安藤裕子、7thアルバム『グッド・バイ』、それは終わりではなく始まりの歌

安藤裕子 | 2013.09.27

 デビュー10年目を迎えた安藤裕子。ファーストミニアルバム『サリー』のジャケット写真を彷彿とさせる7枚目のオリジナル・アルバム『グッド・バイ』は、約2年という時間を費やして制作された作品だ。祖母の他界や愛娘の誕生という経験を経て、生きることをまっとうすることについて考えさせられたという彼女。新作から感じられるしなやかな強さ、クールさと熱さを兼ね備えた温度感は、まぎれもなく現在進行形の安藤裕子であり、同時に自身の原点をも含有している。何かが終わることは何かの始まりでもあるーー。そんな想いをこめての“グッド・バイ”。アルバム誕生エピソードを語ってもらった。

EMTG:『グッド・バイ』は穏やかさも切なさもアグレッシブな部分もあり、とても奥行きがあって表情豊かな作品だなと。制作にとりかかったのは、2年前だということですが、時間をかけたアルバムなんですか?
安藤裕子:というよりは、自然に時間がかかった作品になったんじゃないかなと。アルバムを意識せずに1曲ずつ形にしていったので、後から収録するのをやめた曲もあったし、3曲ぐらいアレンジを大改造したり、歌を録り直した曲もあったし、いつもと違う作り方をしましたね。夏フェスやツアーをはさんだり、飛び飛びでレコーディングしていたので気持ちが揃わないところがあったのかもしれない。全体のイメージが見えてからは、ポップスというか躍動感のある曲が足りないなぁと思って「完全無欠の空と嘘」や「サイハテ」という曲を入れたりしましたね。アルバムはいつも1曲目から最後の曲まで連続して聴けるか聴けないかが判断の基準になるので、抑揚が欲しいなと思ったんです。
EMTG:弦のアレンジと広がりのあるメロディが美しい「ようこそここへ」に始まって、「完全無欠の空と嘘」ではじけて、GREAT3の白根(賢一)さんが作曲したビートの効いたスイートでキュートな「ローリー」と最初の3曲で、ひきこまれます。曲を形にしていく過程で安藤さんが印象に残っている楽曲というと?
安藤:それぞれ、ちょっとした楽しみがありましたよ。「貘砂漠」は今までやったことのないサウンドアプローチの曲なんですけど、サビでダイナミックに音が広がる演奏を聴いていたら、砂漠で銃撃戦が行なわれているイメージが浮かんできたんです。で、ふざけて貘というよりムーミンが砂漠で彷徨って戦う絵を描いてみたり。
EMTG:(笑)シュールですね。
安藤:絵も歌詞に添えておけばよかった(笑)。あと、「いらいらいらい」という曲は私がギターでベースのようなフレーズを弾いて作ったんですけど、形にする過程で、上品なんだけど、ちょっと神経質なイライラ感が音に出た曲ですね。女子高生が学校の屋上のヘリに立って飛び降りようかなと思っているイメージが浮かんで、この曲も絵を描いたんですよ。若さゆえの焦燥感というか……。だから、絵が見えるレコーディングでしたね。「サイハテ」は自分がピアノを弾いて歌うイメージだなと思ったから、終始、立ち弾きで暴れながらレコーディングしたり。
EMTG:それは初チャレンジですか?
安藤:エアーピアノですけどね(笑)。それぐらいやらないと演奏と合わない気がしたんですよ。実際にピアノを弾いているのは山本隆二さんですけど、勢いあまって指がもつれたりして。でも、それがかえっていいんじゃないかっていうぐらいの荒さが欲しかったんですよね。
EMTG:歌詞もアルバムの中では力強く前向きですよね。後半のシャウトからコーラスへと移行するエンディングがカッコいいし。
安藤:そのコーラス“かえるの合唱”みたいで、すごく好きでカエルのモノマネしながら録ったんですよ(笑)。「サイハテ」は青春感のある曲ですね。あの時期独特の苦い後悔があって、でも、それでも行け!っていう。
EMTG:多彩な楽曲が収録されていますよね。映画の主題歌「Aloha’Oe」はやわらかな安藤さんの歌が素晴らしく、タイトル曲の「グッド・バイ」も普遍の魅力がある日本的な旋律。震災のあと、お子さんを抱いて歩いているときにできた曲だということですが。
安藤:お散歩しながら作った曲ですね。震災は今なお、終わった出来事ではないし、私の祖母も地震を契機にガンが悪化して亡くなってしまったんです。そういう空虚感の中、新しく生まれた生命と一緒にきれいな青空を見ていたら、ただ生きて、ちゃんと死んでいくということをまっとうして後世につなぐ努力をするべきなんだろうなって。そんなことを考えて作った曲ですね。
EMTG:なぜ、このアルバムに『グッド・バイ』というタイトルを付けたんですか?
安藤:この2年で自分がいちばん強く考えたことが生まれて死んでいくことについて、だったんです。それで入り口の曲を「ようこそここへ」にしたくて、出口を「グッド・バイ」にしたいなって。でも、それはネガティブな捉え方じゃなくて、誰かが亡くなっても、次の世界で一緒にいられるかもしれないし、何かが終わることは何かの始まりでもあるから、続きにいくための終わり。
EMTG:《また明日あえるかな?》(「ようこそここへ」)とか《もう一度きっと会いたい》(「Aloha’Oe アロハオエ」とか《また会えるように》(「グッド・バイ」)という言葉が散りばめられている希望の見えるアルバムだから“グッドバイ”じゃなく、“グッド・バイ”にしたのかなって。
安藤:あ、それ、前に取材で言いました。作ったときは考えてなかったんだけど、あとづけでグッドなバイなんですよって(笑)。
EMTG:今作は資料によると、ファーストアルバム『Middle Tempo Magic』に通じるポップさがある作品とも書かれていますが、安藤さん自身はどんなふうに捉えてますか?
安藤:私は正直、わからないんですけどね。ただ、10周年ということがあったので、楽曲がどうこうじゃなく、ジャケットは「サリー」感(デビューミニアルバム)を出したかったんです。あの頃も花と一緒に撮ったんですけど、かわいい感じの写真になってしまったので、ぼかしてもらったんですね。でも、今はいいかげん年もとったのでかわいくはならないだろうと思って、ドライフラワーを用意してもらって朽ちた壁を背景に撮影して。
EMTG:10年たって安藤さんはお母さんになって……。音楽を作る上での変化はありますか?
安藤:どうでしょうね。今は、そんなに感じてないかな。まだ対話できないし、飼い犬みたいな感じなので(笑)。抱っこして機嫌悪いと頭突きしてくるんですよ。
EMTG:(笑)かわいいですね。
安藤:まわりの方はかわいいっておっしゃるんですけど、私はあざまみれで撮影したりしてますよ(笑)。女のコなんですけど、けっこう、やんちゃなんですよね。
EMTG:では、最後に10月からスタートするツアーについて予告をお願いします。
安藤:アルバム全曲やると思うんですけど、今回、バンドで再現しにくい曲はほとんどないと思うんですよね。
EMTG:アルバムの温度感を再現できそうな。
安藤:もうちょっと熱くなるかもしれないですけどね。
EMTG:やっぱり「サイハテ」はエアーピアノで?
安藤:(笑)この前、ライヴで歌ったんですよ。走りながら暴れまわって歌ったら口がもつれました(笑)。私のライヴってじっと見てる人が多いんですけど、この曲はリズムをとりながら笑顔で聴いてくれる人が多かったので嬉しかったですね。

【取材・文:山本弘子】

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リリース情報

グッド・バイ

グッド・バイ

2013年10月02日

cutting edge

1. ようこそここへ
2. 完全無欠の空と嘘
3. ローリー
4. ここに臨む丘
5. サイハテ
6. いらいらいらい
7. 貘砂漠
8. 愛の季節
9. Aloha ’Oe アロハオエ
10. グッド・バイ

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■ライブ情報

安藤裕子 Live 2013 HELLO & goodbye
2013/10/27(日)名古屋 ZEPP NAGOYA
2013/11/03(日)大阪 オリックス劇場
2013/11/09(土)福岡 ZEPP FUKUOKA
2013/11/10(日)広島 クラブクアトロ
2013/11/24(日)東京 渋谷公会堂

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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