日本語詞も多数収録。骨太なサウンドと瑞々しい情感に満ちた、山中さわおのニューソロアルバム

山中さわお | 2013.02.14

 3枚目のソロアルバム『破壊的イノベーション』。山中さわおのソングライターとしての深い魅力、バンドマンとしての熱いエモーションが生々しく伝わってくる1枚となった。これまでのソロ名義の作品は英詞であったが、日本語の歌詞による楽曲も多数収録。全篇に漲る骨太なサウンドと瑞々しい情感を、ぜひ幅広い音楽ファンに堪能して欲しい。the pillowsやTHE PREDATORSのファンは、もちろん必聴だ。本作にこめた想い、彼の創作活動の背景にあるものとは何なのか? 大いに語ってもらった。

EMTG:「はぐれ者の感覚」とか「あるがままの自分として生きる」というような姿勢を、今回のアルバムの全体から感じたんですけど、どう思いますか?
山中:僕、この23年間、ほぼそういう歌なんですよ。そういうのをまた別の角度、別な主人公で作ったなという感じですかね。
EMTG:「RED BAT」「Answer」「Permanent black sheep」とかって、まさにそういう想いを感じました。23年間もそういうテーマが出てくるのは、山中さんの核にある大きなものだからじゃないでしょうか?
山中:そうですね。生きていて、そう感じざるを得ないことが多いので。やはり理想というのがあって。でも、その理想通りにはならないことを受け入れたり、やっぱり受け入れられなかったり……という感覚を随分と長い間持っているんですかね。
EMTG:子供の頃からそうでした?
山中:そうだったと思います。例えば音楽に関しても、僕は最初から歌謡曲が嫌いでしたから。それは子供にとっては厄介なことですよ。大好きなロックに出会って、その世界にのめり込んで行くと、ロックを聴いている自分が好きになったし、歌謡曲をバカにする自分をカッコいいと思えた。自分の居場所を見つけられたんですよね。でも、ロックと出会う前の小学生くらいの頃だと、ただTVから流れている音楽が嫌いなだけで、「これが好きだ!」っていうものに出会う手段もなかったですから。周りの友だちと話が合わないのも寂しいものだったし。
EMTG:ロックと出会ったのはいつだったんですか?
山中:中1の時です。当時は特に深いことは考えず、ただただ夢中になりました。自分が夢中になれるものがあるっていうのが、とにかく嬉しかった。人生が変わったような感覚になりました。そして、17、18歳くらいになって、好きなミュージシャンの曲の歌詞とかが自分にアドバイスをくれたり、優しくしてくれるように感じるようになったんです。音楽が自分の人生に影響を与えるものなんだと知ったのは、ようやくその頃なんですかね。
EMTG:「Buzzy Roars」って、そういうロックへのトキメキがストレートに表現されている曲だと感じたんですが、どうでしょうか?
山中:「俺ってロックが好きなままだな」と思うんですよ。でも、みんなは変わっていくのが寂しくて。ピロウズを結成してから24年目に突入しているんですけど、やはり僕は全く飽きない。楽しいですね。「Buzzy Roars」はステージに立っている自分と、客席から好きなバンドを観ている自分。その両方の感覚の歌です。爆音に酔いしれて、”ずっと、この時間が続けばいいのに…”っていう。僕、ライブに行って、好きなロックを聴きながらお酒を飲むのが、未だに一番好きな時間ですから。そういう感覚を持ち続けるのって特別だとは思っていなかったんですけど、僕くらいの年齢になってくると、周りはそうでもなくなってくるんですよね。それを感じると寂しい気持ちになるけど、”しぶといな、俺”とも思うんですよ(笑)。
EMTG:(笑)他の好きなものは出てこない?
山中:そうなんですよ。みんなはワールドカップの時はサッカーに夢中になったり、日本シリーズを気にしたり、季節毎のスポーツを楽しんだり。いろいろあるじゃないですか。僕はそういうのが全くないので。”音楽がなかったらどうしてたんだろう…”って思います(笑)。
EMTG:(笑)そういうロックへの愛情って、いろんな曲に反映されていますね。ふと思ったんですけど……「Slide in tomorrow!」の《白黒つけたいサイクロン》って、もしかしたらギターのことですか? 山中さんって、白黒ペイントのサイクロン(ギターのモデル名)を使っているじゃないですか?
山中:そうです(笑)。なんとなく、そういうのがあったら面白いかなと思って。
EMTG:気になるフレーズがいろいろあるのも、山中さんの曲の魅力だと思います。
山中:歌詞は曲に較べると、自分の中で練ります。でも、みなさんが気にしてくださるところと、僕自身の感覚とは、違いがあるみたいですね。”ここが褒められるんだ?”って思うことがよくあるので。例えば「Answer」だと、《失意の訳を言えないでいる》っていうところの《失意》って言葉が出るまでに、すごく考えたんですよ。なかなか的確な言葉が出てこなくて。だから僕はこの言葉が出てきたことに手柄を感じているんです。
EMTG:面白いですね。他の曲もそんな感じですか?
山中:いろいろですね。「Answer」はちゃんと意思がこめられていますけど、「Slide in tomorrow!」は一字一句に意味があるんじゃなくて、冗談が混ざっているみたいな曲ですし。どうでもいいところが何行もあって、「なんか面白くないですか?」っていう。例えば《煙草にむせたピンナップガール》ってところとか。よく居酒屋で、にっこり笑った水着の女の子がビールジョッキを持っているポスターがあるじゃないですか? ポスターのピンナップガールが煙草にむせて、舌打ちするわけない(笑)。何の意味もない冗談なんですよね。
EMTG:でも、意味がないと言いつつも、すごく魅力的なフレーズですよ。
山中:僕は青春時代から佐野元春さんが好きなので、その影響は強いんだと思います。<なんだか分からないけど、なんだかオシャレじゃない?>とか<なんだか惹かれるショートムービー>みたいな歌詞の作り方が、僕は多いと思います。
EMTG:聴いてすぐに意味がよく分からなくても、数年後に”そういう意味だったんだ!”とか”今のこの気持ちって、あのフレーズの感覚だな!”ってなったり。音楽ってそういう喜びをくれるじゃないですか? 《煙草にむせたピンナップガール》とかも、そうなりそうな予感があります。
山中:そうなってくれた時に、ロックンロールのリスナーとのキャッチボールは大成功。一字一句に自分の感情がフィットしなくても、例えば《敵がいるなら戦うぜ》っていうフレーズだけで、男の子が曲を好きになってくれたり。そういう瞬間があるといいですね。
EMTG:「HEAVEN’S PINHOLE」も、気になる曲ですよ。すごく画的なイメージが浮かびます。
山中:これ、星のことを言っているんです。天国の床に穴があいていて、太陽が去った後に光がそこから洩れている。それが星なんじゃないかと。
EMTG:ワクワクするイメージですね。
山中:世の中の大ヒット曲って説明的なものが多い。誰が聴いても何を言っているか分かるように作っているものが多いと思うんです。そういう曲をカラオケで歌って、みんなで楽しめるっていう。僕はそういうのがとてもつまらないと思っていて。1回、2回聴いても分からないことに何年か経って気づいた時に、「面白い!」って僕はなるんです。
EMTG:このアルバムも、何年か越しで謎解きに取り組める楽しみが、いっぱいありそうですね。例えば「Mallory」も、リスナー各々で場面とかを無限に想像出来るだろうし。
山中:余談ですが、『ナチュラル・ボーン・キラーズ』でジュリエット・ルイスが演じているのがマロリー。名前の響きがかわいいなと、ずっと僕の心の中に残っていて、今回曲を作った時にピタッときたんです。でも、この曲の物語は『ナチュラル・ボーン・キラーズ』とは関係ない(笑)。僕は変わり者同士が寄り添って、世界の隅っこで生きていくっていう歌がどうしても多くて。僕の妄想の中で登場する「君と僕」って、キャラクターがなんとなく出来上がっているんですよ。だからその妄想に入ると、2人が勝手にセリフを言って、ドラマを起こしてくれる。実際に僕が女の子に言われたセリフとかは1つもない曲だけど、感情移入して歌えます。本当にあったことを報告するのがリアリティってことでもないんだなと。そういうことも思うんですよね。
EMTG:このアルバムを出した後は、いよいよツアーですが、気持ちが高まっています?
山中:いや。高まっているというか不安(笑)。ピロウズは23年もやってきているから、ライブに関する不安は一切ないんですよ。体調が悪くなければ絶対にいいライブが出来る。でも、今回のツアーは1月から曲順を決めてリハをしているんです。今回のメンバーでのツアーは初めてだから、細かいことを口にして、お互いに気にしないと合わない。個々のキャリアはともかく、バンドとしては新人なんですよね。
EMTG:不安な山中さんが見られるツアーかも(笑)?
山中:いや、ステージでは不安な顔はしないようにしようと思っていますが(笑)。でも、今日現在はまだ不安です。だから今、一所懸命練習しています。
EMTG:ファンのみなさんが楽しみにしていますよ。
山中:まあ6月くらいからピロウズは活動を再開して、スタジオで作業をすることになると思います。で、夏以降にライブを出来たらいいなと。だから楽しみに待っていて欲しいけど、「じゃあ、さわおさんのソロのライブは行かないで、ピロウズを待っとこう」じゃなくて、今度のツアーも来て欲しいです。「そこは宜しくお願いします」っていう気持ちですかね(笑)。

【取材・文:田中 大】

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ビデオコメント

リリース情報

破壊的イノベーション(初回盤)

破壊的イノベーション(初回盤)

2013年02月13日

DELICIOUS LABEL

ディスク:1
1. レッド・バット
2. アンサー
3. スライド・イン・トゥモロー!
4. パーマネント・ブラック・シープ
5. オール・メモリーズ
6. ヘブンズ・ピンホール
7. イリテーションズ
8. プラネタリウム・イン・ユア・アイズ
9. マロリー
10. バジー・ロアーズ

ディスク:2
1. ヘブンズ・ピンホール [ミュージック・ビデオ]
2. ヘブンズ・ピンホール (プライベート・バージョン) [ミュージック・ビデオ]

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大阪でライヴをした際に、東京地方に大雪の予報があり、東京に戻る時の新幹線が動いているのか? 東京駅まで行けるのか? 等を調べました。


■ライブ情報

noodles presents “OFF THE WALL Vol.12”
2013/02/24(日)下北沢 CLUB Que

シュリスペイロフ ようこそデリシャスレーベルへ バンプショウ!!
2013/03/15(金)渋谷 CHELSEA HOTEL

Buzzy Roars Tour
2013/03/30(土)高円寺 HIGH
2013/04/07(日)渋谷 CLUB QUATTRO
2013/04/10(水)京都 MUSE
2013/04/12(金)広島 CLUB QUATTRO
2013/04/14(日)福岡 DRUM Be-1
2013/04/16(火)松山 SALON KITTY
2013/04/18(木)松江 canova
2013/04/20(土)岡山 IMAGE
2013/04/22(月)浜松 窓枠
2013/05/03(金)高崎 club FLEEZ

ARABAKI ROCK FEST.13
2013/04/27(土)・28日(日) ※雨天決行
みちのく公園北地区 【エコキャンプみちのく】

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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