米津玄師、居場所をなくした全ての人に贈る2ndアルバム『YANKEE』インタビュー

米津玄師 | 2014年04月22日 00時00分

 「あの曲を聴くと夕暮れを思い出す。そういう音楽を作りたいなあ」
 ボーカロイド・プロデューサー(通称ボカロP)からソロ・アーティストとなり、2012年に『diorama』を発表、個性的なシンガー・ソングライターとしてリアルな注目を集めた米津玄師が、2年ぶりの新作『YANKEE』をリリースする。一度は閉じた心を開いて生み出した美麗な「サンタマリア」から玩具箱のような「リビングデッド・ユース」、フォーキーな「眼福」からエレクトロニカな「KARMA CITY」と、百花繚乱のサウンドで彩られたポップで郷愁誘う楽曲たちが耳を捉えて離さない。この新作に、そして自身の曲に込める思いを訊いた。

EMTG:『YANKEE』という言葉は「TOXIC BOY」の歌詞にも出てきますが、なぜこの言葉をタイトルに?
米津玄師:そもそも“YANKEE”という言葉の響きがすごく好きで、どういう意味か調べてみたところ、“アメリカの移民”みたいな。移民という言葉が個人的に好きで。僕はインターネットを土壌にやってきた人間なんですけど、そこから違うところに移って来た。僕みたいなのが、“YANKEE”なのかなと。
EMTG:自分に馴染まないところでの居心地の悪さを歌った曲が多いですね。「百鬼夜行」とか。
米津:そうですね。でもいろんな人に共通することなのかなと思うんですよね。居心地の悪さとか、自分の居場所を感じられないとか。
EMTG:「百鬼夜行」の《我らは現代の妖怪だ》という一節は逆に矜持めいたものを感じます。
米津:その一言は自分の中では開き直りというか。“なんやかんや言ってもしょうがないじゃないか妖怪なんだから”って。ある種の諦観と言うか、そういうニュアンスが強いですね。
EMTG:昨年シングルで出た「サンタマリア」は、そうした諦観とは違う純粋さが凝縮されている印象で。
米津:「サンタマリア」は、自分の中で作らざるを得なかった。前作『diorama』を作り終わった時に、いろんなモチベーションがドン底まで落ちて、このままだと大変な事になると。その状況を打破するために今の自分に何が必要なのかと思うと、そういうところに引っ張って行ってもらう他者と言うか。その時は曲だった。言葉とかメロディとか。自分の中から出てきたものですけど、禊みたいな意味あいで、いろんなものを削ぎ落とすというか。そのおかげで選択肢が狭まったというか、荒野の中でぽつんと一人でいるような状態だったのが道しるべができたというか。いい意味で自由でなくなったんですね。だから、すごく指針になった曲です。僕は曲を作って少し経つとやり直したくなるんですけど、「サンタマリア」はメロディと歌詞に関しては一切直す余地がない。いまだに、ホントに完璧だなという自信はあります。
EMTG:「サンタマリア」という言葉に、米津さんが好きな作家の一人、宮沢賢治の「オッペルと象」を思い出しました。
米津:そこからも来てると思うんですけど、神聖なものというか、穢れの無い美しいもの、と考えた時に、パッと出て来たのが「サンタマリア」という言葉でした。
EMTG:この曲はシングルとアルバムでヴァージョンが違いますね。
米津:「サンタマリア」という曲は自分の中での位置付けが、曲としていいとか悪いとかじゃなくて、意思表明という意味合いがすごく強くて。自分の進むべき道を示す指針なんですね。だから今回改めてそれを確認したいと思って。がらっと変えちゃうと元のヴァージョンが好きだった人に申し訳ないと考えた結果、ヴォーカルのみを録り直しました。
EMTG:完璧な曲だからこそ、サウンドも完璧にしたいと?
米津:まだ自分の肉体性が至ってないような気がしちゃうんですよ。もっと違うかたちがあるんじゃないかとか。芯の部分は直しようのないかたちなんですけど、もっと何か…大理石の中から像を掘彫り出すみたいな感じですね。
EMTG:この曲から始まった『YANKEE』は、ボカロPとしてでなく米津さん自身が歌うための作品になっているように思えます。
米津:ボカロに歌わせる曲というのはそれなりの方法論があって、人間が歌うものとかたちが違うわけですね。だから自分で歌うとなると、それなりにかたちを変える必要があって…。ということは「サンタマリア」を作ってる時はすごく思いました。
EMTG:以前「VOCALOIDを隠れ蓑にしたくない」と発言していますが、ボカロPとしての自分と格闘しながら『diorama』から『YANKEE』へと進んできたというイメージもあります。
米津:ボカロの方法論みたいなのにとらわれすぎると、音楽家として限界があるのではないかと思いました。ボーカロイドの音楽を否定するわけではないし素晴らしいものだと思ってますけど、ポッと出てきたものじゃないですか。そこに対する文脈はあまりない。そういうものを自分自身作り上げて行ったという自覚もあるんですけど、それだけじゃあ足りない。音楽は長い歴史があるじゃないですか。その歴史を、文脈を踏まえて上で、やれる事をやるべきだと思ったんですね。
EMTG:それが“YANKEE”として自ら歌うことだと?
米津:そもそもバンドをやっていて、バンドに居心地の悪さを感じて、そんな時に出会ったのがボーカロイドだったんですね。自分の意思を100%反映させて自分一人で完結させることができる。ずっと楽しくてやってきたんですけど、それじゃダメだなと。ちゃんと人と顔を合わせて、いろんな意思を交換し合ってやるべきだと思うようになったんです。
EMTG:初歩的なことですが、曲を作る時はどんな風に? 楽器は?
米津:だいたいギターですけど、ドラムを打込んでリズムからメロディを作ることもあります。ギターで作るとそういうコード感になるし、そこから離れたいと思ったらアプローチを変える。『YANKEE』では「KARMA CITY」が全部打込みなんですけど、これはインストのトラックみたいな感じで作ってて、それが心地よくて歌をつける気にならず、歌が乗ったのが最後の最後で。
EMTG:そのままでもいいやとは思わずに?
米津:やっぱり歌があるものが好きだし、歌がないと聴いてくれる人にもわかりにくいなと思ったんで。
EMTG:歌詞には若い人は知らないかもしれない昭和的なワードをよく使ってますね。「スチャラカ」とか「豆腐のラッパ」とか。ノスタルジックなものへの憧れがあるのかなと思うんですが。
米津:ありますね。僕は出身が徳島県なんですね。そこで夕方5時になると、放送みたいので「恋は水色」が流れてくる。それが僕の中の郷愁感の原点で、自分の中ですごく大きくて。あの曲を聴くたびに、夕焼けとか日暮れの頃を思い出して郷愁にかられる。そういう音楽を作りたいなあ、そういう音楽でありたいなあと思うんです。
EMTG:それもボカロPからソロ・アーティストになった動機の一つでしょうか。
米津:一人でやるのも好きだし、そもそもそっちの方が性に合ってると思うんですけど、やったことのないこと、経験値として持ってなかったものを自分の中に取り入れるという事が必要不可欠だったんですね。
EMTG:その先にあるのがライヴですね。代官山UNITでのライヴが発表になりましたが、心意気は?
米津:バンドでレコーディングしてみて、バンドとはどういうものか、なんとなくですけど掴めるようになってきて。ものは試しじゃないですけど、やってみないと始まらないというか。もうちょっとうまくなってからみたいに思ってたら永遠にできないんで(笑)、とりあえずやってみる。そういう感じですね。

【取材・文:今井智子】

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発売日: 2014年04月23日

価格: ¥ 4,000(本体)+税

レーベル: ユニバーサル シグマ

収録曲

1. リビングデッド・ユース
2. MAD HEAD LOVE
3. WOODEN DOLL
4. アイネクライネ
5. メランコリーキッチン
6. サンタマリア(ALBUM VER.)
7. 花に嵐
8. 海と山椒魚
9. しとど晴天大迷惑
10. 眼福
11. ホラ吹き猫野郎
12. TOXIC BOY
13. 百鬼夜行
14. KARMA CITY
15. ドーナツホール(COVER)

※描き下ろしイラストとマンガ含む、ハードカバー画集104ページ
※スリーブ仕様
※初ワンマンライブのチケット先行抽選受付シリアルナンバー封入

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YANKEE【初回限定盤】CD+DVD

発売日: 2014年04月23日

価格: ¥ 3,300(本体)+税

レーベル: ユニバーサル シグマ

収録曲

1. リビングデッド・ユース
2. MAD HEAD LOVE
3. WOODEN DOLL
4. アイネクライネ
5. メランコリーキッチン
6. サンタマリア(ALBUM VER.)
7. 花に嵐
8. 海と山椒魚
9. しとど晴天大迷惑
10. 眼福
11. ホラ吹き猫野郎
12. TOXIC BOY
13. 百鬼夜行
14. KARMA CITY
15. ドーナツホール(COVER)

[DVD] Music Video収録
・リビングデッド・ユース
・アイネクライネ
※初ワンマンライブのチケット先行抽選受付シリアルナンバー封入

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YANKEE【通常盤】CD

発売日: 2014年04月23日

価格: ¥ 2,760(本体)+税

レーベル: ユニバーサル シグマ

収録曲

1. リビングデッド・ユース
2. MAD HEAD LOVE
3. WOODEN DOLL
4. アイネクライネ
5. メランコリーキッチン
6. サンタマリア(ALBUM VER.)
7. 花に嵐
8. 海と山椒魚
9. しとど晴天大迷惑
10. 眼福
11. ホラ吹き猫野郎
12. TOXIC BOY
13. 百鬼夜行
14. KARMA CITY
15. ドーナツホール(COVER)

※初回生産分特典初ワンマンライブのチケット先行抽選受付シリアルナンバー封入

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グラミー賞をとったニュージーランドのシンガーソングライターの女の子なんですけど。ちょっと暗いところが垣間見られて、それで気になって調べました。


■ライブ情報

米津玄師 Premium Live “帰りの会”
2014/06/27(金)東京・代官山UNIT

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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