THE NOVEMBERSが描きだした、<暗い美>について、ボーカル&ギターの小林が答えてくれた

THE NOVEMBERS | 2013.05.14

 前作『GIFT』は、ブラスを導入したライブのレコーディング・テイクを基に作られ、柔軟な曲調でTHE NOVEMBERSとしての新しいポップを提示した。が、今作EP『Fourth wall』は本来のラウド・ロックのタッチに戻って、非常にソリッドでエッジーなサウンドが聴ける。簡単に言えば、「明るくなったと思ったら、暗いロックに戻ったのね」ということになるのだが、聴いていると明暗ではなく、このバンドが希求しているのは、“美”だと気付く。明るい美と、暗い美。そのどちらもがTHE NOVEMBERSなのだ。特にアルバムの最後を飾る「Dream of Venus」と「children」は6曲目の?、?と表示され、続けて聴くように作られている。この2曲は、まさに明と暗。その美しさは、今のJ-ROCKシーンにはない何かを強く感じさせてくれる。新しい感覚に貪欲なロック・リスナーは、ぜひ、聴くべし! いよいよ進むべき方向を直視するTHE NOVEMBERSは、近い将来、シーンで重要な位置を占めるに違いない。

EMTG:『Fourth wall』は、単純に“暗い・明るい”では片づけられないEPだね。言えるとすれば、“きれいなEP”だと思う。
小林:ありがとうございます。美しく、きれいなものを作ろうとすると、僕の帰属する(日本の)社会では、「暗い」とか「ネガティヴ」って言われる。そういう捉え方をされてしまうんです。
EMTG:このEPを暗いっていう人はいるんだろうけど、暗くて美しい音楽があってもいい。しかも最後の「children」で、『Fourth wall』は光に満たされる。
小林:そうですね。僕はどんより終わるのがイヤなんです。これまでも作品の最後に、「明日がいい日になるといいな」っていう思いを入れてきた。自分が変わったっていうか、自分はこういう光がないとイヤなんだなということを、今回、特に感じましたね。
EMTG:THE NOVEMBERSの音楽は、どんどんオープンになってきている。「children」の明るさは、前作の『GIFT』と同じだと思った。
小林:『Fourth wall』は『GIFT』の反動っていう言い方もできるとは思うんですけど、自分としてはかなり自然発生的に作り始めたんですよ。『GIFT』にはラウドな曲がなかったんで、今の時点でのTHE NOVEMBERSのラウドを集約したEPを作ろうということで。別の言い方をすると、『GIFT』では有機的なものを作ったから、今回はそれと鏡合わせの無機質なものを作ろうと思ったんです。“裏”『GIFT』っていうか、ひたすら“鉄”のイメージで。
EMTG:実際、鉄を叩いてるような音があちこちに含まれてる(笑)。80年代ドイツのニューウエイヴみたい。
小林:映画の『鉄男』とかのニュアンスも含んでます(笑)。でも、そうやって作ってるうちに、『GIFT』と同じというか、『GIFT』の最後に入ってるシークレット・トラックと、『Fourth wall』の始まりの「Krishna」が繋がっていることに気付いたりして。
EMTG:そしてその「Krishna」から、ラウドな「dogma」、「primal」へと進んでいく。
小林:「primal」はずっと前からあった曲です。ソリッドな焦燥感を表わそうとして、わざと前のめりのテイクを採用しました。「dogma」はひたすら“鉄”です(笑)。
EMTG:「dogma」と「primal」でラウドなTHE NOVEMBERSにヤラれた後、ラストの「Dream of Venus」から「children」への流れが、本当に美しく響く。
小林:『GIFT』の真逆の曲として、暗い「Dream of Venus」を楽しんで作ったんですけど、歌詞を書くときにちょっと変な感じがして。「Dream of Venus」でアルバムを終わりたくないと思ったんです。いろんな人が生まれては消えていくことを歌うべきだと思って、「children」を作りました。「children」は、あっという間に出来たんですよ。自分の中の“違和感”を、放り出さないでよかった。「Dream of Venus」が「children」によって補完されていく様子、自分の作品が他の自分の作品によって補われていくのを見ているのは、すごく楽しかった。行き着く先がちゃんとあれば、どんな風に見られてもいいんだなっていうか。
EMTG:『Fourth wall』は、自分にとってどんなアルバムなの?
小林:内的独白は、ほぼない。『GIFT』は、“僕はあなたに言うよ”っていうスタンスだったけど、『Fourth wall』には“僕”と“君”が出てこない。
EMTG:このところTHE NOVEMBERSは、外に発信する傾向が強くなっているね。
小林:好かれなくてもいいから、無視できない存在になりたいんです。渋谷でギャルにいきなり僕らのCDを突きつけて、お金をもらうとか、『徹子の部屋』に出て、黒柳さんから「小林くん、あなた、こんなこと考えてたんですって?」って言われたりしてみたい(笑)。
EMTG:あははは。
小林:台湾に行ってライブをやってから、かなり考え方が変わりましたね。お客さんの反応が全然違う。日本でのTHE NOVEMBERSのライブでは、お客さんは無表情だけど、すごく楽しんでる。よく対バンから「今日は全然、受けなくて落ち込んだ」って言われるんだけど、お客さんからは「今日の対バン、よかったです」って声が届いたりして(笑)。いいライブだったら、お客さんは盛り上がったり騒いだりするとは限らないんです。それは表面的なことで。
EMTG:そうか、THE NOVEMBERSのファンが静かに喜んでるのを、対バンは「受けなかった」と思ってしまうんだ。ややこしい客だなあ(笑)。
小林:普遍的なものがあると思うのは、間違ってる。善も悪も美も、いろんな価値観が遍在してるから面白いと思うんですよ。こっちも、「ありがとう」と「ざまあみろ」の両方を思ってたりするんで(笑)。
EMTG:THE NOVEMBERS独自のポップが、『GIFT』と『Fourth wall』の2枚のEPではっきり見えてきたね。最後に、『Fourth wall』っていうタイトルは?
小林:演劇の舞台で、縦・横・背景の他に、もうひとつの壁がある。たとえば漫画で、登場人物が急に読者に向かって語り始めると、フィクションとノンフィクションの壁が壊れて、おもしろいときもあれば、読者がシラケるときもある。聴いてる人とTHE NOVEMBERSの間にも、架空の壁があるんだよって伝えたくて、このタイトルにしました。
EMTG: THE NOVEMBERSにとってその壁は、何かを伝えるときに必要なものなんだね。
小林:はい。
EMTG:伝える意志がはっきりしてきたTHE NOVEMBERSに、期待してます。
小林:ありがとうございます。

【取材・文 平山雄一】

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ビデオコメント

リリース情報

Fourth wall

Fourth wall

2013年05月15日

UKプロジェクト

1. Krishna
2. dogma
3. primal
4. Fiedel
5. Observer effect
6-I. Dream of Venus
6-II. children

注: [紙ジャケット仕様]
画像ではグレーで表現していますが、実際の製品はシルバーの紙に印刷されています

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●小林祐介(ボーカル&ギター)
『ベニスに死す』

ルキノ・ヴィスコンティ監督の映画で、主演のビョルン・アンドレセンの画像を検索しました。めっちゃ、美少年!

■ライブ情報

“GIFT”and“Fourth wall”Release Tour“I’ll Be Your Mirror”
2013/05/15(水) 東京 新代田FEVER
2013/05/19(日) 宇都宮 HEAVEN’S ROCK VJ-02
2013/05/23(木) 水戸 LIGHT HOUSE
2013/05/24(金) 高崎 CLUB FLEEZ
2013/05/30(木) 新潟 CLUB RIVERST
2013/05/31(金) 金沢 van van V4
2013/06/05(水) 岡山 IMAGE
2013/06/07(金) 広島 Cave-Be
2013/06/08(土) 福岡 DRUM SON
2013/06/11(火) 松山 SALONKITTY
2013/06/12(水) 高松 DIME
2013/06/14(金) 大阪 心斎橋JANUS
2013/06/20(木) 仙台 MA.CA.NA
2013/06/23(日) 札幌 DUCE
2013/06/26(水) 名古屋 APOLLO THEATER
2013/06/29(土) 東京 恵比寿 The Garden Hall

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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