男女の心の機微を描いた劇場アニメーションに、秦 基博が独自の視点から光を当てる

秦 基博 | 2013.05.24

 “Signed POP”ツアー、真っ最中の秦 基博がリリースするニューシングル「言ノ葉」は、劇場アニメーション『言の葉の庭』のイメージソングだ。このアニメは抒情的な映像で知られる新海誠監督の新作で、雨の日に限って出会う男女の心の機微を描いている。そこに秦は独自の視点から光を当てて、ピアノが印象的なミディアム・バラードに仕上げた。
 カップリングの「Rain」は、大江千里のオリジナルで、ファンの間で永い間、聴きつがれてきた“隠れた人気曲”。今回、『言の葉の庭』のエンディングテーマとしてピックアップされ、秦がカバーしている。
 さらに「Girl(Tomita Lab.Remix)」は、ヨコハマタイヤのCM曲を、冨田ラボがリミックスしたもの。ブラジリアン・テイストに生まれ変わったテイクも聴き逃せない。

EMTG:今回のシングルの制作はどんな風に始まったんですか?
秦:最初は『言の葉の庭』のエンディングテーマの「Rain」を歌う人を探してたみたいなんですよ。
EMTG:そうなんだ!
秦:で、僕にオファーが来たとき、同時にイメージソングを書き下ろす話にもなって。だから、「Rain」をどうカバーするかを考えるのと一緒に、イメージソングとしてどういうものが相応しいのかを考えました。「Rain」があるので、もちろん同じテンポ感のものではダメだし。
EMTG:では、まず「Rain」の話から行きましょうか?
秦:これは大江千里さんが80年代に発表したオリジナル曲なんです。それを現代風にやりたいと思いました。歌詞には♪Lady きみは今もこうして♪って呼びかけがあるんですけど、僕自身はこういう歌詞を書くことはないし、書けない。「Rain」は、歌詞の譜割(注:メロディに言葉を乗せるリズム)が独特であったり、転調もあって、凄くオリジナリティが高い。特に言葉のハメ方がメロディ寄りで、キャッチ―だから歌いたくなっちゃうんですよ。この曲は槇原敬之さんもカバーしていて、自分も大江さんや槇原さんと同じくらいオリジナルな歌い方をしたいって思いましたね。
EMTG:もともと「Rain」っていう曲は知ってたんですか?
秦:知らなかったです。だから、なぜ監督はこの曲を使おうと思ったのかを考えました。実際、監督は音楽に関して、「主人公はこんな気持ちだから、こういう音が欲しい」ってかなりはっきりしたイメージを持っていらして。主人公の男の子が女性に思いをぶつけるんですけど、悲しくなり過ぎちゃいけない。音楽で少し晴れやかな感情を表現しようと、アレンジャーの皆川(真人)さんとサウンドにこだわって作りましたね。ドラムやコンピュータの打ち込みはわざと80年代っぽくしたり、アコギは自分で弾いたり、サウンドメイクは自分らしくできたと思います。なおかつ監督がエンディングに込めようとした気持ちもわかっていたので、その気持ちを見ている人に手渡すように、エピローグとして仕上げました。
EMTG:そしてタイトル曲の「言ノ葉」の方は、最新アルバム『Signed POP』の“聴く人を意識して外に向かって発信するポップ”っていうコンセプトに通じるテイストを感じました。
秦:うーん、確かに『Signed POP』があったから、「言ノ葉」が出てきたのかもしれないですね。
EMTG:特に♪あなたがいたから僕がいるよ♪っていうフレーズは、秦くんとリスナーの姿に重なって聴こえてきた。
秦:♪あなたがいたから僕がいるよ♪っていうのが、『言の葉の庭』のメインテーマのように思えたんです。男女2人が、物語の役柄設定以外にも様々な関係、同志にも感じられる。もっと言えば、男女に限らず、人と人とがあるタイミングで出会って、お互いに影響を受けていく。そして「あなたと出会ったことが、自分の中に残っていること」を確かめながら、♪呼びかけるよ もう聴こえなくても♪って歌ってます。アニメのストーリーをそのままなぞっても意味がないし、自分の経験してきた“出会い”との距離感で作っていくのが難しかったですね。
EMTG:というと?
秦:映像を見ていない人にも、歌だけで同じテーマを伝えたいと思ったので。キーワードは♪固く 響く 靴音♪。“確かな一歩を踏み出すこと”にしました。
EMTG:その見極めは、確かに難しいね。
秦:ただ“雨が上がっていく瞬間”っていうイメージがあったので、楽器的には初めからエレピの刻みで行こうって決めていて。僕の曲はアコギから始まるのが多いんですが、この曲はエレピで、さらにアナログ・シンセの温かい音色も入れようと。自分はあまり使ってこなかった楽器が入っているので、リスナーには新しい匂いを感じてもらえると嬉しいです。
EMTG:なるほど。サウンドはこれまでとは違う印象だね。
秦:それに、ツアー中だったんで、ライブバンドのメンバーで録れたのも大きかったですね。ドラムの(河村)カースケさんや、ベースの鹿島(達也)さんと、『言の葉の庭』のストーリーの話をしながら、「だったらイギリスの古いロックみたいな感じでやろうか」って話し合ったり、レコーディングそのものは楽しかったです。
EMTG:タイトルの「言ノ葉」は?
秦:きちんと形になっていなくても、心の中に確かにある原初的な言葉っていう。「言ノ葉」の響きも、この曲に合う。 “恋”はもともと“孤悲”と書いていたらしいんです。この映画の主人公の男女も、お互いの孤独を結びつけて出会えた。そんなことも考えました。実は今日(注:このインタビューは4月に行なわれた)、初めて『言の葉の庭』の完成版を試写で見るんです。「虹が消えた日」(映画『築地魚河岸三代目』主題歌)以来のことなので、楽しみです。
EMTG:映像とのマッチング、楽しみですね。ありがとうございました。

【取材・文 平山雄一】

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リリース情報

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2013年05月29日

アリオラジャパン

ディスク:1
1. 言ノ葉
2. Rain
3. Girl (Tomita Lab. Remix)
4. 言ノ葉 (Backing Track)
5. Rain (Long Ver.)

ディスク:2
1. 「GREEN MIND 2012」(茨城公演)LIVE

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■ライブ情報

HATA MOTOHIRO
“Signed POP” TOUR 2013

2013/05/25(土)仙台サンプラザホール
2013/05/31(金)名古屋国際会議場
2013/06/05(水)大宮ソニックシティ
2013/06/07(金)岩手県民会館 大ホール
2013/06/10(月)ニトリ文化ホール

Sukimaswitch in Augusta Camp 2013 〜Sukimaswitch 10th Anniversary〜
2013/07/27(土)横浜赤レンガパーク 野外特設ステージ

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