吉井和哉、ソロ活動10周年を集約したベストアルバム『18』をリリース!

吉井和哉 | 2013.02.05

 『18』 は、単なるベスト・アルバムではない。確かにソロになって以降の吉井和哉の足跡がここにはあるが、彼の最初のキャリアであるTHE YELLOW MONKEYの痕跡と、ソロのスタート時点で名乗った“YOSHII LOVINSON”の真意、そしてそれが現在の吉井和哉になっていくプロセスが俯瞰できる。さらには新録カバー曲や新曲は、吉井の未来を示唆している。
 バンドブームからJ-ROCKが 音楽シーンにおけるポジションを確立する時期に現われたTHE YELLOW MONKEYのボーカリストとして、吉井はそのエンターテイナーとしての才を開花させる。しかしソロに転じた後は、尖鋭的な存在になっていった。そしてこの数年は秘めていたエネルギーが真っ直ぐに音楽に表われるようになった。さらには昨年の活動は目覚ましく、特にライブで“新しい吉井”の誕生が間近なことをオーディエンスに予感させていた。
 そんなスリリングなタイミングでリリースされる『18』について、突っ込んで聞いてみたのがこのインタビューである。

EMTG:ベストアルバムを嫌うアーティストもいるけど、吉井くんは?
吉井:嫌いじゃないですよ、レコード会社が勝手に出すもの以外は(笑)。
EMTG:(笑)。じゃ、今回は?
吉井:もちろん、楽しんで作りました。
EMTG:どんなところから“ベスト作り”が始まったの?
吉井:単純に、ソロになってからのアルバムは、万人受けするものじゃなかったと思うんですよ。失礼な言い方になるけど、「J-POPシーンで売る気がなかった10年間」。そもそもが「THE YELLOW MONKEYの残骸を整理する10年間」だったと思います。ずっと試行錯誤してきて、一人の人間としてのリアリティを作品にすることができるようになったのは最近ですね。だから10年かかって、今回、ようやくソロのファースト・アルバムができたっていう感じです。
EMTG:残骸を整理するのに、そんなに時間がかかったんだ。
吉井:はい。
EMTG:でも、ここ2、3年はそんな感じはしなかった。3年前くらいのNHKホールのライブの後で、「沢田研二を思い出した」って感想を言ったとき、吉井くんは少し嬉しそうに笑ってたから。
吉井:あれが「最後のひと山」だったのかな(笑)。THE YELLOW MONKEYでは、沢田さんやデヴィッド・ボウイやカート・コバーンとかのニュアンスを拝借してJ-ROCKをやっていて。でも2000年に差し掛かるころ、「それじゃダメだ! もっと新しいディテールを探しに行かなきゃ」と思って。逆に言えば、「自分の生身をもっと磨かないと」と思ったんですよ。 
EMTG:そこからソロが始まっていくんだね。
吉井:そうですね。ソロの初期は「自分には歌唱力も作曲能力もないとしたら、ひたすら“トーン”で勝負だ」と思ってました。ダメな奴にしか、いいトーンは出せないと思って。もちろんマインドのクオリティが大前提にはありましたけど、音としては汚れて歪んでいくことを選んだんですよ。そうして、自分から精神を堕として行って。
EMTG:すごい話だね。
吉井:まあ、言うほど悲惨ではなかったんですけど、THE YELLOW MONKEYっていう大きなバンドをやってたことに対する逆ギレっていうか(笑)。まずソロ第1弾を作るときは、日本のドラマーともセッションしたけど、自分のイメージとは違ってました。そのとき、たまたまジョシュ・フリーズが叩いてるアルバムを聴いて、ダメ元でオファーしたら、引き受けてくれて。しかもレコーディングは憧れのロスアンジェルスのサウンド・シティ・スタジオだったんですけど。僕は、それまでの自分が持っていたグルーヴを、一度ゼロにしたかったんですよ。前のバンドのグルーヴは嫌いじゃなかったんだけど、それとは違うものをやりたかったんです。おこがましい言い方だけど、“世界のグルーヴ”を目指して、そこをクリアしないとダメだと思って。だからまずは「死んだグルーヴをやりたい」って言って、ヤマハのリズムボックスでデモを作ってたんですよ。そのパートをジョシュに叩いてもらって。ほんと、ゼイタクですよね(笑)。
EMTG:ジョシュは、吉井くんのソロにとって“運命の人”だったんだ。
吉井:そうなんですかね? ジョシュも当時暗かったんですよ。最初のレコーディングでは、スタジオで一回も笑わなくて。それでも、レコーディングの度にオファーすると、毎回やってくれたんですよ。どうしてなんだろうと思って、ある日、彼の作った曲を聴いたら、似てるなと思うことがあって。ついにはツアーまで参加してくれて。だから今は、本当に通じ合ってたんだと思えるようになりました。
EMTG:そこから始まって、ようやく自分のリアルを出せるようになったと実感したのは?
吉井:6枚目のアルバム『The Apples』と、その後のミニアルバム『After The Apples』辺りですかね。特に『After The Apples』は、最後のひと山を乗り越えた後の、“箒(ほうき)のひと掃き”みたいな感じで(笑)。今回のベストに入ってる新曲と新録は、『The Apples』のときにすでにあったんですけど、僕もスタッフも『The Apples』には入らないと思ったんですよ。『After The Apples』と新曲、新録を合わせれば1枚のアルバムになったんだけど、そういうものにはしてなくて。
EMTG:そのあたりに、今回のベスト『18』の意味がありそうだね。
吉井:デヴィッド・ボウイがこの1月に10年ぶりに出したアルバム『ザ・ネクスト・デイ』に、僕は涙しましたからね。ボウイを拝借していた自分を認めたというか、そういう気持ちもあってリリースするのが『18』です。
EMTG:新録の「朝日楼」は、アメリカのフォークソングを浅川マキさんが日本語訳して歌ってたバージョンのカバーだね。僕は昔、マキさんのライブでこの曲を聴いたことがあるよ。
吉井:そうなんですか!
EMTG:ちなみに吉井くんバージョンでギター・ソロを弾いてるのは、誰?
吉井:バーニー(日下部正則)とジュリアン・コリエルって、アメリカのギタリストです。
EMTG:えー!? すごく日本人的なソロなのに!!
吉井:ジュリアンは日本のことをよく分かってるんですよ。僕のツアーでずっと弾いてくれてたんだけど、一昨年のツアーの前に大震災があって、いろいろ大変だから来日を見送ってもらって、ジュリアンの代わりを入れない状態でツアーをやったんですね。今回、「朝日楼」を新録するにあたって、日本でそのツアーのバンド・メンバーで一発録りでレコーディングして、アメリカに持って行ってジュリアンに弾いてもらったんです。ここに入ってるのは、テイクワン(レコーディングの最初のテイク)ですよ。すごいライブ感でした。震災で引き裂かれたメンバーが、音で再会したっていう。
EMTG:すごいドラマだね。しかも、ジュリアンのソロの日本的なニュアンスが、驚きだ。
吉井:「朝日楼」は、アメリカのフォーク歌手やイギリスのロックバンド“アニマルズ”や、日本では浅川マキさんがカバーしてますけど、そんな“世界の楽曲”を自分の国の血で表現したいなと思って。歌謡曲もロックも関係ないと思ったんですよね。さらには、自分のルーツと、ミュージシャンの友情を再認識して、意味深い曲になりました。
EMTG:新曲の「HEARTS」は?
吉井:松任谷由実さんみたいな日本的なメロディというか、そこにちょっとGS(グループサウンズ=歌謡曲のニュアンスのあるロック)も入っていて。自分の日本的メロディをバージョン・アップさせることができた曲ですね。でも、『The Apples』には入らないなって。
EMTG:「血潮」も“吉井流フラメンコ”で面白かった。
吉井:THE YELLOW MONKEY時代だったら「名曲が出来た!」ってメンバーに聴かせてたところですね。3年前くらいからあったんですけど、松崎しげるさんの「愛のメモリー」みたいで、熱血過ぎるかなって思っていて(笑)。でも震災があって、照れてちゃいけないと思って、完成させました。
EMTG:人々をストレートに楽しませるってことだね。
吉井:そうです。これをツアー・ファイナルの福島で、この10年間の思いをストレートに出して歌うつもりです。
EMTG:いいね、いいね。そしてこの曲は、フラメンコ・ギターの沖仁がすごい。
吉井:別々に録ったのに、沖君とジョシュが目を合わせて演奏してるみたいに聴こえるんですよね。世界のグルーヴですよ。こんなギタリストが日本にいるって誇らしいです。
EMTG:やっぱりこのベストにとって、新録と新曲は大きなポジションを占めてるね。
吉井:「朝日楼」と「HEARTS」と「血潮」は、次の僕の音楽のヒントになってます。そういえばこの前、ユーミンさんのベストを聴いてたら、おこがましいんですけど、荒井由実さんとYOSHII LOVINSONがかぶちゃって(笑)。
EMTG:ユーミンは“荒井由実”時代はいい意味で“マニアックな少女性”を前面に出してたけど、“松任谷由実”になってからは多くのリスナーを意識した歌作りになっていったからね。
吉井:そうですね。僕も“YOSHII LOVINSON”から“吉井和哉”になることで、聴いてくれる人に対してプロ意識で作曲するようになっていったっていう。次の10年に向けて、自分の得意なメロディを惜しみなく出して、感情を伝えていきたいです。自分の血を軸に、いろんなものを拝借して作っていくことになるでしょうね。
EMTG:ワクワクするね。ありがとうございました。

【取材・文:平山雄一】

tag一覧 吉井和哉 アルバム インタビュー 男性ボーカル

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リリース情報

18(初回盤)

18(初回盤)

2013年01月23日

EMIミュージック・ジャパン

ディスク:1
1. TALI
2. CALL ME
3. FINAL COUNTDOWN
4. WANTED AND SHEEP
5. トブヨウニ
6. HATE
7. 20 GO
8. BEAUTIFUL
9. MY FOOLISH HEART
10. BELIEVE
11. 朝日楼 (朝日のあたる家)
12. HEARTS

ディスク:2
1. 点描のしくみ (Album Version)
2. 煩悩コントロール (Album Version)
3. 血潮
4. 母いすゞ
5. ノーパン
6. ビルマニア
7. ONE DAY
8. バッカ
9. WINNER
10. Shine and Eternity
11. LOVE & PEACE
12. FLOWER

ディスク:3
1. シュレッダー (LIVE)
2. WEEKENDER (LIVE)
3. 黄金バッド (LIVE)
4. 欲望 (LIVE)
5. SIDE BY SIDE (LIVE)
6. BLACK COCK’S HORSE (LIVE)
7. VS (LIVE)
8. 恋の花 (LIVE)
9. Don’t Look Back in Anger (LIVE)
10. スティルアライヴ (LIVE)
11. マサユメ
12. 甲羅
13. ギターを買いに

ディスク:4
1. 点描のしくみ Queen of Hearts 予告編
2. 点描のしくみ Queen of Hearts メイキング
3. LOST -誰が彼を殺したか-

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■ライブ情報

TOUR 2013 GOOD BY YOSHII KAZUYA
2013/02/23(土)コラニー文化ホール(山梨)
2013/02/27(水)府中の森芸術劇場どりーむホール
2013/03/02(土)山形県民会館
2013/03/07(木)姫路市文化センター 大ホール
2013/03/10(日)鳴門市文化会館
2013/03/13(水)高槻現代劇場 大ホール
2013/03/15(金)とりぎん文化会館 梨花ホール
2013/03/17(日)土岐市文化プラザ・サンホール
2013/03/20(水祝)桐生市市民文化会館 シルクホール
2013/03/23(土)長野ホクト文化ホール
2013/03/29(金)長崎ブリックホール
2013/03/31(日)大分IICHIKOグランシアタ
2013/04/05(金)茨城県民文化センター
2013/04/07(日)秋田県民会館
2013/04/12(金)苫小牧市民会館 大ホール
2013/04/14(日)旭川市民文化会館 大ホール
2013/04/20(土)下関市民会館 大ホール
2013/04/21(日)佐賀市文化会館
2013/04/27(土)福井フェニックスプラザ
2013/04/29(月祝)島根県民会館
2013/05/04(土祝)富士市文化会館ロゼシアター 大ホール
2013/05/06(月祝)一宮市市民会館
2013/05/11(土)和歌山県民文化会館大ホール
2013/05/12(日)奈良県文化会館 国際ホール
2013/05/18(土)あづま総合体育館

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