back number、新曲「fish」はリスナーの切ない記憶を呼び起こすカサブタソング

back number | 2014.02.05

 別れに直面した女性の揺れる心情を鮮やかに描く「fish」。悲しみ、寂しさ、戸惑い、未練……主人公の心に渦巻く様々な痛みが、壮大なサウンドに彩られながら映し出される。あたかも自分自身に起こった出来事であるかのような激しい感情移入を誘ったり、リスナー各々が胸の奥底にしまっている切ない記憶を呼び起こしたりもするこの曲は、まさしくback numberの本領発揮とも言うべき圧倒的なドラマ性の塊だ。そして、ウィットに富んだ切り口で人間の本質を爽やかに歌い上げるカップリングの2曲、「ネタンデルタール人」と「優柔不断宣言」も素晴らしい。今作にこめた想い、制作の背景などについてメンバー3人に語ってもらった。

EMTG:「fish」は、どんな経緯で生まれた曲なんですか?
清水依与吏(Vo・G):実際、これに近しい出来事があったんです。原曲は2007年頃に作りました。その時は男が好きな女性にふられる歌。当時から僕ら3人の中で「これはいい曲だね」という自信があったので、ずっとシングルで出したいと思っていたんですけど、なかなか納得のいく形にできなかったんですよね。自分たちのこの曲に対する能力が足りなかったからなんですけど。でも、「そろそろできるんじゃないか?」と。今回、プロデューサーの島田昌典さんの力をお借りしたり、歌詞も書き直したりして、やっとリリースできることになりました。
栗原寿(Dr):今のこの3人になって多分、初めて作ったバラードがこれです。当時からこの曲のポテンシャルを感じていました。ライブでやると会場の空気が変わるのが、演奏している自分たちにも分かるくらいでしたから。
小島和也(B・Cho):2007年頃、この曲を最初に聴いた時、自分はスタジオに遅れて行ったんです。「他のバンドのコピーをやっているのかな?」と思ったことを覚えています(笑)。それくらい独特の印象がある曲だったんですよね。ずっと大事にしてきた曲なので、こうやって出せるのは感慨深いです。
EMTG:完成するまでに年月がかかった理由って、具体的には何だったんですか?
清水:なんだかんだ編曲とか歌詞とか言いつつ……歌が理由だった気がします。「今だったら絶対歌えるな」と。最初に地元の知り合いに手伝ってもらって自主制作でレコーディングして形にはしたんですけど、歌が下手過ぎて。でも、「どこかズレてて、どこがどうだからグッと来ないのか?」が分からなかったんですよね。そういう状態だったので、ちゃんと歌える自信がずっとなかったんだと思うんです。もう大丈夫です。「何がベストか?」っていうものを今回作れたので、あとは練習するだけですから。
EMTG:別れに際しての心の痛みをストレートに投げかけてくるのが、この曲の沁みるポイントです。物語性も強いですよね。
清水:多分、女性目線の歌詞にしたことによって、さらに服が脱げたと言うか。男のままだと恥ずかしくて言えないところまで踏み込めたのかなと思います。《さよなら》っていう言葉はやっぱり女性のものなのかなとも、今回、歌詞を書いていく途中で気づきました。男って多分《さよなら》って言えないんですよね。女性目線になることによってちゃんと《さよなら》って言えたから、他の部分の言葉も研ぎ澄ませて書けたのかなと。あと、最初にこの曲作った時からちょっと経って、今だからこそわかることもあったりして。今になってやっと素直になれることもありましたね。
EMTG:悲しみとか痛みをとことん深く抉って、思い切りよく描くのがback numberの魅力のひとつだと僕は思っているんですけど、「fish」はまさにそれだなと。痛がゆいカサブタをめくられるような独特な快感があるんですよ。
清水:めくっちゃってます? それは危ない(笑)。
EMTG:「fish」はカサブタソングです。
清水:なるほど。人によっては聴くタイミング次第では危険な曲かもしれないですね(笑)。
EMTG:でも、別れの痛みってなかなか上手く口では言い表せないものですからね。こういう曲によって代弁してもらって、救われる部分もあると思いますよ。
清水:そうだったらいいですね。自分の歌いたいことを歌って、それと同じような経験をした人に共感してもらえるから、こうやってCDを出したりライブをできるわけですし。そういう風になれたのは運が良かったですよ。親に「ふつうに生んでくれてありがとう」とも言いたい気持ちになります(笑)。
EMTG:《私のスカートが青く揺れている》とか、すごくイメージが湧きますもん。スカートの動きが心情を雄弁に物語っている気がします。
清水:別れる時って、何かがいつもと違うと感じるもんじゃないですか? 例えば「同じスカートのはずなんだけど……何か違うな?」とか。前だったら普通に触れたはずなのに、何か他人行儀なものを感じて触れなかったり。A.T.フィールド(編集部注:『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する架空のバリアの名称)とでも言いましょうか(笑)。
小島:A.T.フィールドって、すごい専門用語出してきたね(笑)。
栗原:びっくりした(笑)。
清水:目には見えない心の壁を感じたりするもんですから(笑)。
EMTG:何か、今のお話を聞いて、ますます僕のカサブタが大変なことに(笑)。
清水:危ないじゃないですか(笑)。
EMTG:それくらい別れに際しての心情の核心を衝いている曲なんだと思います。《あなたの話では 悪いのは自分で決して私じゃないとか じゃあどうしてなの》っていうフレーズもヤバいですよ。主人公の女性は、優しい言葉のようでいて、すごく残酷なことを言われていますよね。
清水:僕が言われたわけじゃないですけど、これは言われたくないです。まあ、言われないように生活しようと思っています(笑)。でも、なかなかそうもいかないのが男と女ですからね。純粋に自分たちが思っていることとかを曲にして共感してもらうのが僕らのできること。そういう意味では今の僕らが投げられる一番の直球が、この「fish」だと思います。
EMTG:そして、カップリングもいいですね。「ネタンデルタール人」って、僕にとっての2014年のベストタイトルに早くも確定しそうな予感です。
清水:ありがとうございます(笑)。「さらけ出す」っていう点では「fish」と共通するんですけど、場所が違う。そういう曲ですね。
栗原:これは、彼(清水)の人間性も滲み出ている曲です。
小島:歌詞を読めば「これ、依与吏のことかな?」って言えるくらいの曲ですね。素直に書いている歌詞だと思います。
清水:俺がいつも妬んでいるやつみたいな印象になっちゃうじゃん(笑)。
小島:違いますよ(笑)。いつも一緒に過ごしているから分かることがあるってことで。
清水:まあ、妬んでたりもしますけど、器の大きいところだってあるじゃない?(笑)。
栗原・小島:…………………(笑)。
清水:何? この間は?
EMTG:(笑)こうやって歌えるってことは、妬む気持ちを客観視して、クリアできてるってことじゃないですか?
清水:そうですね。昔だったら歌えなかったと思います(笑)。そういう曲が何の因果か「fish」と一緒に収録されて、去年の武道館の後の最初のシングルになりました。
EMTG:脚光を浴びている人を妬みつつも、曲の終盤では自分のやるべきことをやってやろうっていう気持ちへと変わり、《妬んでるだけの 時間を終わりにしよう》っていうラストのフレーズに至るじゃないですか。気持ちの進化を描いているという点でも「ネタンデルタール人」ってナイスなタイトルだと思います。
清水:ネタンデルタール人も本当は分かっているんです。「結局自分が未熟なだけだし、相手も努力している。だからそういう気持ちは終わりにしなきゃいけないんだ。進化して別の、ひとつ上の次元の人間にならなきゃいけない」って。
小島:この曲はただ妬んでいるだけで終わっていないところがいいと思います。
EMTG:ネタンデルタール人って、誰の心の中にもいるんじゃないでしょうか?
栗原:僕の心の中にもネタンデルタール人はいますよ。
清水:でも、2人の中のネタンデルタール人は弱めだよね? もっとグイグイ来て欲しいですから。
EMTG:蛇足ですが……今後、back numberのファンがテストの答案で「ネタンデルタール人」って書いちゃう可能性があるのが心配なんですけど。正しくは「ネアンデルタール人」ですと、念のために言っておきましょうか。
清水:こだわりを貫いて「ネタンデルタール人」って書いてくれたら嬉しいですけど。まあ、点はもらえないでしょうね(笑)。
EMTG:(笑)続いて、3曲目「優柔不断宣言」のお話へ。これは頼もしい味方が現れた気がした曲でした。
清水:まあ女性でもこういうことを思っている人はいるんでしょうけど、なかなか理解されにくいんでしょうね。
EMTG:「魅力的なものは世の中にたくさんあるんだから、優柔不断にいろいろ目移りしたっていいのだ!」って思いっきり宣言していますからね。
清水:あんまり女性に向って発表することのない暗黙の了解……いや、了解じゃないな。ただの暗黙(笑)。「胸の奥に秘めておけ!」っていうことですけど、いい機会なので曲にしてみました。どんどん書いていく内に「男の歌だなあ」と。だから最後の合唱しているコーラスは、男だけで歌っています。最初は女の子も入れて楽しくいこうと思っていたんですけど。サウンド的には左に寿がいて、右に和也がいて、オクターブ違いで歌っています。2人の歌をしっかりCDで聴けるってなかなかなかったので、貴重ですよ。
栗原:ボーカルブースにちゃんと入って歌ったのは今回が初めてです。ものすごい緊張しました。「これを毎回やっているのか!」と、ボーカリストの大変さが分かりました。だから、「これからはちょっと大目に見よう」と思いました。
清水:「大目に見よう」って、何で上からなんだよ?(笑)。
栗原:「これは相当大変だな」と。
EMTG:(笑)小島さんは、コーラスのレコーディングはどうでした?
小島:ボーカルブースにいることが不思議な気持ちで、緊張しました。目の前にモニターがあったんですけど、歌っている時に向こう側で笑っているのが見えたり。
清水:和也が歌っているとなんか笑っちゃうんですよ。楽しくなっちゃう。ライブでコーラスは上手にやっていますけど、メインで歌うっていうことはないですからね。
小島:メインで歌うのは恥ずかしいんですよね。笑われた瞬間は、本当に帰りたかった(笑)。
EMTG:(笑)心温まる仕上がりですよ。この曲、男性ファンを掴むと思います。
清水:女性ファンが離れないことを祈っています。「そんなんじゃないと思ってた……」とかならないように(笑)。
EMTG:いろいろ目移りするくらいは許して欲しいですよ。実際に浮気とかをするかどうかは別問題なんですから。
清水:行動は罰せられても、精神は罰せられないんです。
EMTG:その通り!
小島:なるほど(笑)。
栗原:まあそうですね(笑)。
EMTG:男同士の意見が一致したところでまとめに入りましょう。今後のback numberの活動に関しては?
清水:ツアーが始まりますね。あと、曲作りに関しては言葉に対するモチベーションが高まっていると言うか。今までは「さらけ出す」ということにかなり特化してやってきて、今回の曲もそうなんですけど。でも、フィクション的な要素も入っているものとか、今までと違うアプローチもやれたらいいなと思っています。幅が出て、さらに深くなっていければいいですね。そういう点でも、今回の『fish』っていうシングルは、今の自分たちのやりたいことを深く掘り下げつつ、いろんなことを表現できました。やりたいことをキッチリ出せたので、今年の1枚目としてすごく良かったと思います。

【取材・文:田中 大】

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リリース情報

fish(初回限定盤)[CD+DVD]

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2014年02月05日

ユニバーサル ミュージック

[CD]
1.fish
2.ネタンデルタール人
3.優柔不断宣言
4.fish (instrumental)
5.ネタンデルタール人 (instrumental)
6.優柔不断宣言 (instrumental)

[DVD]
・「fish」music video
・making of “fish” music video
・making of “fish” recording

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●小島和也(B・Cho)
ヨーグルト

毎年、花粉症がひどいので、それに良いとされるヨーグルトはなんだ?と。それが効くとも書いてあったので試してみようかなと思ってます。R-1ってやつです。

●栗原寿(Dr)
ICレコーダー

いろいろ検索したら、いまライブ映像もきれいに撮れるカメラ付きのが出てるみたいです。

●清水依与吏(Vo・G)
白い巨塔

こないだ再放送してたんですけど、最終回は号泣しました。途中で何話まで続くんだろうと思って検索して、あれ20話ぐらいあるんですよ。ご存知だと思いますが、めちゃくちゃ面白いです。財前教授の総回診はぜひ見てもらいたいです!


■ライブ情報

back number tour 2014
2014/05/14(水)【群馬】太田市新田文化会館 エアリスホール
2014/05/16(金)【群馬】伊勢崎市文化会館
2014/05/18(日)【埼玉】大宮ソニックシティ 大ホール
2014/05/23(金)【鹿児島】鹿児島県文化センター 宝山ホール
2014/05/25(日)【福岡】福岡サンパレス
2014/05/31(土)【岡山】岡山市民会館
2014/06/01(日)【広島】上野学園ホール
2014/06/06(金)【静岡】アクトシティ浜松 大ホール
2014/06/08(日)【兵庫】神戸国際会館 こくさいホール
2014/06/14(土)【北海道】札幌市民ホール
2014/06/20(金)【新潟】新潟県民会館
2014/06/21(土)【石川】本多の森ホール
2014/06/28(土)【宮城】東京エレクトロンホール宮城
2014/06/29(日)【岩手】盛岡市民文化ホール 大ホール
2014/07/04(金)【大阪】オリックス劇場
2014/07/05(土)【大阪】オリックス劇場
2014/07/13(日)【愛媛】松山市民会館 大ホール
2014/07/15(火)【香川】サンポートホール高松 大ホール
2014/07/19(土)【愛知】名古屋国際会議場 センチュリーホール
2014/07/23(水)【東京】中野サンプラザ
2014/07/25(金)【東京】NHKホール

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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