曲になりました。夜明け前のこういう空気感とか、心理って、すごく身に覚えがあるんですよ。
高橋:「何のためにテレビをつけるのか?」っていう話を友達としたことがあって。テレビって本来は情報を得るためにつけるもの。でも、部屋にとりあえず音が欲しいからつけている面もあるじゃないですか? やっぱり雑音なり、自分が今ここにいる理由が欲しいからなのかなと思います。つまりは心の隙間を埋めている作業。僕も眠れない夜にただただ夜明けを待つことが出来なくて、とりあえずテレビをつけることがあります。そういう「心の隙間」みたいなところから、この曲が生まれたんだと思います。
EMTG:テレビの音とかでなんとなく隙間を埋めるこの感じ、すごく分かります。
高橋:ただの静寂、ぼんやりしている時間を、無駄と感じる人は、多分たくさんいるでしょうね。でも、「何もしない」っていうことの良さもあるはずなんですよ。僕はメジャーデビューしてからずっと、「じゃあ、これをする意味って何だ?」って考え続けてきた気もするんです。でも、生まれてきたこと自体に意味があるのだとすれば、「俺はぼんやりしたいんだ!」っていう意思さえあれば、それもいいんじゃないか? 最近、そんなことを思うんですよね。そういう想いの全てを表現したわけじゃないんですけど、「夜明けを待っている」を書いた時に考えていたのは、そういうことでした。
EMTG:ハッとさせられる視点ですね。たしかに、僕らは昔の人と較べると、「何もしないで過ごす」ってことを恐れるようになっているのかもしれない。
高橋:便利なものがどんどん増え続けていくのは、寂しいからかもしれないですよ。一旦寂しさは埋まっても、どんどんさらに欲しくなる。便利なものが生まれるのは勿論素晴らしいことだし、それがなければ成立しないこともいっぱいある。でも、便利になることによってますます深まる孤独もあるんだと思います。
EMTG:「発明品」は、そういう曲ですね。
高橋:そうなんです。これは今回の中で一番最近作りました。
EMTG:便利なものによって生まれる不自由さ、ストレスって、実際、思い返してみると、いろいろありますよね。メールとかSNSとか、そういう側面もあるのかも。
高橋:例えば、相手から反応があるかどうかは別にして、「いかに自分が相手のことを想えるのか?」っていうのが本来大事なんだと思いますけど、なかなかそうもいかなくなっているのかもしれないですよね。「こんなに想える人に出会えたのが幸せだ!」って思えること自体が、本当は大事なはず。ただただ相手を想うことも、実は「繋がっている」っていうことなんだと思います。「あの恋は成就しなかったけど、あれだけ想える人と出会えたのは素晴らしかった。あれは繋がりと呼べるものだったはずだ」ってことだってあるはず……っていうようなことを考えた時があって。そんな中から出てきた曲ですね。
EMTG:たしかに、ただただ相手を想うのも「繋がり」の一つの形ですよね。
高橋:今回の最後の曲が、「I LOVE YOU」ですけど、この曲で言いたかったことって、割とそういうことなんですよ。「こんなにも“人を好きになることが出来た!”って思ったことはありますか?」っていう問いかけをしたかった。「愛する」っていうことは、何が何でも繋がりを求めることとはちょっと違うんじゃないかな、と。「今、君に会いにいく」もそうなんです。「想い」って根本的には一方的なもの。だって、相手の気持ちを完全に計り知ることなんて永遠に出来ないんだから。もしかしたら、計り知ることが出来る奇跡的瞬間があるのかもしれないけど、僕は今まで生きてきた中で、そういう瞬間はまだない(笑)。経験上、相手の気持ちを推し量ろうとすればするほど孤独になるんですよ。
EMTG:すごく分かります(笑)。
高橋:それは友達であれ、恋人であれですよね。「俺がこんなにしてあげているのに!」なんて言い出した日には、もうすごく孤独なんですよ(笑)。逆に「相手の笑顔を見るにはどうしたらいいんだろう?」とか、見返りを求めないで考える時は、孤独から解放される。それが人が言う「愛」っていうものに近いのかもしれない……とか思うんですよね。
EMTG:今、ふと思ったんですけど、アーティストとファンの間柄も、根本はそういう無償の気持ちで成り立っているんじゃないですか。勿論、みなさんはチケットやCDを買ってくださるわけですし、アーティストがそれで生活しているのは紛れもない事実なんですけど、根本は「聴いてくれる人に楽しんで欲しい、喜んで欲しい」っていう無償の気持ちがあると僕は思うんです。「綺麗事言うな!」っていうツッコミがありそうですが(笑)。
高橋:(笑)僕も「メジャーでやっていくってどういうことなんだろう?」って分からなくなった時期がありました。でも、最近ようやく原点に戻れてきたんです。「歌ってて楽しいじゃん」とか「僕自身、誰かが歌ってるのを聴いて元気になったこと、何回もあったじゃん」って思って。「聴いてたミュージシャンに、僕は何を言って欲しかったか?」とか、「みんなが日常に戻って行く時に、どんな言葉、どんな曲があれば、“よし、やるか!”っていう気持ちになれるか?」とか、そんなことを考えるようになったんですよね。それを壮大な「無償の愛」っていう言葉で括っていいのかは分からないですけど(笑)。
EMTG:(笑)でも、この『僕らの平成ロックンロール2』の曲達は、リスナーのみなさんにとって、そういう響き方をすると思いますよ。現に僕もこれを聴いて、なんかすごく元気になれましたから。
高橋:ありがとうございます。歴史の教科書って「人類が火を使うようになった」ってこととか、「○×年に?乱があった」とか、衣食住に関すること、政治的な出来事は教えるけど、初めて音楽が奏でられた時代とかは教えないじゃないですか。でも、音楽とか、人の心を潤したものにも歴史はあるはずなんですよね。今もその歴史は進んでいる最中。そして、そういう歴史は、時代と密接に関係しながら進み続けてきたはず。僕も例えば「ボーリング」で《面倒臭ぇ》とか歌っている意味は、よく分からない(笑)。でも、きっと僕がこの平成の世の中に生きているから、このタイミングでこういう曲を作って歌っているんだと思うんです。だから僕が奏でている音楽が、誰かの心に刻まれたら嬉しいです。リリース前の現在、まだ曲を作った僕の部屋のニュアンスが抜けていないので、『僕の平成ロックンロール2』っていう感じ(笑)。リリースされて、みなさんに聴いて頂いて、早く『僕らの平成ロックンロール2』になって欲しいです。

【取材・文:田中 大】

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リリース情報

僕らの平成ロックンロール2(初回盤)

僕らの平成ロックンロール2(初回盤)

2012年12月26日

ワーナーミュージック・ジャパン

1.ボーリング
2.夜明けを待っている
3.今、君に会いにいく
4.昨日の涙と、今日のハミング
5.微笑みのリズム
6.発明品
7.I LOVE YOU

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高橋優LIVE TOUR~この声って誰?高橋優じゃなぁい?2012 at 渋谷公会堂2012.7.1

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2012年12月26日

ワーナーミュージック・ジャパン

[DVD]
ディスク:1
1. 序曲
2. 蛍
3. 終焉のディープキス
4. 誰がために鐘は鳴る
5. 雑踏の片隅で
6. HITO-TO-HITO
7. 気ままラブソング
8. 福笑い
9. あなたとだから歩める道
10. 8月6日
11. ほんとのきもち
12. 一人暮らし
13. サンドイッチ
14. 誰もいない台所
15. 絶頂は今
16. 蓋
17. 頭ん中そればっかり
18. 現実という名の怪物と戦う者たち
19. こどものうた
20. 想いよ、届け
21. 卒業
ディスク:2
1. 陽はまた昇る
2. 花のように
3. セピア
4. 素晴らしき日常 (弾き語り)

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ペットショップ
ペットショップへ行くのが好きなんです。
何も飼ってはいなんですけど。トイプードルって、すごくかわいいじゃないですか。いいなあ、って思ったり。僕が住んでいる町には、小さなペットショップがたくさんあって。そういうお店が好きですね。偏見かもしれないけど、大きいペットショップは、乱雑な印象がするので。小さくて、早い時間に閉まるところがいいです。それは即ち、動物を大切にしているということだと思うので。売るまでの間の名前をつけていているような店がいいですね。
そういうお店へ行って、だっこさせてもらっています……なんか1人でそういうことしているのがバレるのはどうなのかなあ?と、今急に思いましたけど(笑)。でも、僕は動物とか子供とか、ある種のメルヘンのようなものが割と好きなんですよ。そういう世界を信じている部分もあるので。だから、新しいペットショップを求めて、いろいろ検索しています。


■ライブ情報

unBORDE X’mas PARTY!
2012/12/24(月・祝)ZEPP DiverCity Tokyo

COUNTDOWN JAPAN 12/13
2012/12/29(土) 幕張メッセ国際展示場1〜8ホール、イベントホール

NAGASHIMA COUNTDOWN&NEW YEAR’S PARTY 2013
2012/12/31(月) ナガシマスパーランド内 大観覧車前特設ステージ

風とロック福島 LIVE福島 CARAVAN日本
〜Merry X’mas to ふくしま〜
2012/12/22(土)郡山ユラックス熱海
2012/12/23(日)郡山ユラックス熱海
〜おきなわはもう桜まつり〜
2013/01/20(日) ミュージックタウン音市場
〜さっぽろ雪まつり直前 Special〜
2013/02/03(日)札幌市教育文化会館(大ホール)

LIVE SDD 2013
2012/02/17(日)大阪城ホール

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