The Birthdayが「さよなら最終兵器」以来、約1年半ぶりのニューシングル「LEMON」をリリースした。先日行われた「Black Doctor Fight Again 12 Nights」ツアーで初披露された今作は、シンプルなメロディとサウンドの合間から、様々な想像を掻き立てられるバラードナンバー。2013年の締めくくりにはQuattroツアーという最高のプレゼントも用意してくれた、チバユウスケ（Vo・G）とヒライハルキ（B）に聞いた。

EMTG：新シングル「LEMON」は「さよなら最終兵器」以来、約１年半ぶりのシングルになりますが、１年くらいはレコーディングしてないことになりますね。

チバユウスケ：うん、してない。ずっとライヴばっかり。最近は、飛び飛びでレコーディングしてる。時間のある時にレコーディングしないと、いつまでたってもやんないからさ（苦笑）。

EMTG：9?10月に行なったツアー「Black Doctor Fight Again 12 Nights」で「LEMON」を演奏していましたが、曲が出来たのはいつ頃なんでしょう？

チバ：曲自体はね、去年の10月ぐらいにあったんだ。この曲に近い感じで。んで、固めてったというか、そういう作業したのが、夏フェス終わってからかな？フェス中かな？その後にガッツリ作り始めたのかな。

EMTG：スケール感のあるバラードですけど、曲を作ってるときのイメージみたいなのはあったんですか？

チバ：俺が最初に考えていたのと、ちょっと違ってた。なんかね、イメージしかなかったんだけど、イントロのギターのリフもあって。俺はもっと…（説明が）難しいんだけど、サイケデリックになると思ってたんだよね。浮遊感のある感じというかさ。でも、やってみたら違っちゃったね（笑）。去年のツアー中に作ったから、どっかのライヴ会場の、リハで初めて合わせた。

EMTG：その時の感触は？

チバ：良かったと思う。

ヒライハルキ：うん、よかった。たぶん（インタビューで）訊かれると思って、「この曲とっかかった時どんなだったっけ？」って家を出る前に考えてたんだけど、全然思い出せない（笑）。ツアーでチバさんに、「このコード進行、後で弾いてみて」って楽屋で言われて、後でやった感じの方が覚えてる。いいコード進行だなと思ったし、いい曲になるコード進行だなと思ったのは覚えてる。

EMTG：チバさん、サイケデリックなものになりそうというのは、どういうところだったんでしょう？

チバ：最初に、サイケデリックって言ったのは、フワッとした効果音みたいのを入れたいなと思ってたの。エフェクターの話だとフランジャーとか、そういうノイズ感というかシュワシュワした感じというか。ハモンドにそういう音をエフェクターでかけて、ワーってのが入っててもいいなと思ってたんだ。そこに音が乗ってる感じにしようかと思ってたんだけどね。まあでも、これで良かったと思うよ。

EMTG：やはり４人で合わせると音が完成されて、他のものが必要なくなるんですかね？

チバ：それはある。でも言ってたんだもんな、そういうの入れようって。

ヒライ：うん、言ってた。

EMTG：で、ツアーで演奏してみた手応えはどうでした？

チバ：どうなんだろうね。「新曲だ」と思ってたんじゃないの？

EMTG：新曲だから、私も一生懸命聴いてました。

ヒライ：ああ、聴いてくれてる感じはした。

EMTG：「LEMON」という具体的なタイトルだけど、想像力を刺激される歌詞ですよね。この詞はどんな風に書いたんですか？

チバ：なんかね、なんとなくタイトルは「LEMON」って決めてたんだよね。ほとんど歌詞ないのに。そしたら、そこから離れられなくなっちゃってさ。その結果こうなった（笑）。だからきっと、レモンの事を歌った歌じゃないんだよね。レモンみたいなことを歌ってる。

EMTG：そのレモンが象徴するのは何か気になりますが。

チバ：何だろうなあ。

EMTG：甘酸っぱいものというと若い頃の思い出とか？

チバ：ん…そうなんだろうなあ。

EMTG：メロディと歌詞の、行間みたいなものが豊かな気がしますが、歌入れしてる時は、どんなことを思ってたんですか？

チバ：歌入れ？　一発で終わらしてえなって（笑）。

EMTG：（笑）それは緊張感を大切にして？

チバ：いや…でも緊張感はあるね。緊張感のある曲だろうね。

EMTG：レコーディングも緊張感のある感じで？

チバ：基本的にレコーディング・スタジオに入るときは、ほとんどできあがってるから、後はもう、「せーの」で４人で合わせて。

EMTG：ハルキさんはこの曲のプレイで何か心がけたところとかありますか？

ヒライ：そうだなあ。プリプロの時点で95％ぐらいできあがっていたから。それも一人で固めるんじゃなくて、最初にこう弾きたいという自分のイメージが何となくあって。で、ドラムの叩き方をちょっと変えてもらったりして。どうも自分のイメージしてるものではない曲だなというのがわかってきて、そこでメンバーと話したりして、いろんな意見を取り入れてやってった感じ。メロディもはっきりある曲だから、うまい具合にそのメロディを邪魔しないように、気持ちよく聴こえるというところを探して作ってった感じですね。

EMTG：この曲のPVがいいですね。やんちゃそうな少年とレモンとThe Birthday。夜のヘリポート・シーンは空撮も使われていて、曲のスケール感と合ってますね。監督はどなたが？

チバ：ウチの社長。

EMTG：映画『赤い季節』を監督した能野さんですか！どうでしたか、撮影は。

チバ：ノーやん、的確だからね。さすが映画監督だなって。色味が良かったね。

EMTG：沈んだ色の画面でレモンがすごく光ってますよね。

チバ：それでフジケンのギターが、ちょっとハレーションみたいなさ。

ヒライ：面白い感じに出てましたね、ギターのボディのバーストが。

EMTG：ヘリポートのシーンで、ステージと同様に絨毯を敷いて演奏してますけど、必要なんですかね？

チバ：俺も思ったんだ。「これいらねえんじゃねえの？」って俺、言ったよねえ？

ヒライ：でもあるとすごく落ち着く（笑）。ついこないだ、ない状態で久々やって、滑って転ぶんじゃないかってくらい不安になった。模様が見慣れてるんでしょうね（笑）。

チバ：なるね。最初は音の聞こえが良いって、それでやりはじめて、いつのまにか安心材料っていうか（笑）。汗だくになってびっちょびっちょになっても、滑らないからね。

EMTG：（笑）ところで「LEMON」のカップリング「VIRGIN NUDE BEAT PARTY」は、ちょっとルーズなカッコいいロックンロールですが、これも同じ頃に出来てた曲ですか？

チバ：作ったのはフェス中かな？　ホントにこれはセッションでやったから。フジケンいわく、アタマのギターは俺が弾いてたらしい。俺は逆だと思ってて、フジケンが弾いてたと思ってた。そこにみんなで合わせていって。

EMTG：じゃあ歌詞は曲に合わせて言葉を…。

チバ：あ、これも「VIRGIN NUDE BEAT PARTY」って言葉ありきで歌詞が（笑）。そういうＴシャツが欲しいなと思ってて、そしたらこの曲ができたから、ばっちりだなと思ってて。

EMTG：じゃあ、「VIRGIN NUDE BEAT PARTY」Ｔシャツが12月の「Quattro ×Quattro」ツアーでは…。

チバ：いや、こないだのツアーでもう売ったの。ホントにホテルのメモ用紙とかにマジックかなんかで書いて、こういうＴシャツ欲しいなと思ってたら、この曲ができて（笑）。でも歌詞が出来てないから（笑）。

EMTG：伝わらなかったですね（笑）。でもそのツアーの映像が「LEMON」初回限定盤には入っていますが、けっこうレアな曲が選ばれてますね。

チバ：「オオカミのノド」とかな。

ヒライ：夏のフェスでちょっとやり始めて、だったらツアーにも組み込もうかって。

チバ：「狂っちゃいないぜ」も。WEEKEND LOVERS（チバと中村達也がホストを務める不定期開催のイベント）ではやったけど、ワンマンでは殆どやってない。

EMTG：今年を振り返ると、チバさんはThe Golden Wet Fingersでアルバムを出して、ツアーして、The BirthdayはMANNISH BOYSとWEEKEND LOVERSツアーやったり、その流れで斉藤和義さんのアルバムで「恋のサングラス」を共作したり。

チバ：面白かったよ。あの曲は一気に出来た。WEEKEND LOVERSの曲はかたちにしたいけどねえ、出しようがねえか。MANNISH BOYSのCDに入れてもらうか（笑）。

EMTG：そして「Quattro ×Quattro」ツアーが始まりますが、抱負は？

チバ：まあ別に何も考えずに、たまたまリリースがあったからね。今年はなくてもいいって言ってたから。レコーディングをやってみるもんだね。たまたま「LEMON」が出来た、よかったよ。

【取材・文：今井智子】