三浦大知こそエンターテイナー!ずばり断言した新作アルバムに込めたメッセージ

三浦大知 | 2013.11.19

 アートの領域を感じさせる身体表現が同時にエンターテイメントとして成立する稀有な存在、三浦大知。ここ2年、ステージに特化した活動を続けてきた彼が、そのスリリングなニュアンスを楽曲にも封じ込めたのが今回の4thアルバム『The Entertainer』だ。EDMや最新のR&B/HIP HOPをさらにハイブリッドした驚きのサウンドスケープ、歌に特化しつつ単にバラードにカテゴライズできない表現など、あらゆる意味で超越的な本作。それでいて驚きは純粋な楽しさとイコールであることも実感できる。一体どんな経緯でこんな快作(怪作?)が誕生したのか?充実した表情の本人に迫った。

EMTG:この2年は特にステージに特化した活動をされてましたね。
三浦大知:そうですね。去年は5日に1度は必ずステージに立ってる計算になりますね(笑)。
EMTG:その中でオリジナルニューアルバムをどう見据えていたんですか?
三浦:『D.M.』っていう自分の名前がついてるアルバムを前回作らせていただいて、そこを経てショーをやって行く中で三浦大知の音楽をスタッフの方たちも含め、「面白がれるアルバムを」というふうには思ってて。そう思えたのは土台ができたからなんですけど、テーマとしては「振り切ろう」と。たとえばダンスチューンだったら、僕はカッコイイものの最上級は“爆笑”だと思ってるんです。
EMTG:わかります。
三浦:なんか凄すぎるもの見たときって笑うじゃないですか?なので、ダンスチューンは手叩いて笑えるぐらいに。逆にバラードはピアノ1本、歌メインで三浦大知の歌っていうものだけでしっかり聴かせられるような、とにかく振り切ったものを作れたらいいなと思ってましたね。前作はもうちょっと意気込んでいたというか。それに比べると今回は肩の力が抜けていいアルバムが作れたんじゃないかなと思います。
EMTG:トラックッメーカーの皆さんとはどういう方向性で曲作りを?
三浦:基本的に三浦大知の音楽はカテゴライズできないものになっていくといいなと思うので、自分たちが作りたいものを振り切って作るという感じでしたね。
EMTG:三浦さんは踊るように歌うし、歌うように踊る表現者だと思うんですが、今回は音源そのものもそうした独特の感覚というか、聴く行為だけで反応を起こす作品だなと。
三浦 ありがとうございます。嬉しいです。
EMTG:1曲目の「Can You See Our Flag Wavin’In The Sky?」は宣言めいてますね。
三浦:そうですね。そのカテゴライズできないっていうところが明確に出た曲ですね。Naoさんにこの曲をいただいたときに「これなんなんだろう?」っていう感じでした(笑)。ジャンルで何っていうことではないけど、時代で言うと今だなっていう気もするし。聴く人によっていろんな顔を持つ曲になるだろうなと思います。
EMTG:アッパーなんだけどピアノやホーンのアレンジはベタじゃないですし。
三浦:そうですね。この楽曲はいわゆるEDMと呼ばれるものがメインのチャートを賑わしてる中で出てきたので、いちばんいいタイミングでやらせてもらった感じですね。これを聴いてジャスティン(・ティンバーレイク)がシーンに戻ってきて出した「スーツ・アンド・タイ」とか聴いたら「あ、やっぱこういうふうになっていくんだな」というのも含め、Naoさんはセンサーが1歩も2歩も先を読んでるんだなと感じました。
EMTG:EDMでもエレガントな感じだし、シンクロしてるなぁと思いました。
三浦:そうですね。世界的にハイブリッドなものが多いと思うし、そこにみんな音楽の面白みを再確認して音で遊び始めたという感じなんじゃないですかね。なのでまた楽しくなっていきそうだなと思います。
EMTG:2曲目の「I’m On Fire」は同じEDM系でももっとロック寄りで。
三浦:そうですね。ごちゃまぜな感じ。これが届いたときには最高だなと思って。爆笑しながら歌入れしました(笑)。
EMTG:この「Hot!!!!!!」を歌うのはむずかしそうですね(笑)。
三浦:もうこれは思いっきりすべてを捨ててやりました。(笑)全身で叫ぶというか、「この人大丈夫?」ってくらいやらないと意味を成さないと思うんで。
EMTG:そして三浦さん作詞の「Baby Just Time」は「俺がオリジナル」宣言。
三浦:自分で“俺”っていう歌詞をあんま書いたことがないなと思って。唯一無二感とか音楽的にもちょっとラップっぽい要素も入りつつ、R&Bマナーもあって、オリジナルだなと思えたので。そう、自分がオリジナルとしてる所以とか余裕感みたいなものを思い切って書いてみたら面白いかなと。だから、《ホンモノを今 選べばいい》っていう歌詞も「これって大丈夫ですかね?」って周りに聞きながら(笑)、書きました。
EMTG:三浦さん自身のことでもあり、世の中にあるものを「本物を選べばいい」ともとれますね。
三浦:そうです。ホントそうです。
EMTG:もう「こんな僕だけど……」というテンションで書く気持ちではないと?
三浦:『D.M.』まではもっと真面目だったんじゃないかと思ってて。「いや、でもこういう言い方したらアレかな」とか、変に考えてるところがあって。でも今回に関しては自分で勝手に決めてた境界線を一回取っ払ってみたのがすごい良かったなと思いますね。
EMTG:静の部分では「Listen To My Heartbeat」は歌とピアノと鼓動、そして一瞬、ティンパニの音が入っているだけのシンプルな作りですね。
三浦:ジャスト歌!っていうのがやりたいんですよねっていう話をT-SKさんとしていて。この曲はアーティスト三浦大知と普通に世界の中で生きている三浦大知の距離みたいなものが、よりナチュラルに感じられる曲だと思いますね。等身大の僕が歌で勝負してる、で、それがエンターテイメントとして成立してるというか。
EMTG:スイッチを入れなくてもアーティスト三浦大知でいられるようになってきたんですかね?
三浦:たとえば急に横浜アリーナのライブがあるわけじゃないなくて、自分がやってきて、みんなでいろいろ作り上げてきた中でそういう日がきただけで、別に生きていく中のひとつのポイントだから、普段とステージと区別しなくてもいいかも、と思った時があったんですよね。そこからラクになった経験があったので、そこからはあんまりそういうことを考えなくなりましたね。
EMTG:なるほど。そしてラストの「all converge on“the one”」の日本人ならではのメロディも印象的です。
三浦:これはテーマを決めずにNaoさんが作りたい曲を作ってくださいとオーダーした曲で。オリエンタルな雰囲気もNaoさん節だと思いますし、タイトル通り浮遊していた言葉が最後のサビに向かって、人の心のそばに近づいていくみたいなところも含めて、アルバムのメッセージでもあるし。いちばん最後に置くことによってここからまた始まりを感じさせることができると思ったので、バッチリだなぁと。
EMTG:そしてもはや突っ込みようもないアルバムタイトルなんですが(笑)。
三浦:はい。そうですね(笑)。もうこのまんま、みたいな。これはスタッフの方が出してくれたタイトルなんですけど、改めてエンターテイナーですっていうのは、今しかできないかなと思って。エンターテイメント、エンターテイナーって言葉自体がまた意味を持ってきてるんじゃないかとも思うんですよね。一時期はちょっと昔のものっていうふうに捉えられていたと思うんですけど、今また新しいものとして捉えられる言葉に変化しているような気もするので、「三浦大知がエンターテイナーだ」って思い切って言えるのは、ホントに今しかないんじゃないかっていう感じでした。
EMTG:確かに00年代に入ってからずっとリアリズムこそが!っていう時代ですからね。
三浦:もちろんその大事さはあると思うんですけど、エンターテイメントでしか作り上げられないものも音楽のひとつの魅力だと思うので、僕はどっちもできたらいいなと思ってますけど。
EMTG:そうですね。三浦さんもリアルだし、シンガーソングライター的な人もリアルだし。
三浦:そうですね。作品を書いてる、書いてないじゃなくて、パフォーマンスすることによっても今までの人生を歩いてきた道が表れるでしょうし、新しいものを生んでいくものとしてもエンターテイメントはすごく重要だと思います。
EMTG:大体、子どもの頃、ワクワクするものはエンターテイメントですしね。
三浦:そうですね(笑)。ホント、そうだと思います。理屈じゃないっていう。
EMTG:三浦さんにはさらに異なるフィールドにどんど出て行ってほしいです。
三浦:けっこうこの2年でロックバンドばかりのイベントとか出させていただく機会もあって、刺激というか収穫もあったので。僕けっこうアウェイ好きなんで(笑)、これからも挑戦していきたいです。

【取材・文:石角友香】

tag一覧 アルバム 男性ボーカル 三浦大知

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リリース情報

The Entertainer(CD+DVD)

The Entertainer(CD+DVD)

2013年11月20日

avex trax

[CD]
1. Can You See Our Flag Wavin’ In The Sky?
2. I’m On Fire
3. Elevator
4. Spellbound
5. Baby Just Time
6. Chocolate
7. GO FOR IT
8. Gotta Be You
9. Two Hearts
10. Blow You Away!
11. Right Now
12. interlude
13. Listen To My Heartbeat
14. all converge on “the one”

[DVD]
・Two Hearts
・Right Now
・GO FOR IT
・I’m On Fire
・Listen To My Heartbeat
・Can You See Our Flag Wavin’ In The Sky?
[BONUS]
・I’m On Fire -CHOREO VIDEO-
・Right Now -SCENE OF THE PAIR DANCE-

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靴ひも
最近買ったシューズに白い靴ひもがついてたんですけど、ちょっと加工してあるヤツに変えたいと思って「靴ひも」を検索しました。最初に出てきたのが「オーダーとかもできます」みたいなサイトだったんで、それならショップで訊いたほうが早いんじゃないかって思って(笑)。「今あるものをどういうふうにしたらもっとよく使えるだろう?」とか考えたりするのも好きですね。結局靴ひもはまだ目的のものには到達してないんです(笑)。


■ライブ情報

DAICHI MIURA LIVE TOUR 2013-Door to the unknown-
2013/11/27(水)長良川国際会議場 メインホール
2013/11/29(金)なら100年会館 大ホール
2013/11/30(土)滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホール
2013/12/08(日)札幌市民ホール 大ホール

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